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SHALOCKMEMO 251〜300
2006/02/21〜2006/09/07

No SHALOCKMEMO
300
blog
パトリシア・F・ローウェル
井上 碧
ダイアナの秘密
A Treacherous Proposition 2005
HS-261/09.08/\903/284p 06/09/07
SHALOCKMEMO234「愛と復讐の館」のヒロイン=レリアもすばらしかったが,本作のヒロイン=ダイアナも魅力的。時代は1814年4月のロンドン。エルバ島に流されたナポレオンがいつ本土に帰ってくるかと噂が流れている。政治的にも,また王の密偵としての仕事をしているロンズデール伯爵ヴィンセント・イングルトンは,親友の妻ダイアナを心配していた。仕事柄あまり信頼できる親友がいなかったもののダイアナの夫ウィン(ウィンモンド)とは心を許せた。しかし,妻ダイアナと子供たちのセリーナ,ビザムの生活を顧みず,生活苦からダイアナが脅迫を受けることになってしまう。ついに夫が殺害されてしまい,ダイアナら一家は路頭に迷ってしまう。
親友だったヴィンセントは一家の面倒を見ることにするが・・・。ダイアナはその頃から恐喝相手のデイモスから時々脅迫状を受け取っていたが,ヴィンセントには言い出せないでいた。
ヴィンセントとダイアナ一家は脅迫者から逃れるように次々と場所を変えて謎の脅迫者との対決まで移動していくが,最後に対決の場所に選んだのは,ヴィンセントの領地イングルウッドだった。そこには,ヴィンセントの幼い頃になくなったはずの兄,ヘンリーや友人のサドベリー,知人のエドマンズ卿など,有象無象の妖しげな人物が次々に登場する。自分たちを追いかけて命を狙うのは誰なのか,誰が味方で誰が敵なのか。サスペンスは後半まで持続する。
しかし,ミステリとロマンスの違いはここにある。ミステリは謎解きが結末になるが,ロマンスは謎解き後に二人がどうなったかが結末になる。その手本のような作品。
299
blog
バーバラ・マコーリィ
柳 まゆこ
狼とシンデレラ
(富豪一族:知られざる相続人4)
Fortune's Secret Daughter 2001
D-1146/06.09/\641/156p 06/09/04
「ドクターを慕って」で開幕したこのシリーズ。第2巻でエマと私立探偵フリン,第3巻で小学校教師のヘザーと魅力的なヒロインを排出してきた。第4巻の本書では前の3巻でも話題にのみ出てきて一切その姿を見せなかったアラスカのホリー・ダグラスがいよいよ登場! 第2巻で登場したフリン・シンクレアも,ヒーローのガイ・ブラックウルフの親友という立場で顔を出す。
互いに気遣いながらも,フォーチュン家の一族から出来るだけ遠ざかるためにアラスカまでやってきたホリー。出自の問題というよりも,自分の父親のキャメロンが許せないという重いリスクを背負ったホリーの心の中に,フォーチュン家の人々とホリーを出会わせたいとするガイはどこまで踏み込んでいけるのか。
テキサスにやってきたホリーは叔父ライアンが重病に陥っていることを知る。このライアンの重病が次作ではどのように生かされていくのだろうか。また,ミランダと恋人とのその後は? シリーズものだけに益々目が離せなくなる。
298
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サンドラ・ブラウン
霜月 桂
同窓生
In A Class by Itself
1984
SB01-11/06.08/\724/268p 06/08/31
今月を締めくくったのは,サンドラ・ブラウンのMIRA文庫。文庫帯によると,「日本未発表の初期作品を初邦訳」とある。
“あなたの知らない10年が,私を大人にした。変わらない愛をくれるより,今の私を愛してほしい”というサンドラらしいメッセージが本書の魅力。
ダニー(ダニエル・エリザベス・クイン)は10年ぶりに故郷に帰り,高校のクラス会に出席する。高校卒業後10年ぶりということは28歳。大人の分別をわきまえた一人前のキャリア・ウーマン。しかも,福祉団体の委員として,別の目的も持っていた。障害のある子供のための合宿施設をふるさとに確保するために,その土地の所有者であるローガン・ウェブスターと交渉するという目的だった。しかもローガンはかつてダニーが結婚式当日に逃げ出した当の相手だった。
アメリカの高校では,高校の卒業パーティの席上,その年のキングとクイーンを選出するというおきまりの儀式がある。あまりにできすぎた設定ではあるが,ヒロインの姓はクイン。ダニーとローガンは誰しも認めるキングとクイーンであり,しかも二人の目の中には互いの姿しか入っていなかった,いわゆる誰しもが認める仲。
そんな恵まれた二人がなぜ結婚に至らなかったのか。それには,いわゆるお嬢様とたたき上げのナイスガイという二人の関係,ヒロインの育ちの良さや俗物な親の考え方があった。
二人の関係は10年ぶりに修復されるのか。最後にはテキサス州知事と夫人まで巻き込むドタバタにまで発展するが,さすが筆力のサンドラ。それも単なるエピソードにすぎないように淡々とストーリーが語られていく。
熱い夏にふさわしい,さわやかな読後感の一作。
297
blog
マーガレット・ムーア
江田 さだえ
領主の花嫁
Loar of Dunkeathe
2005
P-40/06.08/\1155/365p 06/08/26

1240年スコットランド,グレンクリースの氏族長ファーガス・マゴードン・マクダーバッドの姪リオナは両親に早くに死に別れ,12歳の頃から貧しい領地の差配をしてきた。一方ノルマン人のダンキース城の領主サー・ニコラスは,傭兵からたたき上げ,ダンキース城の領主となったが,弟,妹の世話をするため,質素な生活をしてきたが,税制が変わり破綻寸前になっていた。早急に持参金付きの花嫁をもらうのが城の財政の破綻を防ぐ唯一の方策においつめられたニコラスは,財政破綻を隠したまま,花嫁募集の広告を出す。集まってきたのは,レディ・ジョスリント,レディ・エレナなど10人を超える身分と美貌と財産をもったレディたち。身なりも質素で,スコットランド人のリオナとファーガス叔父はだれも見向きもしない。ニコラスは誇り高く,家政に優れた手腕を発揮し,賢いリオナに惹かれるが,財産のないリオナとは結婚できない。リオナもニコラスの男らしさの内側にあるやさしさに気づき,惹かれていくが,友人となったエレナに譲ろうとする。スコットランド人とノルマン人の国民性や文化の違い,富めるものと貧しきもの,身分の違いなどを複数のストーリーとし,最後のどんでん返しで二人のハッピーエンドが語られる。リオナの美しさとニコラスの寂しさが印象的な1作。

296
blog
スーザン・マレリー
クリスティン・リマー
田中 淳子
プロポーズから始めて
Mother by Design
2004
N-1109/06.06/\704/220p 06/08/16
「ある運命の物語」の第4話。スーザン・マレリーの「リリーの秘密」とクリスティン・リマーの「恋人たちの長い一日」の2話が収録されている。
「リリーの秘密」。結婚式当日に花婿に逃げられたリリー。親友のレイチェル,ジェナとは,ある年齢までに結婚できなかった場合には,人工授精で子供を産もうと話していた。そんな時,宝くじで50万ドルあたったリリーは,衝動的に古い家を買った。しかし,あちらこちらと故障箇所が出てきたとき助けてくれたのは幼なじみのジェイク。
周囲はジェイクとリリーの間の関係に気づいていたものの,一度結婚前に男に裏切られたリリーはなかなか男性の愛に信頼を寄せることが出来ない。二人はいつ互いの愛に気づき,一歩踏み出せるのか。
「恋人たちの長い一日」は,リリーの親友レイチェルがヒロイン。リリーとジェイクが結婚した後,レイチェルも人工授精で妊娠6ヶ月になっている。ある日ショッピングモールで買い物中,見知らぬ男性から声をかけられる。あれよあれよという間に彼の家まで行くことになったレイチェル。すっかり惹かれたレイチェルだが,大金持ちのブライスが自分のような妊娠6ヶ月の女を好きになるはずがない。しかも母親は精神的な病気で入院。ところが,ブライスの妹夫婦は高機能障害をもつ夫婦。人に対して暖かい気持ちをもつことができることが,二人の愛にとってとても大切な要素だった。2話とも心温まる物語。
295
blog
トーリ・フィリップス
古沢 絵里
貴婦人修行
Lady of the Knight 1999
HQB-46/06.08/\714/389p 06/08/15
時は1520年6月11日(月)から6月24日(日)と非常にくっきり示されている。この時代設定の中では大変珍しいところだが,ヒストリカル版「マイ・フェア・レディ」もの。2週間で街頭で身を売らされていた乙女を王の御前でレディとして紹介しようとした騎士たちのいたずら。マナーも言葉も身のこなしも全く粗野な少女の中にきらりと変身できそうだと見抜いた騎士アンドリュー・フォード。作者のシリーズものキャヴェンディッシュ一族の物語の番外編として語られる本作では,レディ・アリシアやレディ・メアリーなどシリーズに登場する数奇な運命に翻弄されてきたヒロインたちと騎士階級の若者たちの丁々発止の言葉の応酬がとても快い。
ヒロイン,ロージーは薔薇の乙女という名のとおり,サー・アンドリューの元で薔薇のように花開く。石版を使って,上手くできたら線一本,失敗したら線を消すというやり方や,上手く踊れるようになるまで何度も練習をする場面など,あの名作ミュージカルの設定が時代を移しても上手く取り入れられていて,読者をニンマリさせてしまう。
294
blog
シャーリー・ロジャーズ
逢坂かおる
最後の夜に
(富豪一族:知られざる相続人3)

Baby of Fortune 2001
D-1142/06.08/\641/156p 06/08/14
富豪一族「知られざる相続人」の第3弾。前作「さまよえるシンデレラ」で登場したミランダの娘エマの双子の兄弟ジャスティンと小学校教師ヘザーのロマンス。
ジャスティンはエマとともに赤ん坊の時にミランダに警察署の前に捨てられ,自分にふさわしい里親に引き取られぬまま寂しい少年時代を送り,自分を愛してくれる人がいることを容易には信じられなくなってしまった。
ミランダに母と名乗られやっと家族の中に自分をおくことが出来るようになる。
妻の流産後1年間妻の元を離れ,一人で生活していたジャスティンだったが,ヘザーの元を訪れ,ミランダに会いに一緒に行ってほしいと頼み込む。しかし,ヘザーには夫のジャスティンには隠している大きな秘密があった。
ジャスティンが家を出る最後の夜に妊娠し,しかも一人息子のティミーを生んでいたのだ。
ヘザーとジャスティン夫婦の互いに愛と信頼を回復するまでの心の旅路を描いた静かな,しかし,感動的な1作。
293
blog
デボラ・シモンズ
大谷 真理子
伯爵家の事情
Tempting Kate 1997
DSC-0/06.07/\800/380p 06/08/11
リージェンシーものだが,没落した貴族の娘ケイトが良く描かれており,傲慢で,頑固なロス侯爵と似たもの同士のケイトがとても愛すべき女性に描かれており,ちょっと中だるみがするものの,最後のクライマックスで,やっぱりという気持ちにさせられ,読後感がいい。
ケイトの妹ルーシーや,貴族社会の俗物たち,そして叔父で後見人のジャスパーなどいかにもありそうな人物を上手く配することでストーリーに深みを加えている。
292
blog
リンダ・ハワード
加藤 洋子
未来からの恋人
Killing Time 2005
二見H7-15
/06.08/\870/435p
06/08/08
いわゆるSFと銘打たれているが,その実,ロマンス色が強く,SF風味程度。ノーラ・ロバーツの「未来からきた恋人」のように自然なタイムトラベルものとはなっていない。が,それはそれで,さすがリンハ・アワード。アメリカ南部の情緒が豊かに表され,とても自然なノックスとニキータのラブ・ロマンスに仕上がっている。
未来(200年後)のFBI捜査官という設定がほほえましいが,200年たっても,人間の有り様はそう大きな変化はないのだということを繰り返し,しかも二つの時代の比較の中で語られる。200年後があたかも200年前のように示されているところが,とても興味深い。
291 サンドラ・ブラウン
秋月 しのぶ
愛はゆるやかに熱く 上
Slow Heat In Heaven 1988
フ18-15/06.06/\820/375p
フ18-16/06.06/\820/375p
06/08/04
「虚飾の愛を逃れて」(SHALOCKMEMO104)以来,久方ぶりのサンドラ・ブラウン。
アメリカ深南部の美しい土地(ベル・テール)をめぐる家族の愛憎劇。サンドラ・ブラウン版「風と共に去りぬ」。
ヒロイン,スカイラーとヒーロー,キャッシュの愛憎がすさまじく,期待した以上の仕上がり。
「誰かがベル・テールを所有するのではなく,ベル・テールが人を所有する」という表現が,土地・家・歴史と人との関係を示す本作最大のテーマ。
敵役のヒロインの妹トリシアとトリシアの妹で元フィアンセのケン・ハウエル,ヒロインの父のコットンすらも敵役的役回り,宿敵ジガー・フリンなど脇役もバラエティーに富んでおり,大絵巻物に読後感もすっきり。
290 アイリーン・ウィルクス
秋元美由起
さまよえるシンデレラ
(富豪一族:知られざる相続人2)

The Pregnant Heiress 2001
D-1138/06.07/\641/156p 06/07/28
富豪一族「知られざる相続人」の第2弾。前作「ドクターを慕って」は,シリーズ開幕にふさわしく,わんさか人物が登場したが,本作はミランダの娘エマとフォーチュン家の新しい家族を捜す私立探偵フリン・シンクレアのロマンス一本に絞ってある。
エマはミランダの双子の子供の片割れ,ロイドとの間に生まれたが養父母の元から少しでも早く独立しようと思い,ウェイトレスなどをしているとき,元フィアンセのスティーヴン・ショウとの間で身ごもった子供と共にスティーヴンから逃れながら点々と移住していた。スティーヴンはバウンティ・ハンター。普段は優しくエマに接していたが,エマに子供ができたと知ったとたんエマを虐待するようになる。その虐待から逃れるためにエマは点々と逃げ回っていたのだが,スティーヴンの恐ろしさと優秀さを最もよく知るのはエマだった。
エマを守るためフリンは自分のコテージに連れて行く。旧友の元警官マーティンやフリンの妹キャリーなど周辺の人々との交流などを描きながら,二人の気持ちは高まっていく。
289 デボラ・シモンズ
上木さよ子
尼僧院から来た花嫁
Maiden Bride 1996
HQB-38/06.06/\714/363p 06/07/21
久しぶりのデボラ・シモンズ。
ヒーロー,ニコラス・ド・レーシとヒロイン,ジリアン・ヘクサムの激しい言葉の応酬が前面に出た快作!
激しい言葉の応酬の間に,二人の愛情が少しずつ高まっていくのを辿っていくのは,ハラハラドキドキものであり,さすがデボラと唸らせる。
メイドのイーディスとその夫ウィリーがヒーローとヒロインの後押しをする様子に,思わずニッコリしてしまう。名脇役!!
288 ゲイル・ランストーム
辻 早苗
レディ・サラの冒険
Saving Sarah 2003
HS-258/06.07/\903/283p 06/07/18
とにかく生きのいいヒロイン,サラ・ハンター。リージェンシー・ヒストリカルにしてはめずらしいサラの行動力と愛すべき性格に喝采。
そして謎めいたヒーロー,イーサン・トラヴィス。イーサンの正体は? 敵か?味方か? 謎が謎を呼ぶサスペンス・ヒストリカル。
ロンドン下町と貴族階級の生活差も読者の想像力をかき立て,ベイカーストリート・イレギュラーズを彷彿とさせる少年たちの存在など,時代性を満喫できる傑作。
著者日本デビューだが,楽しみな作家である。作品はこの他 "A Wild Justice 2002" "The Rake's Revenge 2004" "The Missing Heir 2005" "The Courtesan's Courtship 2006" "Indisretions 2006" omnibus"Broken Vows, Mended Hearts 2006" "The Christmas Visit 2004"がある。
番外 宮城谷 昌光 香乱記  新潮文庫み25-11〜14 06/07/16
中国歴史ロマン。大秦帝国始皇帝末期から楚漢戦争時代を駆け抜けた斉の王族の子孫田兄弟と時代を駆け抜けた武将たちの物語。田兄弟の末子”田横”と始皇帝の長男扶蘇の娘で男装の麗人”蘭”のロマンス。蘭を意識しながら田横の墳墓を守る田吸の娘”季桐”の静かな愛。
ヒーロー田横を中心として,蘭,季桐とのロマンスが哀しくも時代の中で,激しく,静かに語られる。
287 アン・マリー・ウィンストン
南 和子
ドクターを慕って
(富豪一族:知られざる相続人1)

A Most Desirable M.D. 2001
D-1134/06.06/\641/164p 06/07/09
富豪一族の新シリーズ。一族のキャメロン,ライアンなどなどが残した知られていなかった数多い一族の繋累が続々と登場してきそうな予感のするシリーズ。しかも一族の証である腰のところの王冠の痣はくっきりと示される。
今回は若いときロデオボーイと駆け落ち同然に一族を飛び出したライアンの妹ミランダの息子,ケインと,一見十人並みの器量であるのに,髪を下ろすと恐ろしく美しく変身してしまう看護師アリソンのロマンス。しかし,アリソンの美点は容姿・容貌の美しさはさることながら,人を思いやる心の美しさであることが,随所に登場する。
看護師という訳が,時代性を表し仕方のないことではあるが,やや違和感があり,特にいわゆる婦長さんが,看護師長というについては,無理な訳語と言わざるを得ない不自然さを感じさせる。これも時代の流れで仕方がないところか。決して悪いわけではないが,読者の方がそれに慣れていないだけなのだが・・・。
ミランダがフォーチュン家を出るきっかけとなった双子エマとジャスティンが発見されたり,ミランダとケイン,妹のガブリエルを捨てたロイドが登場したりと短いストーリーの中に様々な人物が登場し,にぎやかな幕開けとなっている。
286 リサ・クレイパス
平林 祥
ひそやかな初夏の夜の
Secret of A Summer Night 2004
ライムブックスク1-3
06.06/\940/472p
06/07/07
1840年代,産業革命によりブルジョワジーが一つの階級を築きつつあるイギリス社会での貴族と新興勢力の男女のロマンスを描いたリサ・クレイパスの「壁の花」シリーズ4部作の第1巻。この後,このシリーズはライムブックスで翻訳の予定。
没落貴族の娘で持参金もないが誇り高さだけは保持しているヒロイン=アナベルは22歳。パーティに参加しても壁の花として誰も踊りに誘ってくれない日々を送っていたが,数年前,サーカス会場で自分と弟をパノラマ館の入場料を払ってくれたブルジョワ階級のサイモンにだけは,どうしても心を許せなかった。
そんな出だしで始まる本書だが,性格も育ちも異なる「壁の花」の4人の娘たちが互いにふさわしい夫を見付けるために,互いに協力し合うことになる。ユーモア溢れる4人の娘たちのやりとりや遊ぶ姿が,本書の中に散見する階級社会と変動の時代に生きる貴族と新興勢力という重いテーマを,軽妙な文体と,いうべきことはしっかり表現するという著者の態度を和らげ,一気に読ませる。ロマンス度もたっぷりの好著。
285 ダイアナ・パーマー
村山汎子
いくつものジェラシー
Maggie's Dad 1995
HQB40/06.06/\630/283p 06/07/02
前半は互いの勘違いで結婚できなかったヒーローとヒロイン。
そして後半は,ヒロインの不治の病がきっかけになって,憎み合っていた二人が家族をも巻き込んで幸せになっていくという,捻りのきいたプロットが全く感じられないロマンス。きっかけが当たり前すぎて,まさかと思っている間にあれよあれよとハッピーエンドを迎えてしまう。
それだけの作品。
284 ニコラ・コーニック
田中 淑子
伯爵夫人の出自
The Penniless Bride 2003
HS254/06.06/\903/284p 06/07/01
久しぶりのヒストリカル。リージェンシーの,というよりイギリス貴族社会というべきか,とにかく身分差に関する限り人々の気持ちの上だけでなく,実際の生活にも大きな価値観であり動かしがたい壁になっている。しかし,実際には階級についての考え方も,若干崩れ始めていたのかもしれない。本作のヒロイン,ジェマイマは煙突掃除人の娘。小さい頃から父親や兄ととともに,煙突の中に上っては掃除をしてきた。しかしミセス・モンタギューの学校(若い娘にマナーなどを教える私立の学校のようだが)の優等生として完璧なレディとしてのマナーと考え方を身につけた職人の娘がいるということ自体が,もはや完璧な身分階級の崩壊の兆しと思わせる。しかし,一方でヒーロー,ロブの従姉妹オーガスタのようにその人の内容よりも出自や身分,そして裕福さのみを価値判断の基準とする人々の方がはるかに多く,自分の身分の高さのみを鼻にかける人を”俗物”といって嫌う風潮もあったのだろう。
とにかくヒロイン,ジェマイマは当時の女性からすうと格段に優秀な頭脳と高いところにもスルスルと上っていく抜群の運動神経,そして完璧なマナーと男性にも負けない頭の回転の速い話術を若くして身につけた,いわゆるスーパー・ウーマン。おまけに煙突掃除のためにあちらこちらに傷を負いながらも,すばらしい美女。
本書はヒーロー,ロブも,友人になるレティもそしてロブの祖母でヒロインの味方をするご意見番レディ・マーガリートも,すべて脇役に回り,ジェマイマの一人舞台という作品。
283 ノーラ・ロバーツ
福島 純子
ショパンにのせて
Summer Desserts 1985
MIRANR-01-22
05.06/\760/283p
06/06/14
デザート専門のシェフ,サマー・リンドンとホテルチェーンの3代目,ブレイク・コカランのロマンス。邦題はサマーがショパンの曲を聴きながら芸術的なデザートを作るところにちなんではいるが,ほとんどショパンの曲は出てこず,邦題でショパンを期待しても,ノーラはショパンの曲を果たしてどのくらい知っているのだろうかと思えるほど関連性はない。
ホテルチェーンのオーナーと世界的な女優を母にもつ若いデザート・シェフという,ハイソな世界のお話。例によって家族とは何かを考えさせるような,しかしどろどろしたものではなく,とても洒落たストーリー展開は,まさしく食べてすっきりするサマーのデザートのような味わいをもつ1作。
282 ジェイン・A.クレンツ
細郷 妙子
運命のいたずら
Twist of Fate 1986
MIRAJK01-03
05.03/\724/494p
06/06/11
やられた!という感じ。ヒロインの叔母で人類学者,カリブ海の孤島に引退したのちヒロインに家を残した。研究のために収集した膨大な書籍や資料と日記を残して。南太平洋の島レバレーション島での研究。モデルはマーガレット・ミード女史か?とずっと思いつつ読み進めていくと,375ページに女史の名前が登場。別人だと言われてしまうと,やられた!という感じ。
ヒーロー,ギデオン・ケージは投資会社の経営者いわゆる乗っ取り屋。ヒロイン,ハナ・ジェシェットは進路指導カウンセラー。この職業は日本には無いと解説にある。
二人はそれぞれ自分の目標とする人の生き方の呪縛から逃れられず,どこでいったいハッピーエンドを迎えるのだろうと,終始ヤキモキさせられる。冗長に過ぎる感じもするが,ビルドゥングス・ロマンとして読めばそれなりに必要な長さなのかもしれない。
281 ノーラ・ロバーツ
寺尾なつ子
アマンダを狙いうち
A Man for Amanda 1991
NR01-27/
06.03/\760/265p
06/06/10
塔の館に住む四姉妹のシリーズ第2弾。
なんでもてきぱきとこなすカルフーン家の3女アマンダはホテルの副支配人。仕事に張り切る毎日を過ごしているアマンダの前に一人の男性が現れた。塔の館をホテルに改装するためにやってきた建築家スローン・オライリーだった。ハーバード出身というわりには強引でなれなれしい男。アマンダの勤めるホテルの支配人は物事がうまくいかないと部下のせいにし,物事がうまくいくと自分の手柄にするような俗物。そこにやってきたのは大金持ちでマナーもきちんと身につけた骨董品のディーラー,ウィリアム・リビングストン。帰宅しようとしたアマンダに興味をもったリビングストンの食事に付き合わないかという誘いを聞きつけた支配人は,従業員は客と付き合ってはいけないというルールを破るようアマンダに命じる。そのリビングストンの正体とは?
そんなちょっとした味付けを施した小品。
アマンダの家族たちがそれぞれの存在感を笑話の中にちりばめ,スローンとアマンダのロマンスを中心にまとめ上げた佳作。
NRの作品は前読の「優しい絆をもう一度」のような重い作品は扶桑社ロマンスから,本編のような軽い作品はMIRA文庫からというパターンだが,長編と短編のそれぞれの良さを巧みに使い分ける作家は珍しいと言うこと。
280 ノーラ・ロバーツ
岡田 葉子
優しい絆をもう一度 上下
Birthright 2003
ロ6-49/05.12/\980/508p
ロ6-50/05.12/\980/459p
06/06/06
家族が互いの絆に気づき,次々とその輪を広げていく,ノーラ・ロバーツ独特の世界が存分に表された佳作。
考古学者のコーリーの元に,実の母と名乗る女性が現れる。後で思い出すとどこかで見た女性,クッキーの発明者として自ら会社を経営するスザンナだった。スザンナによると自分は生まれて三ヶ月で何者かにさらわれ,本当の名はジェシカ,現在の両親は養い親だというのだ。発掘現場は住宅開発の真っ最中だったが,新石器時代の骨や遺物が次々と顕れたため,住宅開発は中断され,大勢の考古学者たちが発掘に現れる。コーリーと元夫のジェイク,レオ教授が中心となって発掘を進めているとき,開発業者のボスが発掘現場で何者かに殴られ,命を落としてしまう。
コーリーの弁護を引き受けたラナはバツイチの子持ちだが,ジェシカの兄,ダグに惹かれ,互いに心を開いていく。ジェシカをさらわれたことでダグはこれまでずっと他人に心を開かず,初めはコーリーを憎んでいたが,ラナにあったことで人に対して優しく接すること,自分の心を開いていく勇気を持つようになる。
コーリーとジェイク,ラナとダグ,そして離婚していたダグの両親などが,発掘現場で次々に起こる事故を縦糸に,そして複数の家族がその絆を取り戻し,次第にその輪を広げていく様子を横糸に,人間関係を見事なまでに描き分けたロマンチック・サスペンスを繰り広げていく。幼児誘拐という重いテーマを描きながらも,コーリーやラナ,スザンヌといった強くしかももろさをもつ女性たちを描きながら,暗さを感じさせず,読むものをぐいぐいストーリーに引きこんでいく骨太さがある。
考古学,書誌学,養子縁組や法律的蘊蓄などなど,取材を生かしてヒューマンなロマンスを描き出す2003年,ノーラの渾身のロマンス。
279 アン・アシュリー
田村 たつ子
料理番の娘
Tavern Wench 2002
HS-245/06.03/\903/284p 06/05/28
イギリス版(Mills & Boon社)の表紙に描かれているのは,口を半分開けた豊かな赤毛のセクシーな姿のヒロインだが,日本版では,おつむの弱そうな若い娘が描かれている。本文中から読み取れるのは,この2種類のちょうど真ん中,上品でさわやかな美女を想像しているのだが・・・。
高潔な聖職者だった父親の死後,エマ・リンに遺された財産はほとんどなかった。彼女はかつて自分の子守をしてくれたマーサ・ラッジのもとへ身を寄せ,ラッジ夫妻の経営する宿屋で働き,料理の腕を生かして生計を立てていた。通常紳士階級の娘は結婚前に良家の子女の家庭教師や話し相手(コンパニオン)などを勤めることが多いようなので,宿屋の料理番というのは変わった仕事なのだろう。
ヒーローの方は申し分のない男性。二人は互いに今まで出会ったことのない,運命的な出会いをする。そしてすぐに互いにそれに気づいていく。しかし,互いに常識的で上品な付き合いを続けていくのが,新鮮ですてきなカップルに感じられる。
敵役のクラリッサ・アシュワースは容姿は文句のつけようのない美形であるにもかかわらず,高慢でわがまま,読むだけで腹が立つほど,敵役にはふさわしい人柄。それも後半は出番が無く,もう少しヒロインをいじめてもよかったかなと思えてしまえるほど,あっさりと消えてしまう。
前半は人物の関係がわかりにくく,頭をひねりながら,ページを戻ることが多かったが,後半は一気読み。
278 スーザン・マレリー
高木 明日香
楽園の恋をもう一度(バハニア王国編)
The Sheik and the Bride Who Said No 2005
N-1108/06.05/\704/220p 06/05/27
3ヶ月連続刊行のアラビアン・ロマンス・バハニア王国編の最終巻。「砂塵のかなたに」「さよならは告げずに(未読)」と来て,本巻ではいよいよ皇太子ムラトと元婚約者のダフネのロマンス。名家であるスノーデン家のダフネは,姉の娘ブリタニーが,バハニアの皇太子ムラトと結婚するためにバハニアに飛ぶ王室専用機の中で,結婚を思いとどまるよう説得していた。ダフネは実は20歳の時にムラトと婚約していたが,王妃になる自信がなかったからだった。30歳になり,10年ぶりに砂漠の国に戻ったダフネ。しかしムラトによりダフネはハーレムに軟禁されてしまう。スノーデン家の娘と4ヶ月後には結婚すると言い切るムラト。それが本当は自分のことだとは気づかないままダフネはムラトと,国王の策略に気づいたときは,30歳としての大人の自分がムラトに惹かれていたことに思い至る。
結婚という儀式は, ある程度の年齢に達しないと,なかなか思い切ることが出来ないし,ましてや王妃になることが約束されている立場という複雑な問題は,シリーズ前作でも何度も繰り返されてきたことだが,王子たちと皇太子という立場の違いの大きさにも改めて気づかされる。二人の心理描写が続き,ちょとストーリーとしてはどうかなぁと思わせるところもあるが,それなりに楽しめる1作。
277 エマ・ダーシー
鈴木 けい
終末は夢のように
His Bought Mistress 2004
R-2097/06.03/\672/156p 06/05/25
セレブで超のつく美女のアンジーだが,現在の恋人のポール・オヴァートンとは3年も付き合っているのに,将来のことをどうしようという言葉もなく,だらだらと付き合うだけだっただけに,最近不満を感じ始めていた。そんな時,ルームメイトのフランシーヌからの意外な発言を聴き,驚く。翌日,目の前の看板広告を見て急ブレーキを踏んだ。「恋人募集! セクシーエンジェル」と書いてある巨大な顔写真を見たからだった。という,斬新な設定で始まる本書は,アンジーがいつまでも自分の美形やセレブさを認めようとしないかまととぶりにいらいらさせられながらも,こんな成り行きはあり得ないよねーと思いつつも,ついつい引きこまれてしまう夢のようなお話。
しかも,シドニーから商談で日本にやってくるヒューゴー・フルブライトとアンジーの二人は,帝国ホテルのスイートに泊まったり,銀座でショッピングを楽しんだりと,観光ガイド風ではあってもエマがリサーチのため少なくとも日本を訪れたことは想像が付く。エマがかなり東京を楽しんだことが伺える一冊。
276 キャサリン・コールター
佐野 晶富永 和子
微笑みの予感
Afterglow 1987
MIRACC02-02/
06.05/\724/332p
06/05/21
ロマンス作家がヒロイン。他の同類の作品でも,最も楽しみなのは,作品中に他のロマンス作家がどのように登場するか,というのはやや意地悪な見方だろうか。本作では,ヒロインのチェルシー・ラティマーが結婚することを同業者の誰に,どのように伝えようかというところで,次々に作家名が登場する。曰く,ドロシー・ガーロック,リンダ・ハワード,フェイリン・プレストン,アン・マックスウェル(エリザベス・ローウェル),ローラ・パーカー,キャンディス・キャンプ,アイリス・(ジョハンセン?)・・・,アリリン・スタッグス,ジーン・ウェイズナーなどなど。このうち,最後の二人は書店のオーナーだという。
ところで,キャサリン・コールターといえば,二見ミステリコレクションのシリーズ「迷路」「袋小路」「土壇場」等のFBIシリーズで日本では知られているが,ヒストリカル・ロマンスやMIRA文庫での「ぬくもりの余韻」と本作など,幅広いジャンルで活躍しているようだ。ヒストリカルでのコールター作品が早く翻訳されることを望む。
本作についていえば,ヒロイン,チェルシーの愛らしさ,男性に負けじと過激な発言をするところなど,テンポの良さとストーリー・テリングの良さが際だつ1作に仕上がっている。お勧めの1作。
275 テリー・ブリズビン
石川 園枝
結ばれた真実
The Countess Bride 2004
HS-253/06.05/\903/283p 06/05/20
MEMO-242「女伯爵の名誉」MEMO-237「生き返った花嫁」の関連作。プランタジネット朝リチャード獅子心王と弟ジョン王の若かりし頃,「生き返った花嫁」ヒーロー,ロイスの妹キャサリンとデュモン家の弟ジェフリーのロマンス。前2作に比べて後日談的な要素が強く,ストーリーも人物描写もやや説明不足の感じが強い。本作だけを読もうとするとほとんど理解は不可能だろう。
ヒロイン,キャサリンのほとんど人生をあきらめた様子や若く前向きではあっても思慮の不足が感じられるヒーロー,ジェフリーは,あまり魅力的とは思えない。ページ数が確保され,前作等の説明が十分に出来て,さらに十分な書き込みが可能な作品であれば,もっと奥行きのある興味深い1作にはなったであろうが・・・
274 シルヴィア・アンドルー
江田さだえ
奇妙な家庭教師
A Very Unusual Governess
2004
HS-252/06.05/\903/284p 06/05/14
あの「セラフィーナ」から10年後に書かれたにもかかわらず,ヒロインの生き生きした,いたずら心や美しさ,人物造形,そしてハラハラどきどきはそれほど無いにもかかわらず,圧倒的にストーリーに吸い込まれていく見事さは,変わっていない。いや,ますます磨きがかかったというべきか。
“governess”は「婦人家庭教師」と辞書にはあるが,監督する子女を“govern”「管理する」のが勤めという意味があるのかもしれない。そういう意味ではリゼットとピップの初めの家庭教師ミス・フルームは,ごく普通の家庭教師だと言える。しかしアンティグア諸島で育った二人にはイギリスの良家の子女とは違った育ち方をしてきたことは容易に想像できるし,ピップのような天真爛漫で頭脳明晰な好奇心旺盛な少女には当たり前の家庭教師では勤まらないのだろうし,それを逆手にとってオクタヴィアが家庭教師になることを自然に導き出しているうまさは,なかなかだと思う。
イギリス版表紙ではオクタヴィアとエドワードが互いを見つめ合う姿が描かれているが,アメリカ版表紙では,ウィッチフォードを訪れようとするオクタヴィアの後ろ姿が描かれていて,雰囲気を醸し出している。ウィッチフォード邸が自らの意志を持ったようにほほえんだり,悲しんだり,悪漢をやっつけたりすることからして本書には重要な役割を果たしていることから,こちらに軍配を挙げたい。
273 ヘザー・グレアム
風音さやか
眠らない月
Haunted
2003
MIRAHG01-10/
06.03/\940/589p
06/05/11
ヘザー・グレアムのロマンティック・ミステリアス・サスペンス。幽霊譚と連続殺人事件を融合させ,アメリカ南部の歴史と現代のものの考え方をブレンドした傑作長編。
ヴァージニア州に古くからあり,出来るだけ往事の姿を留めている館,メロディー邸。持ち主の保安官マット・ストーンは親戚や周囲の人々の力を借りながら館を管理している。古い屋敷にはなにかと幽霊話が多いのはありふれている。しかし,最近,泊まった人々が幽霊から暴力的な行為を受けることが重なり,マットは祖父の友人だった心霊現象研究家アダムに調査を依頼する。
調査員としてメロディー邸を訪れたのはアダム本人ではなく,赤毛ですばらしい美貌の持ち主,ダーシー・ロレメインだった。
ダーシーは普通の高校生だったが,卒業パーティに友人のジョシュと出かけたものの,帰宅途中,当時付き合っていたハンターの友人にからまれて交通事故を起こし,ジョシュは亡くなってしまう。その後ジョシュの霊がダーシーを守り,ダーシーは霊能者としてアダムの会社の調査員となった経緯がある。ジョシュはダーシーにとっていわば守護霊のようなものか。作者は,ジョシュの霊は優しく,暖かいという感じを読者にも持たせることに成功している。
その後,ダーシーは自らも危険な目に遭いながらも,ジョシュの霊に助けられ,次々とメロディー家の過去にまつわるミステリを解決していく。初めは幽霊を信じずダーシーの存在をうさんくさく思っていたマットもダーシーに惹かれ,その身を心配するようになり,ある夜,二人は結ばれる。
そして,アメリカ南部の歴史的スペクタクルを再現する祭り,「南北戦争再現イベント」のさなか,最大のクライマックスが訪れる。
幽霊話が中心に進む中,南部の古い館や田舎のレストランでの人々の生活の様子が細かく描写されており,リアリティをもたせている。メロディー邸というぐらいであれば,もう少し音楽の描写が欲しかったが・・・。
272 マーゴ・マグワイア
小長光弘美
未熟な淑女(テンプル兄弟の旅2)
Not Quite a Lady
HS251/06.05/\903/284p 06/05/09
1886年。イギリスのカンブリア州レイヴンウェル・コテージ。旅館を営むリリー・ティアウォーターは,自分の力である特別な能力を発揮することが出来るが,その力を発揮するとなにか自然的現象が反動で起こることから,他の人にはそのことを言わずにいた。たまたま幽霊を出現させたところ,旅行客から好評を得たことから,自由自在に幽霊を登場させてきたが,その都度なにか特別な自然現象が起こっていた。
自分の魔力を悪用せず,健気に難聴で口のきけない少女を養いつつ,借金を背負いながら旅館を経営しているリリーには一つの夢があった。それはローマやエジプト,インドなどの遺跡を旅して歩くこと。実現する望みのないこの夢を果たすため,写真集を買い集め,余暇に眺めることだけだった。
そんなレイヴンウェル・コテージにやってきたのは自然科学者サミュエル・テンプル。兄のジャック・テンプル(聖なる刻印(テンプル兄弟の旅1))とは似ても似つかない,優しく,繊細で,知的な男性。初めは幽霊話を科学的に解明しようとして来たサムだったが,リリーに惹かれ,幽霊の存在よりもリリーの特別な力と,その美しさから離れられなくなってしまう。しかし,アフリカのスーダンで痛めつけられ,他人に触れることが出来なくなったサムは,その心の傷をリリーとの関係の中で癒していく。
心優しき冒険家と魔女との癒しの恋。
271 スザーン・バークレー
柊 羊子
夢見た騎士(愛のサマーヴィル1)
Knight Dreams
1992
HQB33/06.05/\714/374p 06/05/08
ヒーローのルーアークは騎士としてはエドワード黒太子のお気に入りとして数々の戦いで活躍してきたが,女性に対してはひどく傲慢な,それしか知らない生き方をしてきた。一方ヒロインのガブリエル(ガビィ)はフランス南部の呪われた一族ド・ローラン家の一族。父親も兄も自分に仕える人たちに対して残虐な行為を繰り返してきた。そんな一族から逃れようとしたさなかルーアークに助けられたガビィ。亡くなった妻に生き写しで,名前もローランと思いこんだル−アークは,ガビィをすぐに妻にした。ガビィの方もルーアークを利用して父親の元から逃れられればと考え,承諾する。
しかしルーアークには祖父から約束させられた大きな誓いがあった。この誓いが未だにルーアークを拘束し,家庭に落ち着いて平和に生きようとするガビィとすれ違っていく。
近隣の領主エドマンド・ハーコートとの領地争いという問題にも,ガビィがローナという元妻と似ているところから,ローナの兄で陰謀をたくらむブライアンの狂気をさらに悪化させていくきっかけとなる。
ひどく入り組んだ登場人物の感情をとてもうまく描き分け,読者をヤキモキさせること一押しの1作。
270 エリザベス・メイン
小林 町子
恋と剣
Heart of the Hawk 1995
HQB34/06.05/\714/388p 06/05/07
ハーレクイン・ヒストリカルの第1作。ハーレクイン文庫で復刊された。
“妹と共に薬草を摘んでいたシーアは、バイキングの集団にさらわれる。しかしバイキングかと思われた集団の首領は、剣技会で見て胸をときめかせた、エマリー公ロドリックその人だった”。時代は西暦841年から842年。中世初期。神聖ローマ帝国とフランク王国が舞台。ロタール,カール,ルードウィッヒの3人がそれぞれの地所を治め,しかも互いに領地のぶんどり合戦をしようとしている時代。男と女の立場の違い,領主と騎士,身分の違い,キリスト教会などが価値判断の中心であり,愛と信頼が現在以上に重要視されていたため,ストーリー展開上も大変重要な意味を持つ。
ヒロインシーア(アルシーアライン)は皇帝の大法官の次女。頑固で気が強く,大変な美女だが宮廷などで着飾って男性の言うとおりに使用という気持ちはさらさらない。4人姉妹だが,長女はすでに嫁ぎ,三女は臆病でやさしく,四女はまだ子供。ほかにも男の兄弟が数人おり,ベラミー公は子煩悩で幸福な日々を送っている。
エマリー大公ロドリック(通称ホーク)は皇帝の姪アンに裏切られ,女性,特に黒髪の女性にはいい思いを抱いていない。しかも自分の領地をバイキングの軍隊に襲われ,国中の女性と子供は連れ去られたか殺されてしまった。自ら設計をするほどの建設のプロで,領地の防衛のためにすべてをなげうって城壁の修繕にあたっていた。しかし村にも館にも女性がいないため何かと不便であり,ついには集団で女性を誘拐するしか手はなくなった。数度の拐かしの最後に,シーアが連れ去られ,ザクセン地方のエマリーに船で到着する。
母リーラの教えを受け,医療の心得をもっており,エマリーの危機を何度となく救う。身分の高い女性ではないかと思ってはいてもホークはシーアがまさか大法官の娘だとは思わず,シーアたち誘拐してきた娘を村人と結婚させ,また,奴隷として館の掃除や料理をさせた。シーアとホークは互いに目の中に愛のきらめきを感じてしまう。
前述したように騎士道が何より大切にされるようになった時代。愛していると口に出すことは互いを一生拘束するだけの重みをもっていた。本書でもホークがシーアに愛を告げるのも,最後の一行「私たちの愛は未来永劫変わらないよ」だ。
269 イングリッド・ウィーヴァー
浜口 祐実
エデンに背いて(闇の使徒たち11)
The Insider 2003
LS-283/06.04/\704/220p 06/04/29
ウェイトレスとして働くブルックはある雪の夜,店の外に現れた黒づくめの男性にどきりとした。孤独に満ちた眼差しの彼を店に招き入れた瞬間,ブルックは後悔した。麝香の香りをまとった「海賊」が静かに彼女を見下ろしていた。この謎めいた男性こそCIAの秘密プロジェクトによって誕生したコンピュータの天才ギデオン,世間にはアキレスとして知られる世界的な犯罪者だった。しかしブルックはギデオンを愛してしまう。闇の使徒たちのシリーズ第11作。田舎のダイナースのウェイトレスとして働くブルックの表紙のモデルは後ろ姿だけでもとてもセクシーな栗色の長い髪のすばらしいスタイルの美女。10歳の頃銃で撃たれ,養父母によって命を取り留めたものの,外界と接することによって感染症にかかると教えられ,地下の豪華な部屋にずっと籠もったきり銀行のオンラインに侵入して3400億ドルもの金額を奪い,アメリカ中の銀行を破綻に追いやる首謀者に仕方なしに追いやられた天才ギデオン。その内面の悲しみを,ブルックは夫から逃れるために犯罪を犯して逃亡生活を送っていることに重ね合わせて理解できる唯一の人として,互いの愛を確認しあう。二人が愛を完遂することが出来るのか。緊迫のサスペンスは終末部分でいがいが人物が登場することで解決する。
268 ジェイン・アン・クレンツ
真田 都
宝さがしの夜(ロマンス・メーカー 2)
The Adventurer 1990 
P-272/06.04/\670/187p 06/04/26
The Pirateのロマンス作家キャサリン(ケイト)・インスキップはヒストリカルロマンスの作家だったが,本作のヒロインサラ・フリートウッドはアドヴェンチャーもののロマンス作家。先祖の伝説にあった5つのイヤリングを探しに行ったサラが出会ったのは,みずからの作品に登場するのとそっくりの宝探しの専門家ギデオン・トレースだった。あとはお約束のロマンスが進行していくが,ギデオンにはもう一ひねり秘密が待っていた。はたして5つのイヤリングはあるのか?二人はそれを発見できるのか?アドベンチャーとロマンスの融合を見事に果たした佳作。
もう一人のロマンス作家,マーガレットにはどんなロマンスが待っているのか楽しみ。
267 キャシー・G.サッカー
山田 信子
真夜中の再会(恋が始まる町3)
A Cowboy's Woman 1999
N1086/05.12/\704/228p 06/04/22
留守宅のベッドで寝ていたら誰かが入ってきて・・・。サスペンスではなく,ユーモア溢れる成り行きにしていかなければ,ロマンス小説にはならない。実は幼い頃からあこがれていたシェーンだったとは・・・。そんな成り行きがシェーンとグレタのロマンスの始まりだった。「ちびのグレタがこんなセクシーな美女になっているとは」と驚いたシェーンは30歳。二つ年下のグレタは28歳になっているはず。28歳は,既婚者であれば,結構衰えのくる年齢だろうが,独身で,目標をもった生き方をする女性であれば,まさしく溌剌とした年齢のはず。ロデオ・カウボーイのシェーンとダンスホールを成功させようと頑張っているグレタはララミーの街が舞台となったこのシリーズにはまさにふさわしい。
266 ジーナ・ウィルキンズ
堺谷ますみ
拒まれたプロポーズ
(恋人たちのスキャンダル3)
Dateline Matrimony 2001
N1103/06.04/\704/220p 06/04/16
今月も先月同様,業務繁多に付き,なかなか読書に時間を割けない。さらには会合が多く,手元不如意のため読書本の確保もままならない。
本作はSHALOCKMEMO253の最終話。放火事件だけではなく,トレーラーハウスに銃が撃ち込まれ,たまたま腰痛のために床に寝ていた老人が一命を取り留めたり,とミステリ仕立てになっているが,最後には真犯人とハッピーエンドが待っている。シリーズまとめとして親切で仲人好きなマージョリー,セリーナとキャメロン夫妻,警察署長ダンとリンジーが登場するが,今回のヒーローは新聞社のやる気のない記者と思われているライリー・オニール。ヒロインはセリーナの友人でエドズタウンに逃れてきた二人の子供の母親テレサ・スコット。マージョリーのレストランでウェイトレスをすることになった。ライリーはテレサを何度もデートに誘うが,テレサは軽くあしらってしまう。美人で頭のよいテレサに二人の愛らしい子供,マークとマギー。とてもよくしつけられ,人なつこく,頭のいい二人にライリーと叔父のバドはすっかり虜にされてしまう。
理想の家族の姿に気づいていくライリー。テレサは前夫との不幸な結婚があとをひき,迷いはあるものの,ライリーより一回りも二回りも上手。初婚となるライリーの方が全くテレサと二人の子供たちに参ってしまい,ハッピーエンドとなり,シリーズを締めくくっている。
265 ジョアンナ・メイトランド
井上 碧
天使の休息
My Lady Angel 2004
HS-249/06.04/\903/284p 06/04/15
男爵未亡人で遺産相続人のエンジェル。その遺産や称号を自分の甥に相続させようと躍起となる叔母。称号や遺産には興味が無く,いつのまにかエンジェルに深い愛を抱くようになる陸軍大尉ペンローズ伯爵。その3者が複雑に絡み合ったストーリーを紡ぎ出す。
仮面舞踏会で互いに変装して参加し,ヒロインはヒーローの変装に気づかずに謎の男性を愛してしまい,妊娠したと思いこむ。互いの思いこみを上手く利用し,読者を惹きつけていくお手並みはメイトランドの独壇場。
ペンローズ伯爵の名前はフレデリック・マクシミリアン・オーガスタス・ローズヴェイル。エンジェルにははとこのフレデリックとして知られ,愛人のルイザにはマックスと呼ばれ,変装したときもマックスと名乗る。イギリスの貴族の長々した名前のトリックがいかにも巧みにストーリーを盛り上げ,読者をヤキモキさせる。
264 マーゴ・マグワイア
古沢絵里
聖なる刻印(テンプル兄弟の旅1)
Scoundrel's Daughter 2003
HS-248/06.04/\903/284p 06/04/09
エルサレムの騎士」の関連作。19世紀末ヴィクトリア時代。一言でいうと「インディ・ジョーンズ」を地でいく考古学者兼冒険家のロード・ムービー・ストーリー。
ドロシア・ブライトの両親は離婚し,母とオクスフォードの祖父の家で暮らしていたが,祖父も母も亡くし,結局離婚後会っていなかった考古学者の父の家にやってきた。そこに飛び込んできたのはアメリカ人ジャック・テンプル。ドロシアの父アラステアと同じ考古学者だが,アラステアに裏切られ,アフリカから命からがらロンドンにやってきたばかり。復讐をしようと頭から湯気を出してアラステアの自宅にきたものの,家にいたのはオクスフォードからやってきたばかりで父に何年もあっていなかったドロシアだった。しかしジャックはそんな事情は全く知らず,アラステアの机の中から,話にだけ聞いていたキリストの聖遺物の地図と謎を解く鍵を持ち出そうとする。母から父は高名な考古学者だと聞いていたドロシアは,無礼なジャックの態度に腹を立て,鍵を解くには自分のアラビア語の知識が必要だということを理由にジャックと二人,聖遺物探しの旅に出ることになる。
ドロシアは小さい頃から心臓に持病を抱え,激しい運動や外出を母から制限され,いわゆる深窓の令嬢として育てられたが,数カ国語の読み書き能力を身につけ,古文書の翻訳者として大英博物館の依頼を受けるほどの腕前。鍵を解くにはドロシアの力が必要だと感じたジャックは,その能力だけでなく,美貌や女性らしい容姿にも惹かれていく。ついに謎を解いたドロシアだが,ジャックに知らせず,父の使いをとおして聖遺物を発見する。聖衣に触れたドロシアは心身に力がみなぎり,体が回復していくのを感じる。しかし,信じていた父は娘を外国に売り渡そうとし,船に乗せられたところをジャックに助けられる。ジャックの言っていた父の正体を知ったドロシアはジャックとの愛の妨げが無くなったことをしり,ジャックとの愛を完遂する。
263 ノーラ・ロバーツ
瀧原 沙織
ファインダー越しの瞳
One Summer 1986
MIRANR01-24
05.12/\760/284p
06/04/06
フォトグラファー,ブライアナ・ミッチェルはシニカルな作品を得意とし,戦場での写真を撮り続けてきたジャーナリストでもあるシェイド・コルビーと夏のアメリカ横断写真旅行に出かけることになる。
西海岸から東海岸へと太陽が降り注ぐアメリカ大陸をキャンピングカーで一日10時間以上も移動しながら気に入ったアングルを求め,男女の写真家が旅をともにする。ブライアナはポートレートを得意とし,セレブな人々を中心に撮影してきた。シェイドは全体をアングルに納めることを信条としている。初めは作風の違いからどちらも敬遠気味だが,次第に互いに惹かれ始めると同時に互いの作風に良さにも気づき始める。互いに影響を与えあうアーティスト二人の心の変化と,被写体となるアメリカの人々や美しい風景がカメラのアングルの中に切り出され,ノーラの筆力のすばらしさを堪能できるお勧めの1冊。
262 ジェイン・アン・クレンツ
吉本 ミキ
夢に見た海賊(ロマンス・メーカー1)
The Pirate 1990
P-270/06.03/\704/188p 06/04/02
ロマンス作家キャサリン(ケイト)・インスキップはヒストリカルロマンスの作家。自らの作品に登場させた人物にそっくりのリゾートホテルのオーナー,ジャレッド・ホーソンが昔の海賊の末裔であることから,遭遇当初から憧れの気持ちをもちつつも,ちょっとやそっとでは男に言い負かされたりはしないという自己をしっかりともった自立した女性を表している。そして,リゾートのオーナーであり,島民すべてからの尊敬を集めているジャレッドとケイトの間をすんなりまとめていくのは,ジャレッドの前妻との間の一粒種デイヴィッドが,ケイトに初めから好意をもち,ケイトもデイヴィッドを可愛がることと無縁ではない。
冒険と男女の緊張感の背景に,家族の絆と,温かい島民の気持ちがあり,本書をほんのりした雰囲気にまとめ上げている。
261 太田 忠司 レストア
(オルゴール修復師・雪永鋼の事件簿)
KN/06.03/\840/243p 06/03/29
心優しい,孤独のオルゴール修復師,雪永 鋼の事件簿短編集5作品収録。鬱病に関する蘊蓄,オルゴールに関する蘊蓄,謎解きが人の心の救いになるという不思議な癒しワールド。まさに太田作品の真骨頂。
260
blog
シャロン・ケンドリック
藤村 華奈美
愛なきウェディング(地中海の王子たち2)
The Prince's Love-Child
2004
R-2099/06.03/\672/156p 06/03/18
地中海の小国マルディビノ公国のプリンスたちのロマンスを描くミニシリーズの第2巻。三兄弟の次男グイドとイギリスのフライト・アテンダント,ルーシー・マグワイアのロマンス。
海外線のフライトアテンダントという職業柄,すでにヒロインはある程度の容姿と容貌を読者にしめしているものの,プリンスとのロマンスということになれば,やはりパーティに着ていくもの一つとっても大変な神経が必要となるのだろう,ということは容易に想像できる。そして何事につけ命令することになれている男性とのロマンスということで,自分のプライドと相手のプライドの駆け引きが全編を通じてテーマになっている。「愛している」という言葉が登場するのはずっと後の方。
ストーリーの上では,ある時の二人の出会いから妊娠→結婚ということになるのだが,結婚してからは逆に二人の心がすれ違っていく。この,二人の心の動きの変化を示すあたりの見事さが,このミニシリーズの特徴。
次作では長男で皇太子のジャンフェロが登場する予定だが,本巻でも何度か登場し,その性格をチラリと登場させている。
259 クレア・デラクロワ
上木 さよ子
夜は甘く妖しく
My Lady's Champion
1996
HQB25/06.03/\714/372p 06/03/15
1102年。エルサレムの十字軍から帰国したクイン・ド・サイェルヌ。場所は明確ではない。出てくる領地の名としてはアノシー,サイェルヌ,テュレなどあまり聞かない名。それにしてもサイェルヌとは?原語表記が分からない。
クインの父親,先代のサイェルヌの領主ジェロームは,悪評の高い,領民にも慕われない横暴な領主。凱旋して聖地から帰国したクインだが,この実の父親の所行に愛想を尽かして十字軍に従軍していたのだ。
帰国したクインは大領主テュレのお館様に呼び出され,隣接するアノシーの女領主メリサンド・ダノシーと祝言を挙げ,跡継ぎが生まれたらサイェルヌ,アノシー両方の領主にすると持ちかけられる。自分の領地を再建することのみ考えていたクインは結婚はずっとさきの話だと思っていたし,メリサンドにしても自分が領地を治めることを認められると思っており,二人は互いに反発しあう。しかしテュレのお館様の策略から,その夜二人は婚礼をあげることになってしまう。
あとは,二人の気持ちが次第に明らかにされ,しかもすれ違いを時々みせるため,周囲はお似合いの二人と思っていても互いの気持ちを寄せ合うことは最後の最後までない。
聖地でクインの命を救い,ともに帰国した騎士のバヤール,メリサンドの侍女で気の強い娘のベルト,敵役で以前はメリサンドの婚約者だったアルノー・ド・プリヴァなど配役は出そろい,それぞれに個性を十分発揮している。
258
blog
シャロン・ケンドリック
藤村 華奈美
暴君に恋をして
The Mediterranean Prince's Passion
2004
R-2093/06.02/\672/156p 06/03/12
地中海の小国マルディビノ公国のプリンスたちのロマンスを描くミニシリーズの第1巻。三兄弟の末弟ニコーロ(ニコ)とイギリスの旅行会社の経営者ガブリエラ・スコット(エラ)のロマンス。
ヒロインの出自や生い立ちよりも,ヒーローであるニコの精神的な成長を描いているところが他のロマンスとは基本的に異なるところか。
末弟のニコを心配し,なにかと父親代わりに末弟を支配しようとする長兄ジャンフェロ,末尾の二人の結婚式にちょっとだけ顔を出す次兄グイド,エラの周囲にも会社のスタッフのレイチェルや友人セリアなども顔を出すがあまり影響力はなく,もっぱら二人の行動とヒロインの心の動きや会話を中心に間接的にニコの心の動きを示す表現は,さすがシャロン・ケンドリックと思わせる快作。
257 ケイシー・マイケルズ
竹内  栞
内気なプリンセス
(「選ばれし者たち」所収)

Heir to the Throne
"Her Royal Pain-in-the-Highness"
2002
N-1098/06.03/\940/125p 06/03/11
ケリー・キャラダイン"Kelly Carradigne"はアメリカ生まれの天才科学者。ヨーロッパの小国コロソル王国の王位継承権はもっているものの順位が低く自分が王位を継ぐことは考えていなかった。しかしイーストン現国王"King Easton"は彼女を女王として自分の後継者に指名し,2週間後に戴冠式を行うことになる。
王位を狙うマーカス王子はそれを何とか阻止しようとし,空港に着いたときから何度かケリーを狙撃したり,スキャンダラスな写真を世界中の新聞に投書したりと何かと邪魔をする。
しかし,ケリーの警護隊長デボンの活躍でそれを防止し,さらには研究中心だったケリーの生活から女王としての心構えや訓練に配慮する。そして,二人は出会った瞬間から互いに惹かれ始めていたものの,女王と警護隊長という身分差をどう乗りこえていくのか。
早く自分の跡継ぎをえたいと思って,デボンを焚きつけるイーストン国王のいろいろな画策に思わずニッコリしてしまう暖かさがある。
256 スーザン・マレリー
高木明日香
砂塵のかなたに
The Sheik and the Princess in Waiting
2004
N-1100/06.03/\704/220p 06/03/10
スーザン・マレリーの「アラビアン・ロマンス」シリーズは本編3巻、バハニア王国編3巻の翻訳が出ているが,平成元年,平成3年に出ているので目にしていない。
本巻では産科の看護師エマ・ケネディ(24歳)が国務省の役人の訪問を受け,バハニア国への正式な2週間の招待を受け,不審に思いながらも断れないで王室専用機でバハニアに向かったところ,王宮に待っていたのは6年前に彼女の目の前から去っていった夫レイハンだった,というまぁあり得ない話。この6年前に二人が離ればなれになったのにはいろいろ訳があったのだが,当時まだ18歳だったエマと父親に逆らって結婚を決めた若きプリンスは双方の家族から反対を受け,引き離されたのは,ありがちな展開だったが,エマの両親が両親そろってエマを甘やかし,過保護にし,最後までレイハンとの結婚の事実を認めようとしないところは,アメリカの家庭としてはとても珍しいというか,作りすぎのような気もする。
また,レイハンの方も国のための仕事の邪魔になるということから,妻を愛することを自分に制限しようとすることは男性の価値観としてはかなり古いのだが,エマの方が夫に自分に振り向かせ,愛していると告げさせようと決意して,断固とした態度をとるあたり,エマの6年間の心の成長を物語るビルドゥングス・ロマンになっていて,結末はとても気持ちよく読了できる作品に仕上がっている。
255 デボラ・ヘイル
杉浦よしこ
恋に落ちた七日間
Highland Rogue 2004
HS-246/06.03/\903/284p 06/03/05
原題は「ハイランドの一匹狼」。ハイランド地方の出身でもともとは貴族の出だが落ちぶれてタルボット家の猟番を勤めていたユアン・ゲティス。その猟番を勤める家にテッサとクレアという二人の令嬢がいたが性格は両極端。テッサは美人で目立つ性格,そして異母姉のクレアは父亡き後実業家として家業の海運業を営む地味な性格だが,幼い頃ユアンに憧れを抱き,一生家業とともに生きようとしていた。そんな折り,アメリカに渡っていたユアンが一旗揚げてイギリスに帰ってくる。テッサはユリアに出会うとともに婚約者のスペンサーを捨てユリアと駆け落ちしようとする。クレアはそんなことは許せないとするテッサの実母レディ・リディアードと計り,私用船でハイランド地方ストランスアンドルーへとユリアのみをつれて旅立つ。船上でユリアとクレアは「機知」と「意志」の戦いをすることになる。
これまで読んできたデボラ・へイルの作品は,いずれも会話のスピードと,古典の引用をもとに洒落た言い方を縦横にちりばめた会話の質に大いなる楽しみを見いだせる。まさに会話の魔術師と言えるかもしれない。
こんなに互いに言い合ったら互いに気を悪くするのではないかと思えるのにもかかわらず,翌日には互いにカラッとしてしまうヒーロー・ヒロインの性格の良さも,大いに救いになっているのでは?
254 デボラ・ヘイル
大谷真理子
あなたに捧ぐ詩
My Lord Protector 1999
HS-197/04.11/\903/284p 06/03/04
「きみの従妹は驚くべき女性だ。わたしは全幅の信頼を置いているんだよ。」と元船長サー・エドマンド・フィッツヒューに言わしめたのは,ジュリアンナ。義兄でいやらしさの権化のようなジェロームが彼女の遺産を不正に食い尽くそうとしたことを証明するために,自ら敵の館に忍び込み,証拠となる帳簿を金庫をこじ開けて奪取するとは,この時代のレディとしては破格の行動力。しかし年齢はまだ20歳。エドマンドの忠実な執事ブロックや家の使用人たち,そして従弟ローレンスやその姉ヴァネッサですら,彼女にはいつの間にか好意を寄せるようになる。
しかしそんなジュリアンナの心を最もヤキモキさせたのは,エドマンドとの年齢差(20歳)と,エドマンドとの偽装結婚だったとは。互いに尊敬し合い,深い愛情を持つようになった二人。しかし,従兄弟のクリスピンとの約束に縛られ,“どんな結末が待ちかまえているのか”と最後まで引っ張る作者のストーリー・テリングぶりで,ゴールデン・ハート賞にふさわしい作品に仕上がっている。
自分の意志を強く持ち,どんな困難にも明るく立ち向かっていくジュリアンナのビルドゥングス・ロマン。一気読みの価値あり。
253 ジーナ・ウィルキンズ
氏家 真智子
いつか恋に落ちて
(恋人たちのスキャンダル1)
The Stranger in Room 205 2001
N-1095/06.02/\704/220p 06/02/28
いわゆる記憶喪失もの。アメリカ西部の小さな田舎町エドズタウン(江戸の町?という洒落た命名)で瀕死の状態で発見された男性が205号室で目覚めたとき,それまでの記憶が全く失われていることに気づく。しかし,自分を発見してくれたセリーナにはなぜか記憶がないことを知られまいと,適当な名前と誕生日をいってしまう。記憶を失ったことからくる混乱と自分には言い聞かせても,実は自分の職業や暴力をふるわれた理由を隠したいという深層心理が働いていたためだということは,その時は全く思いもよらない。そのことは最後に自分の実名や家族のことがわかってから,読者が自然に推測できるような書き方がされている。
謎めいた男性は自分をサム・ウォレスと名乗る。6月22日生まれの31歳。これもすべてでっちあげ。しかし顔に痣は残り,打撲の痕も痛々しいものの,金髪に青い瞳の彼のハンサムさを隠すことは出来ない。
この小さな田舎町で新聞社の代表を務めながら弁護士をしているセリーナはなぜかこの謎めいた男性にかまってしまう自分を押さえきれず,さらに母のマージョリーに至っては退院後に自分のレストランで働かせ,しかも自分の家の離れまで無料で貸してしまうという母性愛を示す。
記憶はなかなか戻らないままではあるものの,サムは次第に警察署長のダンをはじめ,レストランを訪れる町の人々に受け入れられるようになる。よそ者を嫌う風潮はどの田舎町にもある中で,しかも素性も知れないとあっては普通は受け入れられるのに長い時間がかかることが多いものだが,サムは数週間で町に人やダン,そしてセリーナの心にも大きな存在を示すようになる。セリーナの姉のカーラは風来坊の男性に夢を託して家を出てしまっており,父親の死去によって残された新聞社の経営を押しつけられたことでセリーナはカーラにはよい感情は持っていない。そのため素性の知れないサムに惹かれてはいるものの自分の気持ちを素直に受け入れる気にはなれないでいた。
そんな複雑な二人は休日に軽く唇を触れ合う程度のキスを交わすようになる。しかし,サムは何度か犯罪の容疑者にされたり車にひき殺されようとしたりと,事件に巻き込まれていってしまう。そして日常の何気ない事柄や夢の中で,漠然とした記憶が少しずつ戻っていく。
記憶をなくしたことをセリーナが知るのは? 知ったときセリーナや周囲の人々は? そしてそもそも事故に巻き込まれていくサムとは本当は何者? 多くの謎が頂点に達したとき,暴漢に襲われたサムを助けたのは・・・。
そんなカタルシスが見事に解決され,サムは数週間の後にやはりセリーナの元に帰っていくこととなる。“あなたのいない人生なんて考えられない。巡り会うまでわたしたちどうやって生きてきたのかしら” “わからないよ。きみに出会う前のことは記憶にないんだ”という二人の会話がすべてを象徴するすっきりした後味を残す佳作。
表紙に何か違和感を感じたがその理由は原語版を見て分かった。日本語版はヒーローとヒロインが抱き合う姿が裏返し! イギリス版はモデルが全く違う。
252 ステファニー・ロンレンス
吉田 和代
愛の円舞曲
An Unwilling Conquest 1996
HS-244/06.02/\903/284p 06/02/26
老齢の夫に先立たれ,若くして未亡人になったルシンダは継娘のヘザーの後見人として,残された数十軒の宿屋の監査をして歩いていた。そんな時,馬の飼育家で,最近になって金持ちになった放蕩者,ハリー・レスターと出会ったとき,思わず心がときめく。
その後は二人の心のすれ違いや上流階級,社交界のなんじゃもんじゃが続くが,競馬の様子や遺産をつけねらう甥とその一味や,ハリーのプロポーズを一端断るルシンダなど,読者をやきもきさせる仕掛けが結構あって,すんなり読んでいける。最後の決闘場面もあっという間に片が付いてしまう。
邦題の円舞曲は社交場面でヒーロー,ヒロインがワルツを軸に互いの気持ちを確認し合うことからついたもの。
251 ダイアナ・パーマー
霜月 桂
若すぎた妻
Lawless 2003
PS-37/06.02/\1155/379p 06/02/21
16歳で酒に酔った父に手ひどい暴力をふるわれ,背中にその痕が残ってしまったクリスタベル。その窮地を救ってくれたのはテキサス・レンジャーのジャドだった。成人する(21歳)までクリスタベルの面倒を見る決意をしたジャドは名目だけの結婚をする。牧場の共同経営者としてクリスタベルは牧場の仕事をしながら専門学校に通い,そして牧場の経理をパソコンで管理していた。二人の結婚生活は名目上のものであり,ジャドはクリスタベルを子供扱いし,キスすらもしていなかった。ジャドはレンジャーの仕事をしながら牧場の必要物資の発注や支払いなど二人は名目的な結婚をしながら役割分担をして牧場経営をしていたが,経済的に困難さを感じ,現金の必要性に迫られてきた。そんなとき,映画撮影のスタッフが二人の牧場を撮影地に使いたいと申し出があった。撮影が無事済めば大金が手に入り牧場の経営も順調さを取り戻す。
しかし撮影にやってきたヒロイン役のモデルのティピーは町の送り迎えをさせるなどジャドにぴったりとくっつき,結婚を公にはしていなかったジャドとクリスタベルの気持ちは次第に離れていく。しかもクリスタベルにはジャドよりも年上のキャッシュ・グリアがなにかとモーションをかけ,クリスタベルもそれに答えるかのように振る舞う。
この4人の四角関係を見事にストーリーにまとめた本作は,クリスタベルを巡るビルドゥングス・ロマンでもあり,さらにティピーを巡るDVの物語でもある。