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Google Last Update 2018/09/27

No SHALOCKMEMO
250 キャット・マーティン
岡 聖子
花嫁の首飾り
The Bride's Necklace 2005
KM01-01/06.02/\840/500p 06/02/16
SHALOCKMEMO250冊目はMIRA文庫の新刊より,ナポレオン戦争当時のヒストリカル,「花嫁の首飾り」を読了。
もっていると幸せになるか不幸になるかどちらかという首飾りを巡る三部作の第一作。
美貌の姉妹トーリィとクレアは義父の男爵から傷つけられることを恐れていた。義父が夜,クレアの部屋に忍び込んだところで姉のトーリィは妹を守るため,手にしたもので後頭部を殴りつけ,「花嫁の首飾り」と呼ばれる宝石を奪って逃げる。身分を隠して職を探す姉妹をメイドとして雇うのはブラント伯爵コード。姉のトーリィをメイド長にしたものの,妹のクレアは夢見るような美貌の持ち主。しかしコードは妹の陰に隠れそうな姉の美貌と頭の良さ,そして度胸の良さを見抜き,トーリィに惹かれていく。捕虜となったいとこイーサン船長を救おうとフランスに渡る船に忍び込んだ姉妹だが,トーリィは船内でコードの愛を受ける。
義父の影や愛を確認できないヒーローとヒロインなどカタルシスの材料を多く残しながら,いかにハッピーエンドに導くか。作者の腕の見せ所だが,500ページはちょっと繰り返しが多くなってしまい,途中ややだれる感じ。首飾りの「呪い」もあまりはっきりと示されない。
助け出されたイーサン船長とトーリィの親友グレースが次作のヒーロー/ヒロインのようだ。
249 シャロン・シュルツェ
石川 園枝
塔を守る貴婦人
Bride of The Tower 2003
HS-243/06.02/\903/284p 06/02/11
ロビン・フッドとレディ・マリアンの娘。歴史上の人物が実在したことにしてその娘がヒロインとなる設定は面白いが,ストーリー的にはなにも事件が起こらず,起こった事件もヒーローがシャーウッドの森でヒロインに発見されたことと,ヒロインの伯父が謀反を企て,手下に傷つけられてヒロインの目の前で命を落とすこと,そのぐらい。盛り上がりに欠け,延々とヒーローとヒロインの心の動きが綴られる。期待はずれ!
248 トーリ・フィリップス
古沢 絵里
野に咲く白薔薇
Three Dog Knight 1998
HQB-22/06.02/\714/379p 06/02/10
MOEO-241「身代わりの婚約者」の続巻。キャヴェンディッシュ家の三男トーマスと王家の諸子レディ・アリシアの間に三匹の犬をはさんだ物語。
トーマスはちょっと変わり種。普段は寡黙で動物とばかり過ごしているが,いざとなれば雄弁に語れる。しかし周囲にはいわゆるうつけ者と映るようだ。この巻の冒頭ではキャヴェンディッシュ家の当主,長男,次男がいっぺんに大陸で亡くなってしまうという驚くべき展開からスタートする。そのため三男のトーマスがソーンベリー伯爵の爵位を嗣ぎ,ノーサンバランドのウルフ・ホールを差配している15世紀末。10年前,金細工商に扮した養父母につれられてウルフ・ホールを訪れたアリシアは,実は庶子ではあるがプランタジネット家の末娘。しかしチューダー家の王から身を隠すため,金細工商に扮したヨーク派の貴族エドワード・ブランプトン夫妻に伴われてトーマスの許嫁となる。
10年後,18歳を目前に当地を訪れた親子が目にしたのは,当主初め主だった人々が亡くなり,うつけ者として知られるトーマスが爵位を嗣いでいたウルフ・ホールだった。
小姑として登場し,アリシアの敵役になるトーマスの次兄の妻イザベル,トーマスとアリシアの絶対敵味方になる勝ち気なおてんば娘メアリー,トーマスの従者でしゃれもののアンドリューなど,魅力的な人物を配置しながら,カタルシスを醸成しながら最後は驚愕の結末を用意している作者の読むに値する佳作。この明るさ,軽妙さはお勧め。
247
*
シルヴィア・アンドルー
上木 さよ子
セラフィーナ
Serafina
1994
PHS-179
18.03/\890/284p
7 / h
* HQB-021
06.02/\714/357p
HR-028
03.01/\725/284p
HS-010
97.02/\877/284p
(MB)
  (原 ちえこ
06/02/07
ナポレオン戦争後のウィーン会議のころ。セラフィーナは父母と兄弟たちに囲まれ幸せな生活を送っていたが,長兄が大学でよくない仲間に誘われ,大きな借金を作ってしまう。この借金を返すためにはセラフィーナが金持ちと結婚するしか道がない状況に追い込まれる。そんなとき近所に越してきたオールドワース男爵チャールズ・デイカーに惹かれるが,チャールズが探していたのは夫のいうことに忠実で,跡継ぎを二三人生んでくれるそこそこ家柄のよい,美女という条件の娘だった。
それに対してセラフィーナは学者である父からヨーロッパの複数の言語を学び,古典にも親しむ頭の良さと,大胆な行動力を持つ普通以上の女性だった。
セラフィーナはロンドンにいる名付け親で母の友人のレディー・チャイラムのもとで行儀作法をしっかり身につけ,チャールズの好みのとおりの美女に変身し,チャールズの心を自分に向けさせるのに成功するものの,自分の地を隠した生活に疲れて,家に帰ってくる。たまたま弟妹と外で元気に活動していたとき,予定より早めにやってきたチャールズと出会い,とっさにセラフィーナは自分の姉で自分はサリーだと名乗ってしまう。
さあ,ここからがセラフィーナとサリーの一人二役が始まる。物語の中心はチャールズの仕事である外交的な秘密の任務が危険なものであり,サリーとして自分のもつ能力をすっかり発揮してチャールズを救う冒険譚が始まる。
まさにアドヴェンチャー・ロマンスの読み応えがあり,チャールズがサリーとセラフィーナが同一人物だと告げられるまで二人の間はどんどん深まっていく。
お約束どおり,真実に気づいたチャールズはセラフィーナ(サリー)から離れていくが,その後二人がどう和解し,互いの愛に気づいていくかが後半の読みどころ。
1作の中に2つの異なった物語が入っているかのような充実した,ハラハラどきどき,しっとり泣かせる快作。ハーレクイン文庫版で読む。
246 マーガレット・ムーア
下山 由美
恋に落ちた騎士
A Warrior's Lady 2002
HS-208/05.02/\903/283p 06/02/04
「戦士に愛を」シリーズ。イギリス中世ヘンリー三世の時代。
フィッツロイ家のリースは厳しい父の教えを受け,騎士としてヘンリー王に仕えていた。女性の前に出ると寡黙になってしまう奥手なところがあるが,騎士としては公正で優秀な働きで王から認められている。そんなリースが宮廷で見かけた美女の後を廊下まで追いかけてしまう。そこを二人の騎士に咎められ,殴られたり,脇腹を短剣で傷つけられたりしてしまう。襲ったのは美女の義理の兄,デラセイン兄弟だった。デラセイン兄弟は王妃エレオノールの親戚筋にあたり,宮廷でも発言力を持っていたが,兄デイモンが絶大な権力をふるい,弟ベネディクトや妹アン,その弟ピアースを支配していた。デラセイン兄弟はデイモン,ベネディクトとアン,ピアースはそれぞれ異母であり,正反対の性格を持っている。まさに光と影。しかし力のないアンとピアースはしかたなくデイモンの支配下に居ざるをえないものの,少年ピアースに対してアンは母親のような気持ちで庇い,接してきた。
一方フィッツロイ家は当主ユーリーンは農民出身でありながら自らの勇猛さと実直さで騎士として宮廷でも認められ,有力騎士の師弟の武芸教師として信頼を受けていた。
アンとリースの出会いはまさに一目惚れ。しかしフィッツロイ家とデラセイン家という敵対する互いの家のしがらみから抜けられない。その二人に解決策として結婚を命じるヘンリー王と王妃エレオノールが所々で登場し,重要な決定をする。イングランド人からすれば王妃エレオノールはフランスから来たいわばよそ者。ヘンリーの思いのままに動かそうとしているように映っている。しかし,いたずらっ子のような二人の決定はこの物語をおとぎ話に?ぎとめるのに大きな役割を果たしている。
大きな戦いがあるわけでもなく,人物造型も単純でそれほど深くもないものの,ざっくりした骨太のストーリーと若者たちのさわやかな活躍とフィッツロイ家の人々の暖かさが感じられ,まさにハッピーエンドを迎えるロマンスらしい佳作。
245 マーガレット・ムーア
石川 園枝
永久なる誓い
In the King's Service 2003
HS-231/05.10/\903/284p 06/01/31
「戦士に愛を」シリーズ。イギリス中世ヘンリー三世の時代。
ヘンリー王に忠誠を誓うウェールズ人サー・ブライズ・モーガンは,美女で知られるスロックトン卿リーリアに求婚するふりをして,スロックトン卿が謀反をたくらんでいないか探る使命を帯びて従者とともに領地に向かう。門前で足の不自由な女性にぞんざいに扱われ,侮辱的な言葉を投げつけられる。しかし,その女性こそ後に互いに愛を誓い合うことになるスロックトン卿の次女レベッカ(ベッカ)だった。領地は彼女によって取り仕切られ,領民からも最も愛されている女性だった。
レベッカの足が不自由になったわけや長女リーリアと次女レベッカの確執,そしてスロックトン卿が謀反をたくらんでいるかなど次々と物語は進行し,いくつかの驚愕の事実が登場し,最後のヘンリー王との会見まで一気読み。スピーディな展開が心地よい佳作。
244 アン・アシュリー
古沢 絵里
伯爵令嬢の憂鬱
Lady Jane's Physician 1999
HS-194/04.10/\903/184p 06/01/31
1819年摂政時代。終結で摂政自身も登場するというサービスぶり。
ヒロイン=レディ・ジェイン・ベレスフォード"Lady Jane Beresford"は上流階級の人間にふさわしいマナーを幼い頃から身につけた伯爵令嬢。ヒーロー=医師トーマス・キャリントン"Thomas Carrington"はジェインのいとこエリザベスとリチャードのナイトリー夫妻の住む領地の近くに住む青年医師。
結局は貴族とジェントリーという身分の違いを二人がどのように乗りこえて愛に気づいていくかということにつきるのだが,上流階級のマナーを身につけ,なかなかその枠からはみ出せないでいるヒロインと,どちらかというと歯に衣を着せずにものをいう医師であるヒーローというそもそも結びつきそうにない二人を結びつけるために,周囲の人たちが暖かく,いろいろな段取りをして大団円を迎えるというところが読みどころだろう。
悪役として登場するサイモン・フェアファックス卿の悪巧みも,かなりの犯罪であるにもかかわらず上流階級のスキャンダルにならないように周囲が取り繕うところを見ると,当時は警察などがあってもほとんど上流階級に罪を認めさせることは不可能だったのだろうと考えられるが,階級内ではどくとくの罰し方があったのかもしれない。
まぁ,物語としては,並という感じか。
243 トリッシュ・モーリ
すなみ 翔
魅惑の仮面舞踏会
The Italian Boss's Secret Child 2005
R-2090/06.01/\672/156p 06/01/29
久方ぶりのHQロマンス。トリッシュ・モーリはオーストラリアのロマンス作家。本作にもオーストラリアの風景が色濃く出てくる。
ヒーローのダミアーノ・デルーカはイタリア系移民。幼い頃農場で働いていた父母と二人の兄をいっぺんに交通事故で亡くし,天涯孤独の身になったが,里親の元を離れて独立し,努力で企業を興し,独力で成功を勝ち取ってきたが,家族の愛を知らないまま仕事一筋で生きてきたため,結婚して家族をもつことにはなかなか踏み切れないでいる。
ヒロインのフィラデルフィア(フィリー)・サマーズはダミアーノの会社で働くOLだが,だぶだぶの服を着て眼鏡をかけ,色気の全くない姿でいるため,ダミアーノはミス・茶ネズミを蔑んでいた。しかし仕事は見事にこなし,ある時社長の前でのプレゼンテーションを成功させる。フィリーも愛する弟夫妻を飛行機事故で亡くし,母親は末期ガンにかかるという不幸を背負っている。そして母親との約束で生きている間に何とか孫を抱かせてやりたいと思っている。フィリーは一代で成功を勝ち取ったダミアーノに密かな憧れはもっていたものの自分を茶ネズミと蔑むダミアーノに声をかけてもらえるとは思っていないし,婚約者のブライスからも逃げられてしまう。
そんな時,社のクリスマスパーティで思い切ってクレオパトラに扮して参加した仮面舞踏会でダミアーノの目にとまり,会議室でダミアーノの思いを受け入れてしまう。この運命的な出会いが二人に秘密をもたらし,シンデレラのように名前を告げないまま会場を逃げ出したフィリーにダミアーノは強い思いを抱いたものの遂に彼女を捜し出すことは出来なかった。
仕事の関係で助手としてダミアーノと二人で出張したフィリーはそれまでの野暮ったい服装をすて,見事に変身してダミアーノの前に現れる。取引先との夕食の間,ダミアーノはフィリーの魅力に気づき,ダンスに誘われた彼女を会場から連れ出し,部屋で再び関係を持つがダミアーノはフィリーがあのパーティの時のクレオパトラだとは気づかない。その時すでにフィリーは身ごもっていたのだが・・・。
結婚とは,愛とは,二人のすれ違いをとおし最後まで読者に問い続ける佳作。
242 テリー・ブリズビン
永幡 みちこ
女伯爵の名誉
The Dumont Bride 2002
HS-227/05.09/\903/283p 06/01/28
MEMO-237「生き返った花嫁」の前作。次作でヒーローとなるウィリアムがいかにして世を忍び,特にジョン王子から身を隠そうとしていたかが解明された。
表紙はUK版とは異なるが,onmimamaさんのRANDOM ROMANCEによるとCatherine Marchの"The Knight's Vow"のようだ。ヒロインのエメリー・モンゴメリー=ハーブリッジ女伯爵は黄金の髪を垂らし深紅のドレスを着て首には種類は分からないが赤い宝石が中央に付いたネックレスを一連着けているだけ。整った顔立ちというよりも愛らしくしかも愁いを帯びた表情をしている。
12世紀末のイングランドの複雑な国内事情,プランタジネット家のリチャード獅子心王とジョン欠地王の兄弟間の紛争,そしてジョンが何故嫌われているかというようなことがストーリーの背景にあり,その歴史の狭間で苦悩するヒーロー=ランジエ伯爵クリスチャン・デュモンと弟ジェフリー,そしてジョンの奸計により父から引き継いだ領地グレイストーン伯領を守るため,クリスチャンとの結婚を余儀なくされながらも,時すでにウィリアム・デセヴェリンにより妊娠させられ,その秘密を告げることにより自分の名誉を失うことを潔しとしない,健気なエメリー。そしてフランス,アンジュー州の自分の領地とイングランドの結婚により獲得した領地よりも,エメリーとの愛を全うしようとして自分の命を投げ出すことになるかもしれない戦いに挑むクリスチャンなど,歴史的背景を踏まえたプロットの見事さは,他の追随を許さないと言っても過言ではないだろう。
歯科衛生士でありながらロマンス小説を書き続けている作者テリー・ブリズビンは作数こそは多くないものの,これまで読了した2作からはよく練られたストーリーのすばらしさと人物造型の見事さが伝わってくる。
241 トーリ・フィリップス
古沢 絵里
身代わりの婚約者
Midsummer's Knight 1998
HQB-18/06.01/\714/389p 06/01/24
MEMO-222「沈黙の騎士」の続巻。前巻で結婚したガイの兄がヒーロー。後半ガイやセレストも登場し,キャベンディッシュ家勢揃いといった感じが味わえる。ヒロイン=キャサリン・フィッツヒューはすでに2回の結婚で夫を亡くしていたが,ヘンリー8世はガイの兄ブランドとこのキャサリンを結びつけようとする。
ストーリーはまったくシェイクスピアの換骨奪胎。「十二夜」ふうのハラハラどきどき大騒ぎ,道化役や,あっちはこっちでこっちはあっちのダブル,そして権力者に振り回される若者たちや魔女や妖精といった存在がまだまだ人々の心の中で生きていた時代の雰囲気をよくだし,しかも残酷な場面も最終的には人の死に至らない優しさをもっており,ヒストリカルでは珍しいさわやかな読後感。
トーリ・フィリップスのストーリーテラーとしての腕の見せ所! しかも互いに入れ替わった二組の男女が混乱しないようにキャラクターをしっかり描き分けきっているところも読みどころか。
240
*
ジュリア・ジャスティス
大谷真理子
戦火に燃えて
Wicked Wager
2003
HS-240
06.01/\903/284p
(MB_Historical)
06/01/21
原題「Wicked Wager=罪深い賭事」。ナポレオン戦争後,ワーテルローの戦いで自らも足を痛め,戦場で負傷兵の看病にあたっていたのは,かつて振られた女性で夫を亡くしたばかりだった。このヒロイン=ジェンナ・モンタギューは,熱い思いをもっていながらも社交界では,持参金をたっぷりもった未亡人という存在でもあった。
放蕩者として社交界の評判の悪いヒーローのアンソニー(トニー)ではあったが,軍隊での経験により,人を思いやることの出来る優しい人に変化していた。しかし,そのことに本人も,ジェンナもまだ納得がいっていない。ジェンナがトニーを人前にでも恥をかかない人間になれるよう手助けをするという約束をする。
ワーテルローからの帰国後,ジェンナは亡くなった夫の家に居留していたが,ある時落馬して,亡夫ギャレットとの間の子供を失ってしまう。優れた乗り手であったジェンナが落馬したことに不信を抱いたトニーは,ジェンナが何者かにねらわれているのではないかと疑いをもつ。そんな時,広場で銃弾を受けるということが起こり,二人はますますその疑いを強める。犯人を捜査しようとするトニーに言われたが,独立心の強いジェンナは危険を承知の上で亡夫の家に留まり,自分の力で犯人を捜そうとする。やがて,従兄弟のレインがフェアチャイルド家の威厳を保とうとするあまり,数々の企みをしていたことが判明し,危機一髪のところでトニーに救われる。しかしその時トニーはレインの放った銃弾を肩に受けて大けがをしてしまう。
「完璧なバーニア大佐に対して賞賛の気持ちはあるけれども愛情は感じない。一緒にいると楽しいけれど,一緒にいたくてたまらないという切羽詰まった気持ちにはならない。ネルソープは以前考えていたような堕落した人間ではないけれど,ギャレットはわたしのためにあのような男性を選ばないだろう。こんなふうにネルソープと一緒にいたい,彼に愛撫されたいという思いを抑えられると信じていること自体間違いなのかもしれない。」と思い至るまでには,ジェンナの心の中で数々の思いが去来する。
そして,「僕をきみにふさわしい男に作り替えるには一生では足りないかもしれないが,これから先僕を愛して慈しんでまっとうな人間にしてくれないか。」というトニーの告白にはずっしりした重みがある。
優しく,思い切った行動をとるさっぱりした性格のジェンナに拍手!
239 ジュディ・デュワーティ
高瀬 まさ江
愛に目覚めるとき
The Virgin's Makeover 2004
N-1089/06.01/\704/220p 06/01/17
「リサは、家業のぶどう園を立て直すためにやってきた経営コンサルタントのサリバンに、ひと目で心を奪われた。こんなに魅力的なのだから、きっと経験も豊富に違いない。バージンの私にも、すてきな体験をさせてくれるだろう。」こんなことで始まる物語だが,「ある運命の物語(ローガン家の物語「Logan's Legacy」)」ミニシリーズの初巻となっており,以下2月「Take a Chance on Me」,3月「And Then There Were Three」と続く。しかし本作を見る限り,ローガン家は影も形もなく,「ファミリーファンド・エージェンシー」という怪しげな会社もまったく登場しない。ただ,養女となったヒロイン=リサと実父ジャレッド,そしてリサの腹違いの兄弟たちの間に骨髄移植の適合性というテーマが若干それらしい雰囲気を出しているだけで,今後これがどのように展開されていくのか全く分からない。全16巻に及ぶシリーズものの初巻としては,あまりに独立性が強すぎて,本作だけで完結してしまっているところが,かえってわかりにくくしている。もう少し今後登場する予定の人物や複雑なプロットなどの紹介があってもよいのではなろうか・・・。そういう意味ではやや物足りなさを感じる。
ロマンスとしてみた場合には,ワイナリーの経営を建て直すため奮闘するリサと経営コンサルタントとして訪れたサリバンのやや強引ともいえる関係の深まりは,まぁ標準的なできかと思う。しかし突然現れた実の父親に恨み言一ついわず洋服を買ってもらったり,義理の弟の骨髄移植のための検査をあっさり受けてしまうリサのあまりの物わかりの良さや,それを応援する養父母のあまりの人の良さに不気味さと物語としての人物造形の浅さを感じてしまうのは私だけだろうか?
238 ステファニー・ローレンス
鈴木 たえ子
愛のソネット
The Reasons for Marriage 1994
HS-241/06.01/\903/284p 06/01/15
リージェンシー。ヒロイン=レノア・レスター(Lenore Lester)は婚期を失ったいわゆるダサイ女主人として独身の兄に代わってレスター家の領地を管理していた。ドレスの上にエプロンをつけ,だて眼鏡をかけ・・・。そして,一生結婚をしないと決めていた。エヴァースレイ公爵(Duke of Eversleigh) ジェイソン・モンゴメリーはワーテルローの戦いでの弟の死により,所領の跡継ぎをもつために早急に結婚する必要が出来たが放蕩者として知られるジェイソンの結婚の噂が流れると,大金持ちの彼の元には多くの,娘を嫁がせようとする母親たちでごった返すだろう。
公爵としての彼の結婚の条件は多い。ドーセットにある所領を取り仕切れること,催し物の女主人役を務めらえること,一定の容貌,育ちの良さ,跡継ぎをつくれることなどなど。しかし,本当はジェイソンは尊敬と信頼に基づいた関係を望んでいた。
なにもかも独断で準備をしてしまうジェイソンに,レノアは覚悟はしていたものの自分に出来る方法で少しずつ仕返しをしていく。そのときの互いの駆け引きがとても痛快。また,都会での刺激的な生活よりも,静かで平安な生活を望むレノアが結婚初夜に夫を待ちきれずに夜着で裸足のまま行ったのはなんと,図書室。しかし広大なその部屋には,ジェイソンの父親が収集した一生かかっても読み切れない書物がリストもないまま整然と並んでいた。あこがれのそんな部屋がまさしく貴族の館の楽しみだと憧れの気持ちをもつ。そして,ジェイソンがレノアと馬を並べて連れて行ったのは,エヴァースレイ峡谷を一望できる高台。パッチワークのような畑の中に家が点在し,中央にエヴァースレイ・アビー(元は修道院だったエヴァースレイ家の館)が灰色の歩哨のようにそそり立っている景色だった。この英国カントリー風の風景を端的に表した記述は,著者の筆力を表している。
レノアは夫であるジェイソンが常に自分を守ってくれることを望んでいたが,結婚数ヶ月でジェイソンはロンドンに戻ろうとするだろうと思い,できるだけ深くかかわらないようにしようとし始める。彼が関心があるのは,わたしが妻のつとめを果たせるかどうかだけなのだと。しかし,エノアはジェイソンに恋してしまっていた。と同時に妊娠に気づいた。そして,妻を愛していることに気づいていてもなかなかそのことを言い出せないジェイソン。そんな二人の気持ちのすれ違いが読者をやきもきさせる。そして,そんな二人にすれ違いの原因をつきつけるジェイソンの叔母レディ・アガサの痛快さ。まさしくアガサの名前にふさわしい推理力と行動力。本作の陰のヒロインといってもいい存在だ。
ここ2作中世ものを読んできたが,本作をとおして摂政時代の貴族の生活とものの考え方がストーリーを引き立てることに改めて感心させられた佳作。
237 テリー・ブリズビン
井上 碧
生き返った花嫁
The Norman's Bride 2004
HS-239/06.01/\902/283p 06/01/14
全身に激しい打撲を受けて死の淵を彷徨うヒロインを助けたのは,ジョン王子の陰謀を手助けし,妹キャサリンを人質に取られたため世を忍ぶ仮の姿でオリック卿の庇護を受けて城の外の小屋で暮らすウィリアム(ロイス)だった。村の治療師ウェンダの助けを得てヒロインを介抱していくことを決意したロイス。しかし,目覚めたヒロインは,記憶を失っていた。仮の名前をイザベルとし,ヒーローのロイスと二人きりの生活をしばらく続けたイザベルは,自分を本当に心配してくれるロイスに頼る気持ちをもち,世を忍ぶ生活をしていたウィリアム(ロイス)も次第に生きる目的を見いだそうとする。中世を舞台にした記憶喪失ものは珍しくはないが,記憶を失ったヒロインあるいはヒーローが記憶を取り戻していくまでを物語の中心に据えることが多い中で,本作はさらにヒーローの過去の謎とその二つが絡み合っていくという複雑なプロットをもつ佳作に仕上がっている。時代的な背景に少し知識がないと,読み切れないのかもしれない。
記憶を失ったヒロインは日常の生活の中で徐々に記憶を回復していく。そしてついに自分のアイデンティティをすべて思い出したとき,自分の死んでいることが大きな意味を持つことに思い至る。そして,ヒーローのウィリアムも自分が隠れて暮らすことが必要。そんな二人が,本当の自分の身分を捨て,二人の愛を成就させていくハッピーエンドは感動的。
236 エレイン・ナイトン
辻 早苗
完璧な騎士
Fulk the Reluctant 2004
HS-225/05.08/\903/284p 06/01/07
原題は「気乗り薄のフルク」で,ヒーローのニックネーム。ヒロインは鉄の女と呼ばれるジャンヌ・フィッツウォルター。
2作続けて男性並みの体力と気力を持ったヒロインの作品を読んだ。ジャンヌは「不名誉な噂」のエリザベスほどのかわいげがないのが玉に瑕だが,ヒーローのフルクは最初から最後までジャンヌをほめ続け,ジャンヌに暴力をふるわれても怒ることなく,ジャンヌと領地のウィンダミアのために尽くす,涙が出るほどの忠実さ。それも,自分の心の奥底にある7年前の体験,実の兄を夢中になっているうちに殺してしまうという出来事に自分の凶暴性を深く認識し,国王からの騎士叙任を断るほどだった。
一方ヒロインのジャンヌは男として生まれれば父も自分をかわいがり,領地を任せてくれたはずという想いにとりつかれ,女であることを否定し,「完璧な騎士」を目指そうとする。最後には自分のことを真剣に考えてくれた父の深い思いに気づき,女性としての立場や優しさを取り戻すが,それまでには多くの血が流れることになる。
時代は13世紀前半イギリス,ヘンリー3世の時代。父ジョン王の跡を継いだプランタジネット朝第4代王。
物語ではこの他,悪役のグリマルド伯爵(完璧なS),後に改心して立派な騎士になろうとするヘンギスト卿,フルクの妹でやはり気が強いが愛らしく好奇心の強いセリーヌ,そして兄妹の母で修道女になったシスター・ブリジッタ,後にセリーヌの夫になるフルクの親友マルコム・マックニール卿,ジャンヌの侍女で不幸な幼年時代からジャンヌに男に対する根本的な不信感を植え付けたリオバなどなど,一人一人の登場人物がとても生き生きと描かれている佳作。
235 リン・ストーン
苑木 春美
不名誉な噂
The Wicked Truth 1997
HS-238/05.12/\903/283p 06/01/03
年明け第1の読了本。
イギリスビクトリア朝時代。ボウ街の刑事も登場するミステリロマンス。
ヒロイン=エリザベス・マーレイは伯爵令嬢だがとかくの噂があり,奇行で知られている。大切にしている甥のテリーがエリザベスとの結婚を言い出したところから,ヒーローのハヴィントン伯爵ニールはエリザベスにクロロホルムをかがせ,人里離れた自領に連れ去る。しかしそこを訪れたのは,テリーが殺され,その犯人としてエリザベスが考えられていると伝える友人のマクリンデン警部だった。エリザベスをかくまうため,ロンドンに戻ったニールは,エリザベスに男装させるが,次第に彼女に惹かれていき,エリザベスもニールの本当の暖かさに触れ,惹かれるものの,初めての体験になかなか踏み切れない。後,泥酔したニールとエリザベスは結ばれるがニールは記憶に残らなかった。この時のことが二人のすれ違いの元になって物語後半まで引きずっていくが,ちょっとこれだけで引きずるのはどうかなぁ。
エリザベスはその後も何度か危険な目に遭うが,真犯人はだいぶ透けて見えてしまうのが惜しいが,まぁミステリとしてはなかなかかなとも思える。
それにしても,男装のエリザベスと女性としてのエリザベスの二重人格のような交代劇,そして勇敢で頭がよく,さっぱりとした性格のエリザベスの本来のキャラクターがすばらしい。
234 パトリシア・F・ローウェル
古沢 絵里
愛と復讐の館
A Damgerous Seduction 2003
HS-237/05.12/\903/284p 05/12/31
年末を締めくくる1冊はヒストリカルになった。ローウェルについては,著作にはローエルと表記されているが,斜麓駆としてはローウェルという表記をとりたい。ヒストリカルについてはonmimamaさんのウェブページRANDOM ROMANCEに詳しいので,解説的にはそちらに譲りたいが,現時点で本書についての書き込みはまだ無かった。
前作「灰色の伯爵」は未読だが,いつも最新刊から初めて,さかのぼって興味をあるものをたどっていきたいと考えているので,時間があればこちらも読みたくなってしまった。ローウェルは登場人物に魅力がある。特に今回はロマ(ジプシー)について詳細が解説されているのが売り。イギリス人とロマの血を引くヒロイン=ユーレリア(レリア)。どちらの側からも仲間はずれにされて孤独に過ごしてきたが,表紙のヒロインは浅黒くなめらかな肌に漆黒の髪,目鼻立ちの整った顔などロマとイングランドのハーフにふさわしいモデルで,孤独感を上手く表現している。
物語の舞台はコーンウォール。荒れ果てた城には二つの塔があるが,内部の階段は腐っていて,所々がかけていて,なれていないと大けがをする。乱暴で妻を顧みない夫が領地や城を放置し,妻であるレリアが面倒を見ているが,夫の死後もその亡霊に悩まされている。
ヒーローのキャリック伯モーガン・ペンダリスもコーンウォール出身にふさわしい海の男。レリアの夫で悪役のコーデイル・ヘインに奪われた領地と財産を努力の結果買い戻し,復讐を胸に城に戻ってくるが,一足違いでコーデイルは海に出た後だった。残っていたのはレリアと祖母それに数人の使用人だけ。初めはレリアに復讐の矛先を向けようとするが,レリアの優しく素直で無邪気な性格と美しさに惹かれ,礼儀をもって接しようとするようになり,この物語のもつ陰惨さをすっかり変えてしまう。モーガンの甥のジェレミーも子供らしいすばらしい男の子。レリアにすっかりなじみ,二人が憎しみ合うのを押さえる役割を果たす。
物語は出没する幽霊の仕業を,謎を突き止めようとするモーガンとそれにおびえるレリアとが不思議な運命で引かれ会っていくのを中心に進んでいく。そこにレリアの異母兄や,祖母とその一族のロマの人々などが随所に絡み合い,謎解きの興味も十分に表される。
ジェレミーの出自の謎や幽霊の正体など驚愕の事実が自然に明るみに出,大団円を迎えるまで,一気に読ませる佳作。
233 ヘレン・ビアンチン
原 淳子
結婚の意味
Stormfire 1992
HQB-15/05.12/\546/205p
R-1011/93.07/\652/156p
05/12/29
「きみは,大人の姿をした子供で,作り物の無邪気な雰囲気を漂わせている。」 家でメイクを落とし,トレーニング・ウェアを着て,髪を一本だけの三つ編みにした姿を見たジェイクがヒロイン=リゼットを評した言葉だ。一回り年下の義理の母親に対して30代の男性は一体どんな付き合い方をしたらよいのだろうか。
舞台はオーストラリアのメルボルン。メルボルンの天気が日本と同じように雨や風があり,ウェットであることがシンプルに描かれているのが興味深い。
ジェイクはあらゆる手を使って,次々にリゼットの生活に入り込み,リゼットの心をかき回す。金持ちで強い権力を行使することを当たり前のように行い,押しの強さで社交界にも次々に入り込んできて,リゼットを追い回す様子に,読者はリゼットに感情移入してあたかもホラー映画のような緊迫感をもたせていく。そして一人で映画に出かけたリゼットが若者たちのグループに暴力を受けた後,ジェイクは強権力を使って転院させたり,医師をすっかり丸め込んだりしてしまう。
「初めは親父の金目当てにちがいない」と思っていたと同時に「きみをどういう人間か分類しようとしてもどの枠にも当てはまらない」リゼットを,「どんなに激しく働いてもきみを頭から追い払うことができない」ほどの気持ちをもってしまっていたことをジェイクはなかなか言い出そうとしないし,リゼットとしてもその気持ちを信じるには時間が必要であろう。
結局二人は結婚という形で愛の気持ちを表そうとする,これは,大人のロマンス物語。
232 ベティ・ニールズ
村山 汎子
片思いの日々
(冬の花嫁たち)

Matilda's Wedding 2000
PB-27/05.12/\945/156p
R-1660/01.03/\672/156p
05/12/28
ベティ・ニールズの本作品とエマ・ダーシーの「ダーリンと呼ばないで The Marriage Decider 上村悦子/訳 1998」を収録した「冬の花嫁たち」の1編。
イギリスの片田舎での静かな生活を送る人々のロマンス。これほど音のない世界を見事にロマンスに仕立てるベティ・ニールズの手腕に脱帽。まるでヒストリカルのようでいて,ヒストリカルですらもっと派手やかな場面や騒がしい場面があるのではないかと思われるほど。この作品で唯一音が感じられるのは村のパーティでのダンスの場面ぐらいか。
マチルダ・ペイジは両親とともに引っ越してきた小さな村の診療所の受付をすることになる。医師はドクター・ラヴェル,独身。すでにフィアンセのルシアと婚約しているが,一目会った瞬間からマチルダはドクターに一目惚れしてしまう。
それからは小さな村の診療所での生活が淡々と綴られていくのみ。大きな事件も起こらず,日常の両親や周囲の人々,そして医師の生活が少しずつ語られていくだけなのだが,ドクターが目立たず,十人並みの器量のマチルダに次第に引かれていく変化の様子が読者を惹きつけていく不思議な作品。性格の美しさこそ,器量の美しさということの模範的ロマンス。
診療所の診療時間が朝2時間ほどと夕方から夜にかけて。日中は医師が往診に出かける時間というところが興味を引いた。
231 アレキサンドラ・セラーズ
山口 西夏
孤高のシーク
(砂漠の王子たち)
Sheikh's Castaway 2004
D-1108/\05.11/\641/156p 05/12/21
砂漠の国パジェスタンの聖杯番たちのロマンスを綴るおとぎ話のミニ・シリーズ。
一人目の聖杯番は“バリ・アルカリド”。ヒロインはプリンセスのヌア・アシュカニ。
本来は優しく愛らしい人柄でありながら,プリンセスであることからわがままで,何でも思いのままにできると思いこんでいるヌア。バリとヌアの結婚式の日,なんとヌアはウェディングドレスのまま式場から逃げ出してしまう。多くの人たちに迷惑をかけることになることに気づかない,このわがまま勝手な行動に怒ったバリは,徹底的にヌアを追いかける。そして二人が到達したのは無人島。
まさにおとぎ話のストーリー展開。なかなか心を開こうとしないヌアに,バリはあの手この手で困らせ,ヌアの子供っぽいところを矯正していくことに成功。ヌアは怪我をしたバリの優しさにうたれて,自分の手を汚して働くことの喜びを感じるようになる。そんな時,バリは外の世界と連絡の取れる手段を思い出したのだが・・・。
南の孤島での二人の生活も結構楽じゃない。現代社会での生活とどっちが大変?そんな究極の選択を読者に突きつける1作。
それにしてもヒロインわがまま放題には,だれしもブーイングしたくなりません?
230 リンダ・ハワード
皆川孝子
危険な駆け引き
A Game of Chance 2000
LH01-03/05.12/\760/285p 05/12/19
リンダ・ハワードのマッケンジー家シリーズ最終巻をMIRA文庫版で再読。高名なこのシリーズをMIRA文庫版で読めるのはうれしい。再読ではあるが,たちまちストーリーに引きこまれてしまい,初読と同じように感情移入してしまう,つまり再読に耐えるのがリンダの諸作の特徴であり,登場人物の魅力でもある。
ネタバレになる可能性が高いので,リンダの作品のコメントは難しい。ここでは,本書の冒頭にマッケンジー家の系図があること,作者リンダの本作品についての「読者の皆様へ」がついていることを記しておきたい。
とにかくおすすめの一冊。
229 デビー・ローリンズ
水月 遥
追憶の行方
He's All That 2004
BZ-34/05.12/\725/220p 05/12/17
富豪のお嬢様と父親の代から彼女を見守ってきたお屋敷の庭師の息子の恋というだけのシンプルなストーリィ。
インターネット上のサイバー読書会「イヴの林檎」でひとときのロマンスを標榜する3人。お嬢様のヴィクトリア(トリ)が見付けたのは,庭師の息子ジェイク。幼い頃窓からそっと眺めていた憧れの人。MBAを取得後父の会社で相当の地位を占めるための研修中。母親は絵に描いたようなどうしようもない俗物。父親は家のことなどかまってはいない。トリが相談できるのは姉のマロリーとサイバー読書会の面々のみ。
特に大きな事件があるわけでもなく淡々と二人の相性の良さばかりが描かれていく。こうなると二人が結ばれるまで淡々と読んでいくだけ。
228 キャシー・ディノスキー
神鳥 奈穂子
熱き終末
A Rare Sensation 2005
SA-02/05.11/\609/155p 05/12/16
シルエット・アシュトンズ第2弾。第1弾も読み始めたが,この第2弾の方が人間関係の複雑さがストーリーと密接には関係していないので,シリーズものというよりはカウボーイと獣医のロマンスという視点で読むことが出来た。しかし,スペンサー・アシュトンと彼を取り巻く人間関係の複雑さは巻を追うごとに大きくなるのだろう。
この第2弾「熱き終末」は邦題が示すとおり,週末のロデオ大会にでかけた二人がキャンピングカーで結ばれるという単純なものだが,学歴の差を気にするヒーローと身持ちの悪かった自分の母親と自分を重ね合わせて恋愛になかなか踏み切れないでいるヒロインという構図は,とてもわかりやすい。二人がどこでそれを乗りこえるのかがカタルシスになるのであろうが,かえってあっさり友人のアドバイスで,という本書のような解決策の方が,安心していられる。
227 ダイアナ・パーマー
児玉 ありさ
情熱のパラダイス
Carrera's Bride 2004
N-1088/05.12/\704/220p 05/12/11
ダイアナ・パーマーの「テキサスの恋」シリーズ最新作。とはいえ,舞台はテキサスではなく,ヒロインの出身地がテキサスというだけ。
バハマに休暇で来ていたデリアはエスコートしてくれた男性から絡まれ,乱暴されようとしていた。それを助けてくれたのはカジノの経営者マーカスだった。しかしその時デリアはマーカスを警備主任と勘違いしたがマーカスは自分がオーナーだとは名乗らずデリアの誤解のままにしていた。実はマーカスはなにかと悪い評判が立ち,ギャングとのつきあいが噂されていたため,デリアに本当のことを言えないでしまったのだ。実はマーカスの弟は麻薬中毒から逃れられず,ギャングの頭目によって殺されていたのだが,その証拠を探るため,マーカスはおとり捜査に協力していたのだ。
デリアとマーカスは互いに強く惹かれはじめ,ついにデリアは妊娠する。姉夫婦は何かとマーカスとの交際を警戒し,商用で他の町に行ってしまうが,デリアはマーカスとの交際を言えずにいる。
しかし,マーカスはおとり捜査の大切な場面ではデリアを守るため,あえて他の恋人をデリアに見せつけ,あきらめさせようとする。その芝居に半分気づいてはいたものの,デリアはマーカスを守るため,カジノでマーカスを撃とうとしていた殺し屋にわざと体当たりし,そのもめ事の最中に階段から転落し,流産してしまう。マーカスも騒動の最中に頭を打ち,それまでの記憶をすっかりなくしてしまう。
マーカスの記憶は戻るのか。戻るとすればいつか。ギャングとの対決はどうなるのか。傷心のデリアは立ち直れるのか。いろいろな期待を持たせつつ。ストーリーは大団円を迎える。離れコジマでのギャングとの対決。マーカスの記憶の回復。そしてデリアとの愛の確認。ハッピーエンドになることは分かってはいても引きこまれずにはいかない,ダイアナ・パーマーのストーリーテリングの見事さに嵌ってしまう快作。
226 マーゴ・マグワイア
宮沢 ふみ子
エルサレムの騎士
The Virtuous Knight 2003
HS-236/05.12/\903/284p 05/12/10
表紙が一風変わっているマグワイアの一作。通常,登場人物が中心に描かれ,周囲はカンバス風になっているが,本作では中の肖像がカンバスまではみ出た感じで表紙全体にカラーで描かれている。
13世紀,ヒーロー=アレクサンダー・ブルトン(アレックス)は最愛の妻と息子を病気でなくしてしまい,聖地エルサレムで十字軍として従軍。親友ロジャー・ケンダルから聖遺物である布を隠した剣の鞘を託される。家族を失った悲しみから立ち直れず,クリュニー修道院の修道士になろうとしている。
ヒロイン=ルーシー・ケンダルは病弱で片足が悪いが,美しく純真な娘。伯爵の兄を亡くした後,いとこのヒューがルーシーを修道院に送ってしまい,修道女見習いをしていたが,クラックヘイヴン修道院から数人の修道女たちとレディ・エルスベットとともにホリーウェイク修道院の修繕をするために旅をしていたところを,盗賊に襲われる。
それを救ったのがアレックス。それぞれ異なった目的を持った二人だったが,アレックスはルーシーの目的を手伝うことになってしまう。
修道士の誓願を立てようとしているアレックスはルーシーの純真さと美しさに惹かれながらも,何度かルーシーに触れようとしながらもその都度思いとどまってしまうため,ルーシーはかつて兄以外の家族から,そして兄からさえも見捨てられた経験から,アレックスも自分をお荷物だと思っていると考えてしまう。
様々な苦難が二人を襲い,特に聖遺物をねらう三人の黒騎士から逃れて二人の旅は続いていくが,後半,アレックスの知り合いの司祭にあって旅の目的を尋ねられたとき,アレックスはとっさに二人の結婚を願い出てしまう。式は簡単に済み,二人は夫婦になるものの,その後も互いにアレックスの旅の目的地に二人で向かうことになる。
最後はアレックスの家に到着し,そこに三人の黒騎士が襲ってきたとき,聖遺物がその効果を発揮する。詳しくは書かれていないが,アレックスの負った傷も,ルーシーの足もたちまち回復してしまうのだ。
エピローグではルーシーは双子を含めた4人の男子を産み,さらに双子の女子を産み落としたところでハッピーエンドとなる。
少女期から次第に大人の女性に旅を通じて成長していくルーシーと,純粋なルーシーの愛で家族を失ったトラウマから救われていくアレックスの心の旅がテーマ。
表紙に描かれるルーシーはとても愛らしく無邪気さの残る少女のような風貌。対するアレックスは鼻の高い亜麻色の髪をしたハンサム。たくましさよりも知性を感じさせる顔立ちだ。
225 アン・ヘリス
愛甲 玲
サタンの花嫁
Satan's Mark 2000
HS-234/05.11/\903/284p 05/12/02
ヒロイン=アネリスのキャラクターのすばらしさが諸処にちりばめられた佳作。
厳格なピューリタンの叔父叔母に育てられたアネリス。叔父フェザーストンはクロムウェルの親友であり厳格なピューリタン。叔母レディ・プルーデンスに厳しいしつけと神への敬虔さを叩き込まれたアネリスだが,両親から受け継いだ美しさといたずらづきな性格を自分でも押さえることができないことがあり,罪深さをいつも指摘されて育った。
ある日,亡き父が自分の後見人と決めた人物がいることを知る。そんな折,散歩途中の森で美しい黒髪をした紳士に出会い胸をときめかす。叔父はある人物からの手紙を読んだことから時々精神に異常をきたすことが見られ,後ろめたい気持ちをもちつつもアネリスは後見人のいるロンドンへと旅立つ。そしてロンドンで会った後見人とは「サタン」と呼ばれている村であった黒髪の紳士だった。
運命的な出会いをするアネリスとセントジョン侯爵ジャスティンだったが,後見人と被後見人は互いに愛することはできない。またピューリタンと王党派の確執,ジャスティンとその母レディ・エミリーとの確執など様々な障害が,時代的背景をもとにこれでもかというぐらいあげられる。アネリスの想いは遂げられるのだろうか。
レディ・エミリーの保護と指導の下,宮廷にデビューしたアネリスはすぐに元来もっている美貌と知性の高さを周囲に認められ,サロンの寵児となる。そんな彼女を気遣いつつ自分の愛情に気づかない,また気づこうとしないジャスティン。
ジャスティンの親友ロバートとラルフ。のちにラルフと愛を培うレディ・ベアトリスなど周囲の人々もにぎやかに登場する。真骨頂は国王チャールズ2世。国王自身にも目をとめられるほどの美貌と知性の持ち主アネリスだが,ジャスティンの愛を獲得するまでの紆余曲折とジャスティンが危機に陥ったときに自分の愛の深さに気づいていくアネリスの心の成長がバランスよく語られるストーリー展開に引きこまれる。
終末で語られる「あった瞬間あなたはわたしに印を刻んだのよ」「サタンの印?」に,原題の意味が込められている。
224 エマ・ダーシー
藤村 華奈美
挑発的なプロポーズ
The Outback Bridal Rescue 2004
R-2073/05.11/\672/156p 05/11/25
旅立ちの大地最終話。オーストラリア奥地の牧場で更正の日々を送った3人の男たちのロマンスを綴ったミニシリーズの3作目。カントリー歌手として大成功を収めたジョニーが心のふるさとを発見するまでの物語。SHALOCKMEMO156ではリックとララ,SKALOCKMEMO184ではミッチとキャサリンの二組のロマンスが綴られていたが,みんなに好かれ,陽気なジョニーにはどんな過去があり,それを慰めてくれる女性は現れるのだろうか。
第2作の終末ではガンダムラで3人を受け入れ,育ててくれたパトリック・マグワイアが亡くなるという重大な結末が語られており,その葬儀の準備をするため3人がガンダムラを訪れる。ジョニーはパトリックの末娘メガンに密かな思いを寄せていたが,恩人であり父とも慕うパトリックの娘であれば,妹のような感情を抱いていることもごく自然の成り行き。しかしメガンの方はいつも陽気で自分を助けてくれたジョニーに兄以上の感情を抱いていたものの,その思いが遂げられないままジョニーは世界的なカントリーウェスタン歌手として世界中を飛び回り,辺鄙な奥地の牧場でしか過ごしたことのない自分にジョニーを取り巻いている美女たちと比較して思いを寄せるなどとは思えず,自分の感情を閉じこめてしまう。このすれ違いは容易に想像がつき,わかりやすい感情。
ガンダムラではパトリックの死と大干魃による牧場の疲弊で経済的にも大きな負債を背負っており,すでに嫁いだ二人の姉の幸せを羨みながらもメガンは一人でこの困難に立ち向かおうとしている。この健気さもすばらしい。そしてパトリックはその遺言で,負債を含めたガンダムラの遺産の51%をメガンに49%をジョニーに残した。この微妙な2%の差にはパトリックの大きな賭が意味を持っていた。その意味を本当に知るのは弁護士のミッチだけだが,リックもこの企てには一枚噛んでいたのかもしれない。その意味を探りながらもメガンとジョニーは互いに気持ちをぶつけながらも,ガンダムラの再建のために努力しよう,パトリックの思いにたどり着こうともがいていく。しかしそれは二人でなければ解決できない問題だった。このすれ違いには本当に切なさを禁じ得ない。
ついに互いの思いを打ち明け合い,心身共に結ばれた二人だが,メガンが妊娠に気づいたとき,ジョニーは初めての映画の撮影でアメリカに渡っていた。後にこの映画が完成し,関係者全員で試写を見ることになるのだが,そのストーリーはまさに「シェーン」そのもの。このあたりが作者のちりばめた罠の一つ。あたかもこのミニシリーズはこのシーンのために書かれたかのように思える。
最後は「ガンダムラ(いい日)に着いた日は,たしかにいい日でしたよ」「これであなたの使命は果たされましたね。僕らはみんな我が家に帰ってきました」というジョニーの台詞で締めくくられる。
223 ペギー・モアランド
氏家 真智子
罪なる秘密
Sins of a Tanner 2004
D-1107/05.11/\641/156p 05/11/22
ペギー・モアランド著”タナー家の遺産”シリーズ最終話。前作まででタナー家の4人の息子はすべて伴侶を見いだしたので,最終話ではバック・タナーの後妻の連れ子,フィットの物語となり,改めて5人の兄弟の家族愛が語られる。
ヒーロー=フィットは,タナー家の4兄弟とは姿形も異なるし,女性と直接ロマンスを語らうようなことも苦手ですぐに赤面してしまう性格。しかし周囲の兄弟たちが次々に結婚してしまうと,自分だけが独身でいることにふと寂しさを感じるものの,女性と話すと赤面してしまう自分の性格からこのまま独身で,牧場の馬たちと生活することも仕方がないことだとも思っている。
そんなフィットの元を訪れたのは,かつて思いを寄せていた女性メリッサ・ジェイコブズとその一人息子グレイディだった。メリッサは自分の所有する馬の調教をフィットに依頼してきたのだが,これまでにも数人の調教師からさじを投げられた荒馬ジェネラル(将軍)をなんとしてでも調教して高価に売りに出さなければ,自分の借金を払えなくなっていた事情があった。そしてその借金は亡夫の借金であり,借り主はなんと実の父親マイク・グレイディだった。マイクはフィットの義父バック・タナーの旧友であったことから,メリッサとフィットも友情を育んでいたのだが,バックにしろマイクにしろ子供に対する愛情薄い男で,二人の間もちょっとした行き違いから分かれることになってしまっていた。二人が別れ,メリッサが亡夫マットと結婚せざるを得なくなった理由が次第に明らかになり,一人息子グレイディとフィットが次第に心を通わせ出すと,メリッサはフィットが自分たちの生活に口出しすることを頑強に断り,頑なに心を閉ざし,借金まみれの生活を続けようとする。その理由はグレイディが本当は分かれる前にフィットとの恋愛でできた子供だったからだった。自分が捨てられたと感じていたメリッサだったが,ついには父マイクのいじわるなやり方で,フィットも傷つき,故郷を離れなければならなかったことが分かる。
二人の関係は一人息子グレイディを間にして,タナー家の兄弟たちやその妻たちの心遣いで次第に修復され,「メリッサ,僕も愛しているよ,愛する息子のため最高の義理の父親になるよ」という告白に至る。幼いグレイディに対しては,本当の父親はフィットであることは一時保留にすることで二人の愛の問題はとりあえず解決することとした訳である。
前4作で,次々に真実の愛を見付けていくタナー家の兄弟のロマンスを読んでくると,フィットとメリッサの愛も劇的な割には,底流にほのぼのとしたあたたかな家族愛を感じ,インディアン・サマーのような暖かい気分で読み終えることができる佳作に仕上がっている。
222 トーリ・フィリップス
古沢 絵里
沈黙の騎士
Silent Knight 1996
HQB-14/05.11/\714/388p 05/11/20
1528年10月。フランス,ド・モンカルム家の5女セレストは父の決めた許嫁の下へ向かった。しかし,秋から冬に向かう季節の旅は16世紀当時は大変な難儀をするものだということを本書はこれでもかというほど描写している。自らもシェイクスピア劇の女優として活躍している作者のトーリ・フィリップス。この時代の豊富な知識と疑似体験を生かして,時代を実に忠実に表している。
ヒロインのセレスト・マリー・ド・モンカルムは美人で愛らしく,陽気で気だてがよく,といかにもお姫様なのだが,少々おしゃべりで男性から見ると生意気な気の強さも併せ持つ。いつか美しい騎士が自分を迎えにくるという絵物語を信じる純真さも兼ね備えていて,魅力的なヒロイン。
ヒーロー,ガイ・キャヴェンディッシュは28歳,金髪で長身,肩幅の広いだけでなく女性なら誰でもうっとりする美顔の持ち主。ヒロインたち一行が旅に難儀して立ち寄った修道院で見習い中だが,実はキャヴェンディッシュ家の次男で家を飛び出して間もない元騎士。修道士の身なりをいていても十分に女性を惹きつけるだけの容貌をもった彼にとってセレスとの一行は最も修行の妨げになる一行だったが,院長は一行を目的地まで送り届けるよう修行としての課題を課した。
セレストの守役ガストンや伯母マルグリット,後に一行に加わる少年ピップなどユニークなキャラが次々に登場するほか,修道士になろうと家を出たにもかかわらず,苦境に陥ったガイを何くれと応援するキャヴェンディッシュ家の家族の暖かさなど,終始冷たい気候の中の旅物語であるにもかかわらず,暖かい読後感を得られるのはこれらの登場人物によるものと思われる。
原題は”Silent Knight”。邦題をもう一ひねりするなら直訳ではなく『聖なる騎士』とすべきか。
キャヴェンディッシュ家の物語は今後もHQBで刊行予定。
221 ニコラ・コーニック
吉田 和代
不道徳な淑女
Wayward Widow 2003
HS-233/05.11/\903/284p 05/11/18
放蕩貴族の素顔最終話。第1巻でヒロインエイミーの敵役を務めたジョスリンの妹ジュリアナと幼少の頃の知り合いマーティン・ダヴェンコートのロマンス。
第1巻「華麗なる一手」から2年後の1818年。その16年前の1802年ジュリアナ・タラントは14歳,マーティン・ダヴェンコートは「もしきみが30歳になったとき,まだ結婚していなかったら,ぼくが喜んで夫になってあげる」と無邪気にいう。それから16年後。
マーティンは実の弟や妹,さらには腹違いの妹らを養いつつ下院議員を目指している。しかしその重責を果たそうとするあまり,立派で融通の利かないハンサムな男性に成長していた。一方ジュリアナは最初の夫を亡くし,母の愛人だったクライヴ・マシンガムとイタリアへ逃避行したり,クライヴにイタリアで捨てられると,品のよくない場所に出入りし,周囲をあっといわせることを楽しむことで孤独をいやしていた。その背景には両親から愛されていないという孤独感があった。
ジュリアナとマーティンは,最後はマーティンのねばり強い愛と,ジュリアナが世間の風評とは異なる姿をもっていることを見抜いたマーティンの弟妹の理解を得て,ハッピーエンドに終わるのだが,二人の結婚直後に登場するマシンガムの存在がもたらす問題を解決するジュリアナの母の思いがけない方法が,何ともやりきれなさを残し,後味の悪さばかりが残る結末になっている。またジュリアナのブラックホールのような孤独感が全編を通じて流れ,シリーズ全体を重苦しい雰囲気にした結末になっている。
220 エリザベス・ムーン
齋藤 伯好
復讐への航路
Marque And Reprisal 2004
SF1537/05.11/\1050/639p 05/11/13
「若き女船長カイの挑戦」第2弾。
ヒロインのカイラーラ・ヴァッタの父の経営する惑星スロッター・キーの一族の邸宅やヴァッタ航宙本社等が攻撃を受け,一族の大多数が殺害されてしまうが,インプラントを装着しておらず,アンシブルも故障しているため,カイラーラ(カイ)はそれに気づかない。ヴァッタ一族はなぜ襲撃されたのか,その真犯人は誰か。一方,サビーナ星系での冒険を経て,ぼろ商船「ゲーリー・トバイ」で惑星ラストウェイへ向かう途中,立ち寄ったベリンタ星のステーションで様々な妨害や襲撃を受ける。これらはヴァッタ一族を襲った犯人と同じだろうか,サビーナ星系での冒険の復讐だろうか。
前作「栄光への飛翔」で大活躍した若き女艦長カイラーラ(カイ)・ヴァッタ。貨物船<グレニーズ・ジョーンズ>改め<ゲーリー・トバイ>での新たな冒険は一族の悲劇で幕を開ける。ミステリ仕立ての冒険活劇であり,SFとしての専門的な知識なしで多彩な登場人物の人柄や心の動きが楽しめるロマンス巨編。
次々起こる襲撃事件を乗りこえ,その合間に商魂たくましく儲けを考えてこまめに動き回るカイ。新たな魅力溢れる登場人物たち。いとこのステラとトビー,そしてラフェとのロマンスの断片と悪役オスマンなどストーリーの進行に伴って次々に現れる人物造形の巧みさに引きこまれ,一気読みが可能な639ページ。
原題の副題にMoving Target(動く標的)はまさしく本書を言い得て妙。
219 ニコラ・コーニック
鈴木 たえ子
美貌のシャペロン
The Chaperon Bride 2003
HS-230/05.10/\903/292p 05/11/10
1816年6月。前作「華麗なる一手」から2年後。イギリスで保養地といえばバースが知られており,バースを舞台としたものとしては,ピーター・ラヴゼイが有名だが,ブライトンやここ,ハロゲートも知られているようだ。個々ハロゲートの湯泉は文中の表現から硫黄泉のようだが,19世紀のイギリスでは日本と違って温泉(保養地)には貴族が保養にやってくるということが一般化していたのだろうか。前作のジョスやエイミーは本作の最後に結婚式の場面でやっと登場するので,シリーズとはいえ,あまり関連性はない。
本作のヒロインのアニス・ウィッチャリーは若くして未亡人になり,しかも結婚生活では夫に管理されて苦労した経験をもち,結婚に対しては一種のトラウマをもちながらも,良家のお嬢様がうまく良家の子弟と結婚できるように社交界でリード役,お目付役を務める「シャペロン」を職業としている。シャペロン(chaperonまたはchaperone)とは元来、若い女性が社交界にデビューする際に付き添う年上の女性を意味している言葉らしい。
ヒーローのアダム・アシュウィック伯爵は前作タラント家と関係があるらしいが,シーズンの間,実家のあるハロゲートに滞在している貴族。やはりすでに深く愛していた妻を亡くし,もう2度と他の女性を愛せないと思っている。
ゆったりした保養地のハロゲートでは近年サミュエル・イングラムという成り上がり者により囲い込み,地上げが行われており,古くからの住民や農民から反感を買っていて,ときどき放火などの乱暴な事件が起こっており,治安が不安定になっていた。そんな最中,シャペロンのアニスはクロスリー姉妹(ファニーとルーシー)をハロゲートの社交界に伴い,結婚相手を見つけるための付き添い役として日々努める中でアダムと出会い,互いに惹かれるものを感じる。しかし,シャペロンは預かった娘たちの結婚を成就させるための職業であり,自らの結婚や恋愛は御法度という職業。そのことがアダムに惹かれる思いとアダムが亡くなった妻を今でも愛していること,そして,自立心が強く自らの結婚に深く傷ついたことのあるアニスは結婚できない理由がこれでもかというぐらいある。それをアダムがどのように乗り越えていくのか。読む方は次々と起こる事件の合間に見え隠れする二人の心の変化に引きこまれ,最後までハラハラどきどきしていくことになる。
ストーリー・テラーとしてのニコラ・コーニックの本領発揮の佳作。本作もリージェンシーの貴族世界の様々な蘊蓄を十分堪能できる。
218 ニコラ・コーニック
井上  碧
華麗なる一手
The Earl's Prize 2002
HS-229/05.09/\903/292p 05/11/07
リージェンシーもの。1792〜1814と12年ほどの時の流れはあるが,本編は1814年に起こっている。
放蕩者ともっぱらの評判を得ているジョスリン・タラント侯爵は29歳(ということは1785年生まれ),タラント家特有の琥珀色の瞳に濃い赤褐色の髪,そして黄褐色の肌が見事な取り合わせを示す社交界の花形だが,7歳の時母であるタラント夫人が愛人クライブ・マシンガムと一緒に家を出て行ってしまい,両親から「愛を信じるな。結婚は愛のためにするものではない。」と異口同音に言われたことから次々に愛人を作り良家の女性からは警戒される行動を取っている。ジョスリン(愛称ジョス)の妹ジュリアナ(愛称ジュー)はシリーズ第3巻「不道徳な淑女」のヒロインであるが,この巻では悪役に徹しており,身持ちの悪く,女性ギャンブラーとしてヒロインに意地悪をする敵役として描かれている。
ヒロイン=エイミー・ベインブリッジはギャンブラーである父ジョージが賭けに勝ったり負けたりする度にロンドンと田舎の領地を行ったりきたりで転校を繰り返さざるを得ず,校長から「とても聡明で将来有望」と評されるものの,落ち着いて学ぶことができなかったが,まっすぐな心を持ち,ギャンブルを毛嫌いしている。兄リチャードは父ジョージに似てギャンブル好きであり賭博場で数人の友人たちと毎晩賭け事に明け暮れ,ジョスとも友人となっていた。
ジョスとエイミーの関係は,リチャードらがベインブリッジ家でギャンブルをしたところから始まる。数日後一枚の宝くじをエイミーが発見し,そのくじを兄のものと勘違いして抽選会場に出かけたところ,3万ポンドの当たりくじであった。実はそのくじはジョスがリチャードの家に忘れてきたものであったのだが,最後まで秘密になっていく。
3万ポンドは現在の英国ポンドでは約1000万円以上に相当するのだから,一財産であることは間違いない。
3万ポンドを誰に返したらよいのか,迷いながらも,エイミーは寄付に当てたり,今は貧しくなっている乳母や近所の人たちを助けるために使おうとする。それを認めながら,ジョスはエイミーとの結婚を本気で考えるようになっていく。
ギャンブル場で大勝負に巻き込まれていくエイミーの様子や,再会した親友アマンダ・スプライとの関係,母や兄との関係,そしてジョスの真の姿を知ってタラント家に乗り込むエイミーの一本気なところなど,読み応えが多く,一気に読み切ってしまう佳作。
さて,ジョスリン侯爵へのご褒美とは・・・。
217 ジュリエット・ランドン
名高 くらら
暗闇に咲く花
The Widow's Bargain 2004
HS-235/05.11/\903/284p 05/11/06
1319年春のスコットランド。イングランドとの熾烈な争いが続くスコットランドで,洪水や飢饉のために物価が高騰し,略奪者が横行する頃,ギャロウェイの城にすむ寡婦エボニー・モファットと義妹メグ・モファットの美女姉妹。エボニーはメグの兄ロバートの嫁だが,ロバートはすでに亡くなり,一人息子サムがいる。
ある日,城の近くの滝で二人で水浴びをしていたとき,二人を見つめる二つの視線があったことに二人は全く気づいていない。二つの視線とは,王の兵士,アレックスとヒューだった。メグの父で,エボニーの義父,サー・ジョゼフがイングランドやスコットランドで馬を盗み,穀物を買い占めて不正な蓄財をしていることの調査に,王から派遣されたのだが,エボニーは,義父の無実を信じ,調査を邪魔しようとする。しかし,アレックスは着々と調査を進め,城内の人々やエボニーの息子サムの信頼を次々に得ていく。亡夫ロバート以外に気持ちを向けたくないエボニーだが,次第にアレックスに惹かれていく。アレックスのさわやかさに比べ,いつまでもウジウジと心配事を繰り返すエボニー。外見的には美しくても,ちょっと性格的にヒロインには向かないというか,好きになれないかな。
後半,行方不明の母を発見するが,記憶を失った母の方が優しく,知的ですばらしい女性に描かれている。エピローグでは伝説として伝えられる後日譚が語られ,ハッピーエンドに終わるが,最後に語られる「今」がいつなのか,わかりにくい終結になっている。
216
ローリー・フォスター
響 遼子
魔女は愛のセラピスト
Little Miss Innocent? 1999
HR-105/D-828/05.11/
\882/160p
05/11/04
この場合の魔女は,魔女のように男を惑わすという軽い意味で使われている。ラジオ局でセックスセラピー放送を担当しているレース・マギーは,ダニエル・ソーヤーズ医師の妹アニーと親友で,弟のマックスやダニエルの親友ガイとも親しくしているが孤独な女の子。ダニエルには妹アニーをたぶらかし,堕落させているのではと疑われている。ある日,アパートの隣人の犬に噛まれて血を流しながら駆けつけた病院で治療を受けたのはたまたま偶然,ダニエル医師だった。しかも,レースが犬に噛まれて負傷した部位は,なんと,オシリ。
ダニエルは,セクシーを売り物にしているレースに密かな思いをもってはいたものの,いつも生意気に口答えをする妹の親友に何とかぎゃふんと言わせようとしていたのだろう,ケガをしたレースの治療を買って出ただけでなく,たまたま翌日が休みだということを口実に,レースの家までついて行き,介護を買って出る。そこから先は思わせぶりな二人のやりとりが続くが,時はまさにクリスマス・イブの前夜。
全編を通じてクリスマス色が強い。プレゼントを巡る大騒ぎ,リースと宿り木の下のキスなどクリスマスに関わるヨーロッパの伝統がこれでもかというぐらい登場する。いわゆるドクターものとセラピーもの,クリスマス譚,小さな魔女ものといろんな要素が入り交じって,しかもセクシーにまとめられた愛らしい小品。癒し系の佳作。
215 ダイアナ・パーマー
杉本 ユミ
涙の湖
Storm Over the Lake 1979
D-1106/05.11/\641/156p 05/11/03
ダイアナ・パーマーの初期作。ダイアナがデビューした1979年作。あちらでは2002年に再発行されている。もともと新聞記者だったダイアナらしく,会話の中に新聞社の様子を表すネタがふんだんに現れている。
ヒロイン=ダナ・メレディスは新聞記者(いわゆる社会部)だが3年前特ダネをものにするためにある企業社長の個人秘書として潜入し,暴露記事を書いた。しかし,その記事の誤植が元で社は倒産し,社長であったエイドリアン・デヴェルーには大きな恨みを抱かれてしまうことになった。ダナは母の介護費用を稼ぐためにはどうしても大金が必要だったから,また,記事の誤植ミスはダナのせいではなかったものの,エイドリアンとダナの間の確執はしっかりと残った。
それから3年後の今になって,社を盛り返し,再び巨人となったエイドリアンは新聞社のオーナーに影響力を行使し,再びダナを個人秘書に雇うことを通告してきた。ダナへの復讐であることは間違いない。しかし上司に命じられれば,解雇を賭けて命令を断ることは即明日からの生活に困ることを意味する。覚悟を決めたダナは,エイドリアンの元へ。
エイドリアンの屋敷では,ダナに対して悪い印象を持っていない家政婦のリリアン,運転手のフランクが何かにつけてダナに気遣いを示してくれるものの,エイドリアンのダナに対する要求は熾烈を極める。自分の所有物であるかのように振る舞うエイドリアンの要求に対して,ダナは言い回しを工夫し,決して卑屈になろうとはしない。ここまで馬鹿にしたことを言って大丈夫だろうかと思われる二人の丁々発止の言い合いは,訳する方としてはそのニュアンスを表現するのに大変だろうなと思う。杉本さんの訳は日本語としてもとても自然でよく理解できる名訳である。
ちょっとカマトトかなと思われるダナの純真さと辛辣さのギャップは,17歳年長のエイドリアンにとってはたまらない魅力でもあり,なかなか理解できずもてあましてしまっているそのすれ違いの様子は,マイフェアレディにも通じる感覚でもあり,ヒロインの魅力にもなっている。
一番の山場は湖でのパーティの様子なので,邦題を「涙の湖」としたのだろうが,そこはちょっと書き込みが少なく,山場とは言い難い気がする。斜麓駆なら「記者の純情」とでもするところだろうか。
214 ミランダ・リー
上村 悦子
噂のブロンド娘
Asking for Trouble 1991
C-627/05.10/\672/156p 05/11/01
ブリジッド・バルドーばりの見事なプロポーションとブロンドの長い髪。そんな女性なら誰でもなりたいと思う自分の容姿がかえって悩みの種。男はみんな自分の能力ではなく容姿で判断してしまう。そんなセリーナが恋した相手はアーロン・キングズリー。高校の時暴力をふるわれそうになったときに助けてくれた人。
しかしアーロンも結婚生活で妻から受けた傷から,結婚や愛情を信用できなくなっている。
こんな二人がいつ本当の愛に気づいていくのか。その心の旅路を巡る物語。
セリーナの懸命にアーロンを愛そうとする心根に感動。アーロンの兄弟や周囲の人々の暖かさにも暖かい読後感をもたらす。
213
*
ジェイン・ポーター
漆原  麗
ギリシアの騎士
The Greek's Royal Mistress
2004
( Princess Brides 2 )
* P-364
10.02/\683/156p
R-2064
05.09/\672/164p
(MB_Modern)
 (田中  琳
05/10/30
ジェイン・ポーターの「異国で見つけた恋」シリーズ第2弾。
デュカス王家の長女シャンタルはなんとも不思議な性格の王女である。美しい容姿と恵まれた王女という立場から常にマスコミに追いかけられる注目の的でありながら,自分の王国の経済的な危機を救うため意に沿わぬ結婚をし,あげくにその夫にDVを受けながらも一人娘リリーを人質同然にされ,しかも本巻冒頭ではストーカーに命をねらわれるというのだ。彼女のなにが,それほどまでに人を惹きつけ,しかも犠牲にしようとするのだろうか。
そのヒロインを命がけで守ろうとするヒーローは,かつてギリシア・マフィアの一員とマスコミにかき立てられ,自分の妻と娘をマフィア間の抗争で失ったとされるデメトリアス・マンセアキス。そういえば,このシリーズでは変に名前を縮めたりすることが無くわかりやすい。一部第1弾のヒロインニコレットをニックと省略することがあるが,その他はない。したがって,デメトリアスはデメトリアスであり,シャンタルはシャンタルである。デム,とか,シャンとか言われてしまうと次第に何が何だかわからなくなってしまう。もっとも,王族の名前はふつう,簡単には略称で呼ぶことがないからだろうか。
さて,二人の関係は,航空機の墜落事故で大西洋上の島に墜落したところから始まり,一気に盛り上がってしまう。この展開も以外だが,数週間で王女が妊娠に気づいてしまうことも以外,ストーカーの正体がすんなりわかってしまうことも以外,と意外な方向に物語が展開してしまい,自分自身の言い分をこれまで全く行ってこなかったシャンタルが元夫の両親にぶつけることによりすんなりハッピーエンドになることも以外。
も,ちょっとみんな粘れよといいたくなるようなあっさり展開で終わってしまう。
212
*
ジェイン・ポーター
漆原  麗
スルタンの花嫁
The Sultan's Bought Bride
2004
( Princess Brides 1 )
* P-362
10.01/\683/156p
R-2059
05.08/\672/164p
(MB_Modern)
 (田中  琳
05/10/29
ジェイン・ポーターの「異国で見つけた恋」シリーズ第1弾。
第3弾「プリンセスの歌声」で第3王女ジョエルがめでたくデュカス王国を復活させた物語を読んでしまっているので,そこにいたるまでの,シャンタル,ニコレットの物語を追ってみたい。
3王女とも経済的に行き詰まったデュカス王国を守るため,自分の幸せよりも王女としてのつとめを優先させようとするが,結局自分のおもいどおりの相手と添い遂げることになるよう国王レミ・デュカスに仕組まれているという筋書きが見えてしまったが,どんな経過でそうなっていくのかにはやはり興味がそそられ,読む順序にはほとんど影響されないところがロマンス小説の良さかもしれない。
嫁ぎ先の夫にDVを受け,傷ついている姉シャンタルを救おうと,一大決心をして砂漠の大国バラカへ単身乗り込むニコレット。待つのは国王マリク・ローマン・ヌリ。そこにはマリクに思いを寄せる従妹のレディ・ファティマの意地悪が待っていた。筋肉質で男らしいマリクと会ったとき,ニコレットは肉体的にもマリクに惹かれてしまう。しかし,ニコレットの計画では,結婚式を挙げる名目で母の待つアメリカへ行き,そこにシャンタルと娘リリーを呼び寄せることで嫁ぎ先から取り戻し,マリクとの結婚も無いことにするという身勝手な計画だった。
実は,この計画はデュカス国王にもマリク国王にも見透かされていたとは知らず,自分の計画が何とかなると高をくくっていたものの,マリクに会ったとたん,やっかいなことに陥るのではないかという予感がニコレットにはあったのではないかと想像できる。自分の金髪を姉と同じ褐色に染め直してまで乗り込んだバラカだったが,後に弟カーレンに「兄は金髪には目がない」と暴露されるまで,「金髪は嫌いだ」というマリクの言葉を信じて傷ついていたことなど,すべてニコレットのすることはすでにマリクの掌の中で踊らされていたと知ったときのニコレットの悔しさは想像に難くないが,それでもマリクに惹かれる自分の気持ちに思い至ったとき,二人の気持ちはぴったりと寄り添うことになったのだろう。
211 ペギー・モアランド
藤峰 みちか
プレイボーイとの約束
The Last Good Man In Texas 2004
D-1103/05.10/\641/164p 05/10/27
ペギー・モアランド著”タナー家の遺産”シリーズ第4作。末息子ローリはチェーン店を経営する青年実業家。新規開店を目指す準備中に一人の美女がタナー家の名前を見て声をかけてきた。メイシー・ケラーと名乗り,7万ドルのお金をバック・タナーに返したいという。母ダーラ・ジーンから父親がバックだと教えられてきたが,母は死の直前それは嘘だったと告白する。
メイシーは腕のいい造園技師。オーバーオールを着て飾らない性格の彼女は名うてのプレイボーイ,ローリに対して恋心を抱いていることに気づき,開店準備中の店の庭園や建設中のローリの新居の庭園の設計を準備する間に,ローリと深い関係を持っていく。
さっぱりして,いかにも職人気質のメイシーの性格はこれまでローリが付き合ってきた女性とは一風変わっており,そんなメイシーにローリも次第に惹かれていく。
二人の関係はメイシーの本当の父親探しをしていくうちに,タナー家の面々を巻き込み,物語が進行していく。
メイシーの頑固ではあるもののさっぱりした性格に,愛らしさを感じる不思議なヒロインである。
210 ペギー・モアランド
氏家 真智子
ドクターの束縛
Tanner's Millions 2004
SB-008/05.10/\940/350p 05/10/26
ペギー・モアランド著”タナー家の遺産”シリーズ第3作。「夜間ウェイトレスの仕事をしながら大学に通っているケイラに,3万ドルの小切手を置いていった客がいた。その正体は有名な外科医,ドクター・ライ・タナー。だが、彼の厚意は彼女をとんでもないゴシップに巻き込む。」こんな惹起が書かれているが,タナー家の次男ライランド(通称ライ)には謎が多い。形成外科医(美容整形らしい)ライがなぜ医者をやめてしまったのか。美貌の妻とはどうして別れることになったのか。後者の謎は元妻がライを愛していたのではなく,ライのお金と将来を愛していたことに気づいただけでなく,医者をやめたことで,妻の方から離婚を言い出したことが明かされており,ま,よくあるパターン。それでは,なぜ,医者をやめてしまったのか。これは,なかなか微妙な問題を含んでいるようだ。父親から愛されず,家を飛び出したライが苦労の末,医者の資格を取り,形成外科医として成功するまで,自分の兄弟・家族を捨ててしまったことに対して,後ろめたさを感じ続けていたこと。さらには,医者として成功するまで,自分の時間を限界まで使い,すっかり燃え尽きてしまったこと。いわゆる燃え尽き症候群によりすっかり自分の職業や人生に自信をもてなくなり,自暴自棄になっていたこと。これらが原因らしい。そのことに自分自身が向き合うことができるようになったのは,ライがヒロイン=ケイラを愛し始めているのに,気づいたあたりからだろうか。350ページというハーレクインにしては長編の別冊にせざるを得なかったのには,作者ペギー・モアランドが,ライとケイラが互いの愛に気づき,それを糧として医者と看護師という互いの職業観に目覚めていくという二重のテーマを書き込むにはこれだけの長さがどうしても必要だったということではなかろうか。
長編の割には全然苦にならずに一気に読んでしまえる魅力を持っているのも,これらのテーマが大人の感性を刺激するからではなかろうかと考えられる。
209 ペギー・モアランド
谷原 めぐみ
不機嫌な狼
Baby , You're Mine 2003
D-1099/05.09/\641/164p 05/10/23
ペギー・モアランド著”タナー家の遺産”シリーズ第2作。第1作に引き続き,3男「気難し屋」ウッドロウがローラの身内であるローラの伯母エリザベス・モンゴメリーに会いに行くシーンから始まる。自分の力で牧場を買い取り経営する牧場主で,大男で無骨,かつ寡黙と思われているウッドロウだが,実は愛するものを全力で守るためには,どんなにでも優しくなれる男。そして他の人から見捨てられたものに対しては限りなく面倒を見るタイプ。
ヒロイン=エリザベスは一家離散してローラの母親である妹とも数年間連絡が取れておらず,姪であるローラの存在も知らなかった。妹の最後の様子を知りたいと思い,タナー家の牧場を訪れたエリザベスは,マギーの敵意を感じ取る。親からの愛情を感じ取れず,孤独を好む二人は互いに似たものであることを何となく感じていたようだ。そのことを弟のローリに指摘されたウッドロウは,エリザベスに優しい気持ちを抱くものの,自分の兄であるエイス夫妻のローラを我が子として育てようとする気持ちを知っているがために,その狭間で揺れ動いていた。
第1作に引き続き,このあたりの微妙な気持ちの変化を作者は巧みに描き分けている。ロマンス小説と言うよりはどちらかというとアメリカらしからぬ私小説的な雰囲気を持つ佳作である。
第3作は孤独な形成外科医ライの物語。
208
*
ジェイン・ポーター
漆原  麗
プリンセスの歌声
The Italian's Virgin Princess
2004
( Princess Brides 3 )
* P-366
10.03/\683/156p
R-2072
05.10/\672/156p
(MB_Modern)
 (田中  琳
05/10/22
ジェイン・ポーターの「異国で見つけた恋」シリーズ第3弾。第1弾「スルタンの花嫁」,第2弾「ギリシアの騎士」は未読。
地中海の小国デュカス王国の3姉妹,シャンタル,ニコレット,ジョエルの末娘ジョエルはすばらしい音楽の才能と容姿をもち,祖父で王のレミの懇願で他国の王子と結婚して王国を嗣ぐことになっている。しかし結婚前に自分のやりたいことをしたいという気持ちから1年間の休暇をもらって,ニューオーリンズで歌手として過ごしている。まもなく国に帰って,結婚の準備をしなければならないという日の前日。最後のステージを降りたところで,客席に来た長身でたくましくセクシーな男性と一夜を共にすることになってしまう。ヴァージン喪失は結婚で王国に自分を捧げる前の最後の抵抗という気持ちだったのだろう。
そして,国に戻り祖父である王の横に立つ男性を目にしたとたん,ジョエルはそのことを後悔することになる。その男性こそ,ニューオーリンズで自分を捧げた男だったから。
ジョエルは3姉妹の末娘で母の面影はあまり記憶になく,祖母だけが自分の理解者だと思ってきた。また,ヒーローのレオには,生みの親のマリーナ王女から迫害を受けており,そのことは他人にはとても話し,理解してもらうことすら困難な事情を抱えていた。母親からの愛に飢えてきた二人は実は似たもの同士。しかし,ニューオーリンズでの出来事がジョエルの心をかたくなにしており,契約的な結婚が二人の肉体の相性とは別に心のすれ違いを生んでいる。心から愛を確認しあえるときは訪れるのだろうか。
表紙に描かれたジョエルの真っ赤なドレスは二人がレストランに食事に行く場面でジョエルが着ていったもの。すばらしいプロポーションのジョエルが見事に表現されており,ちょっと王女らしからぬセクシーさを表しているが・・・。そんなジョエルを国王レミは「ジョエルは見事なルビーを思わせる」と評した。UK版では,シーツを捲いた小柄で栗毛色の髪の少女が描かれており,かなりイメージが異なる。
結婚をあきらめ,再びニューオーリンズに帰ったジョエル。それから一年後。母親との確執に決着をつけて,レオは再びニューオリンズのジョエルの元を訪れ,愛を告げる。そしてさらに一年後。二人は愛を確かめ合い,ゴールする。
華々しい結婚式の場面で大団円を迎えるが,なぜかちょっと悲しい気持ちが残るエピローグになっている。
207 ペギー・モアランド
渡辺 千穂子
ひと夏の奇跡
Five Brothers and a Baby 2003
D-1095/05.08/\641/164p 05/10/21
ペギー・モアランド著”タナー家の遺産”シリーズ第1作。
無責任な父親バック・タナーは4人の息子と1人の養子を遺して心臓麻痺でなくなってしまう。遺書も遺さず死んでしまった5人兄弟が今後のことについて故郷の牧場に集まっているとき,一人の美女が興奮して入り口の戸をたたき,長男のエイスが出てみると,生まれたばかりの女の赤ん坊を「この子はあなたのお父さんの子よ」と言って預けて行ってしまう。果たして自分たちに本当は何人の兄弟がいるのか,また遺産をどのように分配すれば公平な配分ができるのかと集まった兄弟に新たな問題が持ち上がったことになる。
赤ん坊を預けていったときの言葉を頼りにエイスがマギー・ディーンを訪ねていき,赤ん坊の世話をしてくれるフルタイムのナニーになってくれないかと頼む。赤ん坊ローラはマギーの親友スター・キャントレルの子供であり,またエイスの父親バックの子供であることを親友スターは死の間際に言い残していったのだった。
健康なタナー家の長男であり,牧場にマギーと赤ん坊ローラと三人で住むことになったエイスは,ケガをした自分を真剣に治療してくれるマギーに,雇い主と雇い人の関係から次第に恋心を抱くようになる。マギーもエイスの無骨だが率直で心の底では優しさをもつエイスを愛するようになる。
斯くして一つ一つの問題をクリアーして二人は結婚することになるが,そんな折,ローラの母親の身内がいることが私立探偵から知らされるが,二人はマギーの元の雇い主のレストラン&バー「ロングホーン」のオーナー,ディキシー・リーの助けもあってローラを引き取って養子にすることに。
第2作ではこのローラの身内であるローラの伯母エリザベス・モンゴメリーと,「気難し屋」ウッドロウの物語。男性ばかり5人兄弟がつぎつぎと女性の愛を勝ち取っていくこのシリーズ,ペギー・モアランドの巧みな性格描写と西部の小さな町の自然描写と相まって楽しみな物語だ。
206 バーバラ・マコーリィ
秋元 美由紀
シンデレラの逃避行
Miss Pruitt's Private Life 2004
D-1102/05.10/\641/156p 05/10/18
シルエット・ディザイア10月のおすすめ。バーバラ・マコーリィの”秘められた思い(Secrets!)”の新作。D-1050「悲しき令嬢」の関連作で,ヒロインのクレア・ビーチャムの結婚式が全編を通じて舞台となっている。
とにかくヒロインのマーシー・プリュイットの愛らしさが際だち,女性の憧れを体現した一作。ヒーローのエヴァン・カーヴァーも建設業に生き甲斐を感じ,結婚して身を落ち着けることなど考えてもいなかった男臭いが,兄ジェイコブと兄嫁クレアの結婚式場をマーシーと共に作り上げていくうちに,結局はマーシーの魅力に気づき,最後はロスのマーシーのテレビ生出演中にプロポーズするというシンデレラストーリー。最近,シンデレラの本当の姿という映画を見たが,ガラスの靴ばかりがクローズアップされるシンデレラ物語も,王子が靴の持ち主を初めから知っていたらという設定で考えてみると,子供に聞かせるにはちょっと難しい,王子様の心の中の変化を物語った大人の物語になるということだと思う。
イギリス版の表紙はディザイアだけに,ちょっとヒロインのかわいらしさが表現されておらず,邦版の方がテレビドラマ的な感じでふさわしく思える。比較してみていただきたい。
そして,終末付近で登場する私立探偵シェルビー。ほとんど顔を出すだけだが,正義の味方として,とてもカッコいい。このシェルビーをヒロインにした1作も是非お願いしたいところだ。
205 マーゴ・マグワイア
吉田 和代
薔薇と狼
The Bride of Windermere 1999
HS-168/03.09/\903/284p 05/10/13
マーゴ・マグワイアのデビュー作。先に関連作品「闇に眠る騎士」を先に呼んでしまっているので,どうしてもヒュー・ドライデンがどのように痛めつけられたのかその件を読みたいと思い,手にした。
ヒロイン,キャサリン(愛称キット)には驚かされる。現国王の妹にして,義理の父の城の女主人としてこき使われ,誰にも美しいとも,大切だとも思われていないところは,「闇に眠る騎士」のヒロイン,シャーンとよく似ている。気の強いところ,愛するもののためには自分の命さえも投げ出す健気な性格は,とても好もしいものの,すぐ気を失うという特技?をもっている点など,愛らしさの残るお姫様。
歴戦の傷をもってはいるものの,ハンサムなヒーロー,ウルフレム・ゲアハート・コールストン(通称ウルフ)は,ドイツに祖父がいるという出自をもちながら,のちにヒュー・ドライデンをしっかり痛めつけていたいとこのフィリップからウィンダミア城を取り戻そうとする。
このあたりのやりとりは,「闇に眠る騎士」でも同じパターンだが,ウルフが国王から公爵(王族と同じ身分)に任じられる経緯はよくわからなかった。
ヘンリー王(5世)は,王の妹を嫁がせる相手としてウルフを伯爵ではなく公爵に任じざるを得なかったのだろうか。
終末でフィリップにおびき出されたところを自ら救おうと町民たちに働きかけ,フィリップの隠れ家へ忍び込むキットの勇気と,町民たちの真剣で何となくユーモラスな珍道中に乾杯!
204 マーゴ・マグワイア
すなみ 翔
闇に眠る騎士
Dryden's Bride 2000
HS-232/09.10/\903/284p 05/10/09
マーゴ・マグワイアのデビュー作「薔薇と狼」(HS-168)の関連作。
舞台はイングランド北部,スコットランド人の侵入に悩むクレモント城。時代は1423年秋。百年戦争の真っ只中。
原題ともなっているヒュー・ドライデンはオールデイル伯爵。しかし自らの所領を執事に任せ,フランスを歴戦したのちイングランドに戻っている。
ヒロイン,シャーン・チューダーはウェールズ人で兄オーウェン・チューダーとともにクレモント城に留まっていたのは,修道院に入るためだった。何気なく散歩に出た彼女は森で猪に襲われる。そして木の枝にぶら下がるしかなかった彼女を助けたのは,片目を眼帯で覆い,額にも傷跡がある騎士,ヒュー・ドライデン=オールデイル伯爵だった。
ヒロイン=シャーンはとにかく貞淑で所領の女主人として圧倒的な美しさを誇るマルガリート・ブラッドレイとは正反対の性格と行動を示す。しかし,独特の美しさと,子供たちにすぐに打ち解け慕われるという天性の無邪気さをもっている。この時代の貴族の娘としては破天荒な性格と行動力,男勝りの気の強さをもっており,いつも兄にレディ・マルガリートと比較され,しかられてしまうものの,ヒュー卿はこのシャーンの優れた資質にいち早く気づく。
当時クレモント城に留まっていた王妃キャサリンとヘンリー国王(まだ子供)は,シャーンにも親しみを感じるが,権力を得るために突然クレモント城にやってきた,大司教ヘンリー・ボーフォートとレクストン伯爵エドマンド・サンドボーンから国王を守るため,王妃はヘンリーをウィンダミアに連れて逃げてほしいとヒューとシャーンに頼み込む。
実はレクストン伯はシャーンにとっては父の仇敵。伯を殺めようとしたところをヒューに止められる。
無事にヘンリーを連れてクレモント城を脱出したヒューとシャーンだったが,ここからが冒険譚。次々と二人を襲う敵の魔手と偶然がハラハラどきどきを起こさせる。途中,二人の間に燃え上がるロマンスも,シャーンの性格にぴったりで,うなずける。
そして仇敵レクストン伯とヒューの一騎打ち。決着は意外なところでつくが,伯爵を殺めるにはこれほどの理由はなかろうという上手い決着だ。
大団円では,王妃からシャーンにあてられた手紙でその後の関係者の行方が示されており,とてもしゃれた集結となっている。さすがマーゴと言わせる佳作。
それにしても,シャーンの当時の女性としては信じがたい破天荒の性格と行動力に脱帽。愛すべきヒロイン。
203 ジャクリーン・ダイアモンド
南 さゆり
恋人はプリンセス
The Improperly Pregnant Princess 2002
N-1076/05.09/\704/220p 05/10/06
ミニシリーズ「ロマンスは海を越えて」第1弾。
コロソル国の王族で今は海運業重役の母と娘三人がニューヨークで暮らしている。本家のコロソル国王イーストン・キャラディンは老齢になり,自分の跡継ぎと目していた者が次々に亡くなり,しかも自分が王位につくために自分の父親を亡き者にしようとしたという噂を聞くにつれ,真剣に,しかも至急跡継ぎ問題を解決しようとする。男子の王位継承候補者がなければ女王でもよいと考えたことから,これまで真剣には考えてこなかった,ニューヨークに住む三人の孫娘に会いに行く。第1弾の本巻では三人娘の長女セシリア(シシー)・キャラディンの物語。
長女らしく気が強くしっかり者のシシー。抜群のスタイルとブロンドの髪,愛らしい顔のシシーが表紙写真では文中にあるのと同じハイネックでレースがふんだんに使われたクリーム色のウェディングドレスを着て,頭にはヴェールではなくティアラをしている。俯瞰的に撮られた写真の右手には,ヒーローのシェーン・オコネルがひざまずいてシシーの右手に口づけしようとして,ふと見上げている構図の見事な写真が写されている。
シシーは海運業社の副社長として,父から事業を引き継いだ母を助け,公認会計士としての資格を生かし,数年間で会社を立派に建て直してきたビジネス・ウーマン。王族であるという出自を特に意識することもなくアメリカ人としての生活をエンジョイしているが,祖父であるヨーロッパの小国コロソル王から跡継ぎにと言われ,自分も王位を継ぐことを真剣に考えるようになる。しかし,そのためにはクリアしなければならない大きな問題があった。それは・・・。
ヒロインに課すハードルが高ければロマンス小説の醍醐味もそれだけ増すものだが,シシーに課せられたハードルとは,祖父からの話を受けたとき,実はすでに結婚前に妊娠していたことだった。相手は,もちろん他の海運業者を経営するシェーン。
 直訳すると「不適当な妊娠をしている王女」という題名だが,"pregnant"には創意に満ちたという意味もあるようだから,まさにシシーがこの課題にどのように挑戦していくのかを興味深く読み進めることができる。
 さて,王位を継ぐということで,契約的な結婚をしようとした二人だが,結婚式の準備を進めるうちに二人の間に本当の愛情が芽生えてくるという,わかりやすい展開になる。そのまま,シシーが王位を継ぎ,元気な赤ちゃんを産んで幸せに暮らしましたとさ,という童話的なお話ではつまらない。そこをいかにひねって,思いがけない展開に読者を引きこんでいくかが著者の腕の見せ所だろうが,シェーンはシシーをそそのかして,コロソルへ旅立つ直前にシシーをつれて,本当のハネムーンに連れて行ってしまう。ところがクルーズに出たシシーを思わぬ弱点が襲ってしまう。それは,海運業者には最もあってはならない弱点,つまり船酔いしやすいということだった。
 という具合に,後半は次々に新たな展開が出てきて,読者を引きつける。まさにジェット・コースター・ロマンスに仕上がっている。まさにプロットのうまさを生かした第1巻になっている。さて,終末では,次女のアメリアを思わぬことが襲い,第2弾への関心を引きつける。
202 シャロン・サラ
葉山 笹
愛すれど君は遠く
Sara's Angel 1991
LS-256/05.09/\704/220p 05/10/03
サラ"Sala"の描いたサラ"Sara"。ということで,自分を投影しているのだろうか。あるいは,あまり作が多すぎて名前を付けるのが面倒くさくなったか。ただし,綴りが違うので,そう単純な話ではないだろう。
ヒーロー,マッケンジー・ホークが魅力的である。ネイティブアメリカンの混血である日育て親のノナ・ホークの棲む山小屋の玄関先に捨てられていて出自のわからない,精悍で肉体的な魅力に溢れているが,弱い者に限りなく優しく,邪悪な者には徹底してその強さを発揮する元CIA特殊グループの一員。身体的能力は誰にも引けをとらないが,心は傷つきやすく,容易に人に自分のことは話さない,そんな孤高のヒーローは,まさにロマンス小説の神髄を語るにふさわしい人物造形。
ヒロイン,サラ・ボードリーはホークの親友で最も信頼するロジャーとの二人きりの兄妹。しかし,ロジャーは自分の仕事上のとばっちりを受けないように他人には妹だということは隠している。しかしサラ自身は成功した売れっ子のファッションモデルであり,その世界では誰にも負けない外形と癇癪を起こしがちな気の強さをもっている。
ある日,兄からの手紙を読んだサラは,兄のみに危険が迫っていることを直感的に知り,そこに書かれていたホークの助けを求めて,山中に一人住むホークの元へハーレー・ダヴィッドソンで脱出する。人もうらやむほどのスタイルをもつファッションモデルが一人ハーレーを駆って山中を疾駆することを想像しただけで,まさにかっこいいの一言。
そして冬の山道でスリップ事故を起こしたサラを救ったのはホークだった。一目見ただけで,かつて任務上出会った女性に裏切られ,女性不信に陥っていたホークの心をメロメロにしてしまうサラ。そんなサラをホークはワイルドキャットと呼ぶ。二人きりでの山小屋での生活から,二人が互いに信頼し合い,互いを求め合っていく過程はまさにロマンス小説そのものだが,だがまてよ,ページ数からして進行が早すぎる。
敵役のレベットに襲われ,重傷を負うホークを気遣うサラ。ホークの回復も肋骨を数本折った割には数日で退院するのもアレッという感じだが,これもページ数的には終末にはちょっと早い。
最後のどんでん返しを期待するものの,シャロン・サラらしくなく,最後の大団円に向かってまっしぐらとは・・・。
最初期のサラの作品ゆえの稚拙さか。
201 ロンダ・ネルソン
駒月雅子
ためらいの夜明け
Show & Tell 2003
BZ-31/05.09/\725/219p 05/10/01
6歳で両親を交通事故で亡くし孤児になったサバンナ・リーブスは,里親制度の下であちこちの家庭を転々としながら幼年時代を過ごした。今ではシカゴ・フェニックス社の記者として鋭い記事を書いている。小柄だが豊満な体つきで漆黒の髪は起き抜けのようにいつもとんでもない方向を向いている。化粧っ気がなくてもなめらかな白い肌をもち,切れ長の淡いブルーの目は長いカールしたまつげにふち取られ,文句なくとびきりの美女。だが,恋人に裏切られ,それ以後男性とデートもせずに仕事に明け暮れている。
ノックス・ウェバーはウェーブした豊かなブラウンの髪,鮮やかな若草色の瞳,唇は男性としては驚くほどふっくらしているが,それでいてりりしく力強く,女性なら誰でもがその唇の有能ぶりを夢想するほど。形のいい,引き締まった臀部,長身でたくましくうっとりするほど長い足,富と権力のある家に生まれたならではの毛並みの良さがオーラとなって全身に漂っているような男性。もちろん女性にはモテモテで,数え切れないほどの遍歴をもっているが独身。
しかし,ノックスに出会ったときから惹かれていたサバンナは,富裕な一家のやっかい者を演じるのを楽しんでいるように見えるノックスに対し,限りなく悪口雑言と鋭い切り返しをするという態度をとり続けてきた。
そんな折,ノックスが取材しようとするのは,ドクター・エドガー・シェイとルパリ・シェイのシェイ夫妻が主催するタントラ・セックスの週末講座ワークショップ。インドで紀元前三千年に生まれたタントラの概念を生かしたというこの講座はいかにも眉唾もので,シェイ夫妻が夫婦関係で困り果てた夫婦から必死で稼いだなけなしの金を搾り取っている商魂たくましいいかさまであることを証明しようとして,ワークショップへの潜入取材をしようとする。そしてノックスが取材のパートナーとして選んだのは,どんなときでも彼に阿ることなく切り返ししてくるサバンナであれば客観的な取材ができるだろうと,上司をたきつけて,サバンナを説得してしまう。
そして,潜入してからの数日間を丹念に,タントラの教義を一つずつ体験してクリアしていく二人の姿を丁寧に描いている。段階を追って,また最終目的を期限を切って禁じられることにより,二人の間にもともとあった互いを好ましいと感じている心が解放され,めくるめく時を過ごすまでの心の動きがとても自然で,最後まで自分ですら気づいていない心の奥底の秘密が体験を通すことで気づかされていく心理ロマンスとなっている。
そして,二人で協力して記事が完成したときに上司のチャップマンが二人に時間差を設けて通告した言葉が二人にとんでもない衝撃を与える。このどんでん返しが大サービスという感じになっている。そっか,こんな結末の付け方もあるのか・・・と。

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