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SHALOCKMEMO 101〜150
2004/12/13〜2005/05/14

No SHALOCKMEMO
150 2005/05/14(Sat) ★★★★
 ミシェル・ダナウェイ Michele Dunaway 「ボスとの過ち About Last Night... 2004 宮瀬早起子/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1057(2005.05.05)
 オフィス・ロマンスもの。しかし,いわゆる秘書がボスに恋をするというストーリーだけではなく,愛するということの意味を掘り下げた著者の言いたいことがはっきりしている点,読むに値する一作になっている。また,妊娠と結婚,マザコンのヒーローの成長譚,一族のドンたる家長の企て,妊娠中のヒロインの心理状態など,単にロマンスの過程と結婚がゴールというオフィス・ロマンスのストーリー展開とはひと味異なる深さをもっている。
 秘書のメリンダ(リンディ)・ブリンクスは金持ちでプレイボーイのシェーン・ジェイコブセンの個人秘書を3年間務めている。リンディ29歳,シェーン25歳。4つ年上の姉さんらしく,シェーンの仕事のみならず,恋人との別れの後始末など,個人的なことまで面倒を見ている。ボスのシェーンに恋心を抱いているリンディだが,シェーンはリンディを愛していないことを何度も明言しており,リンディの妊娠がわかり,結婚式を挙げた後も,いわゆる「打算的な結婚」から,「本当の愛」を見つけるまでのシェーンの心の葛藤が描かれる。
 それにしても,何か事件を起こすとすれば交通事故以外の設定はなかったのか?
149 2005/05/08(Sun) ★★★★★
 キャスリン・ジェンセン Kathryn Jensen(Nicole Davidson) 「古城の伯爵 The Earl's Secret 2001 秋元美由起/訳」
ハーレクイン・リクエスト HR-93(2005.05.05)
 キャスリン・ジェンセンの「伯爵」もの。一気に読めるロマンス小説の王道を行く佳作。
 ツアー・コンダクターのジェニファー。決してスタイルのいいとびきりの美女というわけではないが,素直で頑固な性格と人のためにいつも何かしていようという優しい気持ち,そんな内面の美しさをもち,家庭を顧みなかった父親に憎しみの心を持ちながらもその父を愛していた母を深く理解し,仲良く小さな旅行会社をアメリカのボルチモアで経営している。添乗員としてやってきたスコットランドで,たまたま間違って旅行客を案内してきた古城でクリストファー・スマイスと知り合う。互いに惹かれたものの,スコットランドとアメリカ,伯爵と添乗員という全く違う二人の仲はその後どのようになっていくのか。
 クリストファーには,婚外の娘リサがいるが,リサの母親は実の父親がクリストファーだということをリサには秘密にするようにクリストファーに要求しており,彼は苦しみながらもそれを我慢している。その分,リサの通う寄宿学校の理事を務め,経営や寄付活動に全力を傾注している。
 ジェニファーから見ると何もしない大金持ちであるクリストファーは,自分の父親と同じであり,そんな生き方を心の底から認めることはできない。また,クリストファーの方も愛する娘のリサと離れて暮らすことなどとてもできないということから,ジェニファーに共に暮らそうとは言いだせないでいる。
 そんな二人を周囲の人々は何くれと応援し,助言するところがなんともロマンス小説らしく,思わず笑みを浮かべながら読んでしまう。ある夜,ついに互いに惹かれあっていることを認め合う二人だが,二人の間の溝を埋めることはできず,ジェニファーがよかれと思ってしたことに起こったクリストファーはジェニファーを追い出してしまう。
 アメリカに帰ったジェニファーを,クリストファーはいつ,どのように追いかけ,説得し,ハッピーエンドを迎えるのか。ハラハラドキドキの結末,そして,エピローグで二人は結ばれるのか?
148 2005/05/07(Sat) ★★★
 アン・ヘリス Anne Herries 「シークのいざない The Sheikh 2002 小長光弘美/訳」
ヒストリカル HS-216(2005.05.05)
 原題はそのものずばり「ザ・シーク」。時代は1925年に設定されている。
 ヒロインのクロエ・ランダルのビルドゥングス・ストーリー的要素もあるが,世間知らずで学生気分の抜けない当初から,パシャと出会って,女性としての美しさを見いだして自信をもち,周囲の助けを借りながら結婚,夫に対する疑惑とお定まりの出来事が続き,疑惑の主は意外と身近にいた,という流れ。豪華客船,飛行機,自動車と1925年当時の乗り物とラクダ,砂漠という自然の組合せ,エキゾチズムがロマンス風味を添えている。
 真実が現れた時には和解が待っているのがロマンス小説。しかし,最後のひねりがちょっと救いだが,特に記憶に残ることはない。
147 2005/05/05(Thu) ★★★★
 クリスティン・リマー Christine Rimmer 「白夜のプリンセス(バイキングの花嫁たち1) The Reluctant Princess 2003 清水由貴子/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1060(2005.05.05)
 原題は「嫌々ながらのお姫様」とでもなるだろうか。王女に生まれながら,両親の不和により故国を離れ,アメリカで成長した三つ子の姉妹の三部作。第1作の本編では,これまでの経緯と三人姉妹の真ん中エリがヒロイン。
 北欧のバイキングの島国グランドリアの王女エマの母イングリッドは,夫で現在の国王オスリックのもとを離れ,リヴ,エリ,ブリットの三姉妹とともに母国アメリカに住んでいる。エマの二人の兄,カイランとヴァルブランドは二人とも事故でなくなっている。姉のリヴは野心家,妹のブリットは大胆で冒険好き,そして真ん中のエリはおっとりしており,幼稚園の先生をしている。
 ある日,エリのアパートに父王の使者と名乗るバイキングの男ハウクが現れる。誘拐同然にエリをグランドリアに連れ去ろうとするが,父王に真偽を確かめようと電話をかけたエマは,数日後にグランドリアに行くことを承諾してしまう。
 その数日間に,エマとハウクに何が起こったか,そしてグランドリアに飛びたった二人に起こったことは,最後にハウクが父王に申し出た驚愕のこととは何か。次々と現れる事件に引き込まれたまま次作へ期待を抱かせる。
146 2005/05/01 ★★★
 ジョアン・ロス JoAnn Ross 「セクシーな脅迫(魅惑のオークション1) Mackenzie's Woman 1999 伊坂奈々/訳」
ハーレクイン・テンプテーション T-511(2005.03.20)
 原題のマッケンジーはいわゆるハイランド(スコットランド高地地方)の名家。ヒーローのアレック・マッケンジーは冒険家で小説家。ヒロインのキャサリン(ケイト)・ジーン・キャンベルは同じスコットランドのキャンベル一族。ノーラ・ロバーツの作品でもマッケンジー家やキャンベル家が登場するので,ロマンス小説愛好家にはすでにおなじみ。頑固で,こよなくゴルフを愛し,冒険心にとむ一族であり,マッケンジー家とキャンベル家はいわば宿敵の仲。
 ジョアン・ロスはこのコンテキストをうまく利用し,これにアマゾン河流域の熱帯の気候をうまく活用してロマンシング・アドヴェンチャーを仕立てている。
 さらには,男性をオークションにかけるというロマンス小説界を舞台にしたサブストーリーを絡ませ,テンプテーションシリーズにふさわしい作品に仕上げている。そのためか?アドヴェンチャーとしても,テンプテーションとしてもいまいち?
145
*
2005/04/28 ★★★★
 ジェシカ・スティール Jessica Steele 「危険な恋のドライブ(生涯に一度の愛を1) The Feisty Fiancee 2000 藤村華奈美/訳」
ハーレクイン・プレゼンツ・作家シリーズ P-249 05.04/\683/156p/R-1688 01.06/\672/156p (HQ_ROM-CL)
 ヤンシー,アストラ,フェニアと父や母の異なる3人の従姉妹たちのミニシリーズの1作。ちょっとこの従姉妹たちの関係を表すのはむずかしいほど複雑。だが3人とも家族から見放されている点では共通している。
 ヤンシー・ドーキンズは義父の家で家事を手伝っていたが義父の娘にいじわるをされて自立しようとする。仲のよいアストラ,フェニアと一緒に住み,従兄弟のグレビルの会社で運転手を探していることを聞き,アディソン・カーク社の運転手として働き始める。仲間の運転手の一人に頼まれてたものを待機中に届け,重役を迎えに向かう途中で危うく追突しようになった車は社長のトムソンが運転する車だった。翌日社長に呼ばれたヤンシーが見たのは,トムソンで,休職を言い渡されても反論のしようがなかった。
 アッシュ・ブロンドの髪で美人のヤンシー。お仕着せのパンツとブラウスの運転手姿のヤンシーはさぞや見栄えのする存在だろう。運転手仲間のおじさんたちにもすかれ,愛らしい性格。美人だが近寄りにくいわけではなく,ちょっとおっちょこちょい。そんな愛らしい性格だが,誇り高く,安易に男性と付き合うわけではない,いわゆる身持ちのよい女性。ちょっと純愛っぽい設定だが,二人が惹かれあっていく過程はすんなり読めて,互いの誤解から一転して,一気に大団円を迎えるストーリー展開はさすがとうならせるものがあるロマンス小説の王道を行く作品。 
144 2005/04/25(Mon) ★★★★
 リアンドラ・ローガン Leandra Logan 「ドクターに一目惚れ Flirting with Trouble 2004 加古あい/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1056(2005.04.05)
 新聞王の娘アマンダ・ピアーポントは婚約者が自分を利用して父に取り入ろうとしているのを偶然立ち聞きしてしまい,嫌気がさして家を飛び出した。旧友のアイビーの住む町,フェアレーンを訪れ,アイビーの元へ向かう途中,見かけた上半身裸で作業中の男性ブレットに見とれて自転車が転倒し,足首をくじいてしまう。
 ブレットの住む下宿屋に間借りすることになり,ブレットの勤める病院の受付をする中で,二人は惹かれあっていく。
 本作ではヒロインが二人登場する。アマンダと,ブレットの娘,テス。おしゃまで賢く,傷つきやすいテスは将来男性を悩ませることになるだろう。
 ニューヨークの大都会の生活になれていたアマンダも,田舎の町フェアレーンの生活とフェアレーンにクラス暖かな人々との生活に次第に魅力を感じ始め,ブレットの助手として初めてお産を手伝ったことから,結婚してフェアレーンに住むことを考え始める。
 そして父のローエルがアマンダを訪ねてきたとき,ブレットへの愛の告白と,父からの自立を主張し,父の生き方・考え方に初めて異を唱える。愛と自立のビルドゥングス・ロマン。
143 2005/04/21(Thu) ★★★★
 ナンシー・ウォレン 「情熱のアリア Breathless 2002 山ノ内文枝/訳」
ハーレクイン・ブレイズ BZ-21(2005.04.20)
 投資銀行人事担当のソフィー・モートンは絶対的な方向音痴で,地図を手にしてもなかなか目的地にたどり着けないという特技?をお持ちなセクシー美女。ある日いつものように迷い込んでしまった路地で女性に銃を向けている男性に飛びつき怪我をさせてしまうが,この相手がブレイク・バーカーという警官で,おとり捜査で逮捕しようとしていたところだった。
 ソフィーの勤務先ではその後さまざまな事件が立て続けに起こり,ブレイクとソフィーの謎解きが始まる。その過程で二人が近づいていくことはお約束どおりだが,セックス好きなのにベッドを共にしない限り回数に数えないというソフィーの妙な理屈?がユニーク。
 銀行内部の描写や人事担当の仕事の内容の描写,ロマンス描写などすぐれた描写力で,映画を見ているような感覚が味わえる佳作。
142 2005/04/18(Mon) ★★★★★
 シャロン・ケンドリック 「恋は遊びでなく The Billionaire Bodyguard 2004 井上京子/訳」
ハーレクイン・ロマンス R-2033(2005.04.20)
 “愛というのはものごとを自由にしてくれる”“心の中にあるものをそのまま自由に言わせてくれる”“これは言っていいものかどうか,いちいち思い煩う必要はない”
 そういう心境になるためには,ヒロインとヒーローはかくも長い時間と二人きりの出来事が必要なものなのだ,ということを描いた作品。シャロン・ケンドリックらしく自然かつ緻密に二人の出来事と心の動きを丹念に描いている佳作。
 二人の持つ過去と豊かな財産については詳細は語られていないが,それを匂わすだけで十分ストーリーは認識できる。モデルで美人のヒロインがヒーローから断定的に言われて反発しながらも,少し太ることでさらに美しくなることに気付かせられる。今月のベストの一つ。
141 2005/04/17(Sun) ★★★★
 ポーラ・マーシャル スティープウッド・スキャンダル8「諍いの終止符 An Unconventional Duenna 2001 小山マヤ子/訳」
ハーレクイン・スティープウッド・スキャンダル HSS-8(2005.04.20)
 ヒストリカル。スティープウッド村の謎とロマンスに満ちたシリーズの第8巻。
 テニソン家のエマは内気でおとなしく男性に自ら話しかけたりはできない性格だが身分と財産をもった娘。ロンドン社交界デビューの年齢になり,お目付役として母親が選んだのは,アシーニ・フィルマーだった。アシーニとはギリシャ神話の女神アテナのこと。智恵と神であると同時にゼウスの妻であり,やきもち焼きとしても知られる。ロンドン社交界で出会ったのはスコットランドの半分の領土をもっているとされるエイドリアン・ドラモンド(キンロッホ伯爵)といとこのニコラス・キャメロン。この4人の若者の間でどたばた喜劇が始まる。シェイクスピアの劇にも相当する人間喜劇。脇役としてエマの父で読書家のミスター・テニソン,俗物のその妻ミセス・テニソン,アシーニの幼なじみの高級婦人服経営者マダム・フェリス,やもめの老人イングルシャム公爵などが,4人の若者の恋の行方に絡んでくる。
 美人で頭がよいが財産と身分のないアシーニとエマが男性をめぐって次第に変化していく様子が見事に描かれている。そして,シティープウッド村の秘密が一つ,二つと明かされていく,シリーズものとしての愉しみも巧に描かれている。
140 2005/04/15(Fri) ★★★★
 ステラ・バグウェル 富豪一族の伝説8「拒まれた情熱 The Heirress and the Sheriff 1999 浜口祐実/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1055(2005.04.05)
 追突事故で一次的に記憶を無くした女性。いわゆる記憶喪失もの。富豪一族の伝説も第8巻を迎える。今回のヒロインはフォーチュン家の当主ライアンの妹の娘ガブリエル。ロサンゼルスとテキサスという,われわれから見るとどちらもアメリカの西側じゃないかと思えるところだが,本書で丹念に気候風土を読んでいくと,空気の乾燥の度合いからしてかなり違うらしい。これは,行ってみないと実感できないところだろう。
 さて,ヒーローはフォーチュン家のマシューの息子の誘拐事件を捜査している保安官ワイアット・グレイホーク。チェロキー族の血を引き,母親から見捨てられ,父親からも愛されず,二人の女性からも愛を勝ち取ることのできなかった孤独のヒーローがヒロインとの愛に目覚めていくというロマンス小説の王道がかっちりと描き切れている。著者のバグウェルは初めて読むが,ヒーローの性格をしつこいくらいに繰り返し,さらにヒロインの潔癖な行動も何度も繰り返しながら読者に嫌気を感じさせず,すっきりしたストーリーを描ききるシルエット・ロマンス作家。
 終末に近いところで,誘拐事件の謎も新たな展開を見せたり,フォーチュン家の行方不明の家族の消息がいくつも顔を見せたりと,サービス満点の快作!
139 2005/04/10(Sun) ★★★★★
 マーゴ・マグワイア「マリアの決断 His Lady Fair 2002 すなみ翔/訳」
ハーレクインヒストリカル HS-214(2005.04.05)
 冒頭はシンデレラストーリーだが,それだけに終わってはいない。さすがマーゴ・マグワイア。史実をうまく生かし,しかもミステリ,スパイものの要素を取り入れ,ヒーローとヒロインのロマンスと親子の愛もたっぷりと描ききり,ファッションの要素も・・・と贅沢な作品に仕上がっている。
 冒頭ヒロイン,マリアがリアと呼ばれているが,リアという名前の響きはとても美しいので,その後もリアで通せればもっとよかったと思う。ヒーロー,ニコラスも乳母にはニッキーと呼ばれていた,二人の間だけでは,リアとニッキーの方がロマンス色が高まると思われるのだが・・・。
 前訳「精霊の花嫁」では,訳文の堅さから★★と厳しい評価をしたが,マーゴ・マグワイアの実力は言うまでもなく折り紙付き。本訳ではその実力が遺憾なく発揮されている。
138 2005/04/06(Wed) ★★★★★
 リアン・バンクス「プリンセスの挑戦(デュモン家の恋人4) Princess in His Bed 2003 三浦万里/訳」
シルエット・ディザイア D-1077(2005.04.05)
 デュモン家の恋人シリーズ第4弾。マルソー王国の末娘王女ミシュリーナをヒロインとしたストーリー。アメリカで生きているとされる兄を捜し,家族の役に立とうと密かに王国を離れ,アメリカに渡ったミシュリーナは,ハンドル操作を誤り農場の牛小屋に追突してしまう。そこで出会った牧場主ジャレッドに請われるままに,ジャレッドの姪の面倒を見るために,農場にとどまることにする。王女である身分を隠しながらジャレッドにひかれていくミシューリナ。そして,マルソー王国の護衛に発見されたとき,ジャレッドがとった行動は?そして兄の行くへは発見できるのか。
 プリンセスとカウボーイという組み合わせはロマンス小説には頻繁に出てくるパターンだが,貴族のいないアメリカの作家が,さわやかなプリンセスを描いている好著。
137 2005/04/03(Sun) ★★★
 ジェニファー・ドルー「今夜だけシンデレラ The Prince and The Bogus Bride 1998 桜 香緒里/訳」
ハーレクイン・ロマンス LVB-01(2005.03.20)
 皇太子と雑誌記者の組み合わせという,矛盾する設定が生きている1作。リー・ドノバンは誇り高く,自立した雑誌記者。シュワンシュタイン公国皇太子マックス(マクシミリアン・オーガスタス・フレデリック)の記事を書きたいと思ってはいたが,お忍びで来米している皇太子を捜すことから始めなければならなかった。たまたま立ち寄ったガソリンスタンドで雨にびしょぬれになりながらガソリンを入れているときに見かけたタブロイド紙を熱心に見つめている男性,それが実は皇太子マックスだったとは・・・。ロマンス小説では二人の出会いの設定をいろいろ工夫してるが,これはこれで面白い。そして二人が愛を感じ始めるのがいつになるか。また,二人の心のすれ違いをどう克服していくか,が読みどころとなる。雑誌記事を書くことを目的として皇太子に近づいたヒロインが,皇太子の人柄に惹かれ,皇太子の愛を求めていく過程と,他の女性を敬遠するためにヒロインを利用しようとした皇太子が,ヒロインに引かれていく過程とが,交錯していくところが面白い。記者に追いかけられる生活が如何に大変か。執事やボディガードに囲まれてたプライバシーのない生活が如何に大変かをヒロインは次第に気付いていく。
 表紙のヒロイン,ヒーローの写真がSHALOCKMEMO136の「いたずらな宿命」の表紙写真と同じ人物。136ではブルネットの女性が,137では栗毛色になっているだけ。スタイルのとてもよいすてきなモデルであることは確か。
136 2005/04/03(Sun) ★★★★
 シャロン・ケンドリック「いたずらな宿命 The Desert Prince's Mistress 2004 上村悦子/訳」
ハーレクイン・ロマンス R-2027(2005.03.20)
 ある日一通の手紙が国王の異母弟の存在を語っていた。さて,この手紙をどうしよう。こんな状況におかれたら自分は一体どうするだろう。こんなミステリアスな設定で始まる本書。そして,結末はどんなロマンスに発展するのだろうか。
 モデルや女優をしているララ・ブラックはマラバン王国の首長カリムと結婚した親友ローズの世話で,ロンドンのマラバン大使館で受付をしていた。そこで開いた一通の手紙はダリアン・ワイルドマンという携帯電話会社の経営者がカリムの父の隠し子であることを告げる内容だった。
 自らこの手紙の内容を確認しようとしたララは,ダリアンの主催するオーディションに参加し,ダリアンの心を射止めてしまう。「ララはくだらないコマーシャルで役をもらったり売れない芝居や映画で端役を演じたりすることに興味がなくなり,落ちるのを覚悟でオーディションを受けることにもうんざりした。ずいぶん頑張ってきたので,そろそろ何かを取り戻す時期だという気がした。」とエピローグで述べられるとおりにストーリーは展開する。
 「いたずらな宿命」とは,本書で何回も語られる皮肉な運命のこと。カリムがよく口にする「宿命」というコトバが元になっている。今後,ダリアンとマラバン国はどのように関わっていくのだろうか。手紙のことを言わずにダリアンに近づいたララをダリアンは許していくことができるのだろうか。そして,二人のロマンスは見事に成立するのだろうか。興味を持続しながら最後までストーリーは展開する。
135 2005/04/01(Fri) ★★★★★
 ヘザー・グレアム「ふたつの顔を愛したら A Perilous Eden 1999 津田藤子/訳」
シルエット・ラブストリーム LS-332(2005.03.20)
 ヘザー・グレアムのサスペンス・アドベンチャー・ロマン
ロシア系アメリカ人,イスラエル,オーストリアとくればスパイと相場が決まっている。そんな舞台を設定し,さらに後半はクルーザーとカリブ海の孤島というアドベンチャーロマンに絶好の要素満載の欲張りな設定。
しかも,プロローグの場面が,ストーリーの半ばに繰り返され,前半はプロローグの場面までを日付を追ってたどっていき,後半はその後を追い,エピローグでは1年後を述べるなど豪華な作品構成になっている。さすがと唸らせる1作。
ヒロインのアンバー・ラークスパーは大統領の側近を務める父テッドと父一人娘一人で溺愛されているが,芯のしっかりしたアメリカ娘。ヒーローのマイケル・アダムズは別名とふたつの顔をもつ謎めいた諜報部員で,二人は会ったとたんに惹かれあうというロマンス小説の王道を踏まえている。ヒーローがとても魅力にあふれているので,シリーズ化して欲しいほど。一気読みできる快作。
 表紙はタキシード姿のヒーローと真っ赤なカクテルドレスを着たヒロインが,南国の植物とビルの壁の前で何かを見て不安に駆られているかのような視線を投げて,胸と肩に手をやっているダブル・オー・セブンの一場面のような映像で,本書の雰囲気をよく伝えている。
134 2005/03/27(Sun) ★★★
 シェリル・ウッズ「裏切りと情熱の間で(愛のノスタルジア1) Do You Take This Rebel? 2001 村上あずさ/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-976(2003.04.05)
 「愛のノスタルジア」の第1巻。ワイオミング州ワインディング・リバーという小さな町の高校の同級生5人で西部開拓時代の女傑カラミティ・ジェーンの名をとり「カラミティ・ジェーンズ」という小さな集まりを中心にした仲良し5人組それぞれの愛と成長のシリーズ。第1巻の本書は,「カラミティ・ジェーンズ」の名付け親,キャシーの物語。シリーズの全員の設定が語られるため,ヒロイン=キャシー・コリンズとヒーロー=コール・デイヴィスのストーリーは単調になっている。
 キャシーとコールの間の9歳の息子ジェイクが父親の影響がないのにコンピュータ・オタクになっていたり,二人のそれぞれの親が共同して二人の仲を裂こうとしたのに,いつのまにか二人を許したり,また許せなくなったりとキャシーの人物設定がどうもはっきりしない。高校時代にあれだけいたずらをしたキャシーなのに,今は普通以上にものわかりがよくなっているのは,大人になったことを強調するためだろうが,薄っぺらなキャシーを演出してしまっている。次作以降でキャシーが5人の中でどんな役割を果たしていくのだろうか。
133 2005/03/17(Thu) ★★★★
 スーザン・スペンサー・ポール「逃げた相続人(愛と称号と財産と2) The Heiress Bride 1996 杉江ユミ/訳」
ハーレクイン・ヒストリカル文庫 HHB-11(2005.03.15)
 前作「花嫁の持参金 愛と称号と財産と1 The Bride's Portion 1995 永幡みちこ/訳」から10年後。ガイア領主アレックスの双子の弟ヒューは,イングランド王の求めに応じてフランスで戦った後,1416年にイングランドに帰国した。フランスでともに戦ったジョン・ロウゼンリーとの賭で勝ち,ブライアストーンという領地を手に入れる。領地に向かう途中酒場で出会った,シエル伯爵家の跡取り娘ロザリン・サラントを無頼漢の手から救うことになる。それが二人の運命の出会いだった。しかし,ロザリンは自分の素性を明かすわけにはいかなかった。それは,伯爵領をねらう伯父から逃れ,イングランド王に訴えに行く途中であったからだ。
 ヒューの出生の秘密が前作で明かされるのだが,いまいちわかりにくい。そのため,なぜヒューが傭兵となって家を出ることになったかというくだりがぼんやりしてしまうのだが,そこには出自や家系を命より大切にする15世紀の貴族と現代の我々の感覚の差なのかもしれない。このシリーズの題名,愛と称号と財産とにふさわしい三つの要素が十分表された傑作。身分の差,貴族の誇りなど,ヒストリカルの要素がふんだんに登場し,最後のどんでん返しで,愛の力によるエンディングを迎える。 
132 2005/03/13(Sun) ★★★★
 ポーラ・マーシャル「十年目の蜜月 The Deserted Bride 1998 辻 早苗/訳」
ハーレクイン・ヒストリカル文庫 HHB-12(2005.03.15)
 みにくいアヒルの子ストーリー。16歳の花婿と10歳の花嫁。しかも花婿は花嫁を“猿のよう”と形容し,花嫁はそれを聞いてしまったのだ。それから10年。首都と田舎に分かれて暮らしていた二人だが,花嫁は領地を管理し,猿のような女の子から黒い髪と黒い瞳をもつ美しい女主人に変身していた。
 ヒロイン,ベスは十年ぶりにやってきた夫ドルーにときめきを感じてしまう。ドルーは女王の密命を帯びてスコットランド女王のもとで密かに行われている陰謀の調査をするため,妻のベスとともに領地アセリントンから保養地バクストンに出かける。やがてドルーは矢で射られて愛馬を失ったり,妻の幼なじみである使用人が殺されるなどの不可解な事件が起こる。
 意地悪なレディ・アーベルとの虚々実々の口合戦や,何事にも前向きに取り組もうとするベスの人物造形に好感が持てる。
 陰謀の主がは誰か。二人の運命は?サスペンスフルなストーリー展開が最後まで一気に読ませる快作!
131 2005/03/10(Thu) ★★
 ケイシー・マイケルズ「不実なシーク The Sheikh's Secret Son 1999 竹内栞/訳」
シルエットスペシャルエディション N-1051(2005.03.05)
 富豪一族の伝説第7巻。フォーチュン家のイーデンはパリで交際していたベンとロマンスに落ち妊娠に気付いたときにはベンはメモを残して去ってしまっていた。ベンは実は中東カラミール国の王子であり,父のシークが倒れたとの知らせを聞き,本国に戻っていったのだ。
 六年後,イーデンと5歳を迎えたイーデンのベンの子,ソーヤのもとに,父の死後シーク(国王)となったベン(バラカ・カリフ・ラミール)が現れた。なぜ今になって?
 動揺したイーデンのその後の対応が魅力的ではない! 全編を通じてシークであるベンと息子ソーヤだけが見事に描かれ,イーデンはただおろおろしているばかり。母のメアリー・エレンや兄ホールデンの励まし,導きでなんとかベンとの関係も修復するが,自分では何一つ解決しようとしない。
 著者が描きたかったのはイーデンの迷いやこころの葛藤なのだろうか?
130 2005/03/06(sun) ★★★★
 キャレン・T・ウィッテンバーグ「レディへの階段 The Blacksheep's Arranged Marriage 2002 高木明日香/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1050(2005.03.05)
 結婚嫌いの三兄弟の最終話。ブラドック家の三男で建築家のピーターは紳士たるものの振る舞いについては潔癖なほど,まだ19世紀的な頑固さで身に付けていた。彼自身がブラドック家に引き取られてきてから祖母ジェニファーから躾けられて,大切に思ってきた事柄だから。
 名家の令嬢セオドシア(セア)・ベレンソンは祖母ダヴィニア・グレース・ケアリーと二人きりでグレース邸に住み,上流階級のパーティーでは常に壁の花となっている目立たない25歳の娘。この娘にはなにか表面的には現れない引かれるものを感じたピーターは,兄ブライスの結婚式で会ったセアに中世のような騎士道精神を発揮し,過保護なダヴィニアの振る舞いに激怒してセアと結婚しますと宣言してしまう。まだ,セアを愛しているとは気付かずに・・・。
 流行遅れの服を着せられ,まとまらない髪,黒縁の眼鏡などセアのファッションセンスは100年以上遅れている。しかし,雨の降る中,飼い猫を追って木登りをしていた木から落ちたセアを受け止めることになったピーターはセアの本当の魅力に気付く。セア自身は全く気付かずに祖母のいうなりになっていたにもかかわらず,眼鏡を外して現れた美しい目,短く切った髪,自信に満ちた姿勢をもつことで美しい財産のある令嬢に変身していく。ピーターを愛する気持ちと,自分をかばうことばかりで愛する気持ちをもたないピーターとの狭間でセアの心は揺れる。二人の本当の結婚の日は訪れるのだろうか。
 当主アーチャーの願いでブラドック家の3人の独身男性に最愛の相手を見付けさせるイルザ・フェアチャイルドの手腕と,3人の父親ジェイムズとの関係は進展するのか?ピーターの姉など,その後が気になる人々がまだまだブラドック家にはいるのだが,ひとまず3回シリーズは幕を閉じる。続編を期待したいミニシリーズ。
129 2005/03/05(Sat) ★★★★
 リアン・バンクス 「プリンスの提案 His Majesty M.D. 2002 佐藤利恵/訳」
ハーレクイン・ディザイア D-1073(2005.03.05)
 久しぶりに一気読みをした。164ページを2時間。それぐらい,ストーリー展開に引き込まれ,またヒロインに魅力を感じた。大富豪の娘でありながら劣等感をもち,男性はすべて父の財産目当てに近寄ることから男性と付き合うことを極端に避け,自分を生かす道を探し続けるヒロインのタラ・ヨーク。デュモン家のアウトサイダー王子,医師のニコラ。どちらも人生に目的をもち,まだ結婚を考えていないが,どちらの親もそろそろ結婚させたいと考えている。その二人が契約婚約に同意する。そんな時,タラの見合い相手ディッキーがデュモン家を訪れ,対抗心を持ったニコラはふたりの結婚を宣言してしまう。
 互いに魅力を感じながらもタラは修士号をとろうとしているし,ニコラは無料医療所の設置準備に余念がないが,互いの心に相手が大きな位置を占めていくのは時間の問題だった。
 ヒロインのタラは,時々平衡感覚を失い,運動音痴だと悩んできた。医師のニコラはパリの専門医にタラを見せると病気であることが分かり,タラは10代から抱えてきた劣等感を克服していく。みにくいアヒルの子現象の克服が描かれている。そして,ニコラの妹ミシュリーナの買いそろえたドレスと美容術でタラはシンデレラに変身する。結末のめでたしめでたしにおもわず笑みのこぼれる爽やかな作品。
 タラはインターネットで修士号をとろうとしている。通信課程での修士課程,しかもインターネットでの学習という設定はまだほとんど登場したことがなかった。それにしては,デュモン家には電話線しか引かれていないことからダイアルアップで大量の情報をどのようにやり取りしているのだろうと,疑問。
128 2005/02/26(Sat) ★★★★★
 カレン・アンダース Karen Anders 「無邪気な逃亡者 Hot on Her Tail 2002 結城玲子/訳」
ハーレクイン・ブレイズ BZ-17(2005.02.20)
 無実の罪で保釈中に逃亡したマキシと,やさしいバウンティ・ハンター,オースティン・タガートのロード・ムービー。表紙のマキシの写真。小顔で肩までかかるブロンド,すっきりした鼻とグレーの瞳,誘うような唇。イノセンスでなにか悪戯をしそうな小悪魔的な表情が見事に示されている。
 オースティンは簡単にマキシを発見するが,何度も逃げられてしまう。二度目,三度目とその度ごとに逃亡前の町に近づいていくストーリー展開も見事だが,二人の関係がその度近づいていくのも予想どおりで結構。変にお嬢様っぽくなくてストレートなマキシの人物造形に参ってしまう。
 ネイティブアメリカンであるオースティンの祖母,父との心の交流など魅力的な人物も描かれており,サイド・ストーリーになっている。★5つ。
127
*
2005/02/23(Wed) ★★★★
 ペニー・ジョーダン Penny Jordan 「残り香の誘惑 The Mistress Purchase 2004 上村悦子/訳」
R-2020/05.02/\672/156p/(MB_Modern)
 ヒロインは調香師サディ・ロバーツ。香水メーカー「フランシーヌ」を嗣ぐ若き相続人。表紙の写真にあるようにすらりとしたスタイル,ブロンド,美しい顔など美人の条件をすべて備えた理想的ヒロイン。自然材料から伝統的な調整方法で香水を作ろうとする。しかし現代では人工的な材料と調整方法で大量生産した香水を作らなければ香水メーカーとしては成り立っていかない時代。企業としての利をとるか,理想的な香水を追求するか,その挾間で経営者としてのヒーローレオニアディス(レオン)との愛に目覚めつつも葛藤を覚えるヒロイン。
 フランシーヌの経営者でサディの従兄弟ラウールがちらちらと見え隠れする。サディとレオンの両者に自分の都合のいいことを言い混乱させる守銭奴だが,サディはこの従兄弟を許してしまう。結局はサディとレオンの愛は成就するのだが・・・。エピローグが唐突。156頁の限界か。
 調香師という職業を扱ったことで★4つ。
126 2005/02/15(Tue) ★★★
 バーバラ・ボズウェル Barbara Boswell 「花嫁お届けします The Wilde Bunch 1995 山野紗織/訳」
ハーレクインリクエスト HR-88(2005.02.05) 「便宜結婚をテーマにした物語」所収
 いわゆる便宜結婚もの。ベア・クリークの牧場主のマック・ワイルドは,兄夫婦のの子供4人を引き取ることになってしまうが,現在独身。しかも幼児から19歳の思春期の娘まで目の離せない4人の子供を一人で育てることに困難を感じ始めていたところ,知り合いのフランクリン牧師から,義理の娘カーラなら子供の面倒を見ながら牧場の家事もしてくれるかもしれないと紹介される。空港にカーラを迎えに行ったマックは一目でカーラを気に入るが,カーラは牧師からは訪問の目的は全く聞かされていなかったため,マックの言動を誤解する。しかし,無理矢理連れて行かれたマックの牧場で無骨だがカーラを思うマックの気持ちや問題を起こしがちな4人の子供たちに愛情を感じ始め,カーラはついにマックに身を捧げてしまう。マックからは一言愛しているの言葉が聞きたいのだが・・・。
 元々世話好きで愛情豊かなカーラのキャラクターには好感が持てる。大家族主義の西部の家族愛から,映画「略奪された七人の花嫁」のようなコミカルな雰囲気が伝わってくる粋な1作。
125 2005/02/13(Sun) ★★★★
 アネット・ブロードリック Annette Broadrick 「霧の中の出会い Man in the Mist 2003 高山 恵/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1045(2005.02.05) 再会に乾杯1
 スコットランドには,霧と妖精が住んでいる。サー・アーサーを持ち出すこともなく,これはロマンス小説やミステリーを愛好する読者にとっては,常識といってもいいだろう。何人もの作家たちがこの状況をどんな設定の中で生かしてきただろうか。
 アメリカ人の私立探偵グレッグ・デュマスは依頼を受けてスコットランドに人を探しに来る。ほとんど捜査が行き詰まり,最後のきっかけとして訪ねたスコットランドの田舎で,霧に包まれ,道に迷ったあげくたどり着いた家で,流感のため倒れてしまう。しかしその家の主こそ,グレッグが訪ねようとしたフィオナ・マクドナルドの家だった。こんな偶然から始まる物語だが,25年前にファーストネームしか語らないうちに三つ子の女児を出産後に息を引き取ったモイラとその子供たちの謎をめぐって三部作が幕を開ける様子が自然に描かれていく。
 フィオナは養父母を船舶事故でなくし,医者であった養父の跡を継ごうとするが,西洋医学や薬学に疑問を持ち,結局民間療法的な癒しの治療師として,スコットランドの片田舎の村からも適度に離れた一軒家に住み,付近の住民たちの病気を治す仕事をしている小柄な独身女性。人の背後に独特なオーラを感じることができ,ハーブを利用した治療で効果を上げている。排他的ではあっても直感で人を見分け,初対面の人でもとことん面倒を見ようとする暖かい人々の住むスコットランドの独特な文化を背景に,グレッグとフィオナの間にはいつしか愛が芽ばえていく。フィオナの写真をもとに伯母ミニーの語った言葉から,フィオナの出生の秘密とグレッグの依頼人の関係が見え隠れし,謎は新たな展開を見せる。
 アメリカに帰ったグレッグは再度フィオナの元を訪れるが,以前の家にはフィオナはすでにいなかった。急展開で終結する本作だが,モイラの三つ子が三部作のヒロインとして幕を開ける。
 霧と妖精,愛と気高い人々が登場する正統派ロマンスの傑作。
124 2005/02/13(Sun) ★★★★
 シャロン・サラ 「女相続人ケイシー Ryder's Wife 1997 佐野雅子/訳」
ハーレクインリクエスト HR-88(2005.02.05) 「便宜結婚をテーマにした物語」所収
 祖父の遺言は,48時間以内に結婚し,1年間結婚生活を続けること。しかし,想定されている結婚相手は狡猾でとても耐えられるような相手ではない。そんなケイシーが選んだのは,町のバーに行って,「一緒に私の家族と戦う度胸のある独身男性で最初に名乗りを上げた人と喜んで結婚するわ」と叫ぶことだった。
 そんなケイシーの求めに応じたのは,自らの操縦する飛行機事故で父親を死なせてしまい,家出をしてきたライダーだった。二人は結婚の手続きをとり,家族との戦いを開始する。
 次々に起こる家族との戦い,そしてケイシーの誘拐と,息を継がせず200頁を一気に読ませる。
 ライダーの弟ローマンも活躍し,終結では兄ロイヤルも登場する。3部作も可能な魅力的な兄弟の物語を読めるのだろうか。
123 2005/02/12(Sat) ★★★
 リアン・バンクス Leanne Banks 「プリンスの愛人 Royal Dad 2001 小林葉月/訳」
シルエット・ディザイア D-1069(2005.02.05) 164p
 デュモン家の恋人シリーズ第2弾。第1弾「プリンスの求婚(SHALOCKMEMO112)は,精子バンクという特異な設定で一気に読ませるストーリーだったが,本書では皇太子の息子の家庭教師と皇太子自身という組み合わせ。「王様と私」のマルソー王国版。第1弾と同じように最後に女王とヒロインの会見場面がもっともドキドキもの。
 皇太子ミッシェルは学習障害(LD?)になって本を読むことや字を書くことができなくなった息子マックスの家庭教師としてアメリカ人の女性マギーを家庭教師として雇い入れる。
 マギーがマックスをどのようにして教育していくかということに興味を惹かれたが,テレビばかり見ているマックスを外へ連れ出して蛙を捕まえたり,スース博士の本を読んで聞かせたりという教育法で,マックスの興味を引き,次第にマックスに自信を持たせ,本を読めるようにしていく。そして宮中のしきたりの壁を少しずつ崩していくことで,人間らしさを取り戻させていく。
 同じように皇太子のミッシェルの人間らしさも取り戻し,宮中のしきたりを少しずつ変えさせていく。愛の強さ。そしてシンデレラストーリー。このあたりはロマンス小説の王道。
 第3弾ではミッシェルの弟で医師のニコラのストーリーが予告される。
122 2005/02/11(Fri) ★★★★
 スーザン・マレリー Susan Mallery 「戦士の腕の中で Shelter in a Soldier's Arms 2001 天宮美智子/訳」
シルエット・スペシャル・エディション・ベリー・ベスト NVB-01(2005.02.05) 220p
 新しい版型N-シリーズのベスト作品を集めたシリーズの第1作はN-926(2002.08)の本書。特に前月に大きな案内を目にしていなかったが,あるいは見逃しただけかもしれない。背表紙にVBの赤地白抜き文字がくっきり。ハーレクインのウェブページでは「既刊の中から特にお薦めしたい作品を厳選してお届けする特別企画」とある。
 スーザン・マレリーは初めて目にする作家だったのでbk1で検索してみると,なんと古くから多くの作品をものにしている作家であった。またもハーレクインの奥深さを感じる。
 原題の“Schelter”はまさに避難所,地下防空壕を指す言葉だが,住まい,家という意味もある。ヒロインアシュリーとその娘マギーは水道管の破裂でアパートを失ったのち,ヒーローのジェフの家に住むようになる。ジェフの家とその腕の中で二人が保護されていく状況設定を題にしている。
 警備保障会社を共同経営するジェフリー・リッターとゼイン・ランキン。ゼインの物語は同月発売の「ボスの秘密N-1048」に描かれていて,2年半の訳業の空白期間を埋めている。特殊工作隊員としての生業のため,暗い過去を背負ったジェフは,その仕事の性質上,仕事上の秘密を多く抱え,妻の理解を得られず結婚に失敗した経験を持つ。また,ヒロインのアシュリーは生涯をともにしようと思った男性と一人娘を設けたが,子供を愛することをしない夫別れた経験を持つ。両者のパートナーはともにすでに死亡しているというできすぎた設定だが,220頁という限られた著作の長さでは仕方のないことだろう。どちらかのパートナーが絡んでくるとなるともっと読み応えのある作品になるだろうが,それはまた次の作品で生かせる設定になり得るというハーレクインの策略か。
 ヒロインのアシュリーはあまり克明には描かれていない。冒頭でインフルエンザにかかり,やつれた印象だけが強く,回復後も外見的な美しさや性格の良さなどはジェフの目を通して描かれているため,気の強さだけが印象づけられてしまう。反面,ジェフの優しさや内面の葛藤が多く描かれており,通常のロマンス小説のようにヒロイン中心というよりも,ヒーロー中心の作品に仕上がっており,それはそれで読み応えの作品,特色のある作品になっている。
121 2005/02/09(Thu) ★★★★
 キャレン・T・ウィッテンバーグ 「恋は舞踏会で The Playboy's Office Romance 2002 中西奈実/訳」
シルエットスペシャルエディション N-1046(2005.02.05) 220p
 「御曹子の憂鬱 The C.E.O's Unplanned Proposal 2002 宮瀬早起子/訳」(SHALOCKMEMO111)第2弾。ブラドック家の次男ブライスのロマンス。原題はずばり「プレイボーイのオフィス・ロマンス」。それにしてもハーレクイン社の諸著作はネーミングが難しかろう。しかしその中にあって,あまりにずばりの原題のため,これまでこれほど内容そのものを表したネーミングもなかったものと思われる。
 ヒロインのラーラ・リッチモンドはブラドック・インダストリーズ重役で仕事の虫。身長175センチでシルバーブロンドの髪に紫がかったブルーの瞳,ふっくらしていて大きすぎない唇をもち,表紙の写真からはミレーヌ・ドモンジョ? いや,カトリーヌ・ドゥヌーヴそっくりの美女。かたやヒーローのブライスはブラドック家の名前がなくても,プレイボーイの名を恣にしており,ラーラがブライスからの愛を信じられなくても仕方がないような品行の男性。
 第1作と同様イルザ・フェアチャイルドや,祖父のアーチャーが後押しをするまでもなく,ラーラとブライスは互いを意識し合い,常々口論をしている,いわば,喧嘩するほど仲がいい仲。アダムとケイティの夫婦はこの巻では新婚旅行中で顔を見せないが,父ジェイムズやラーラの弟夫妻,そしてラーラが預かっているその息子カルビンなど,家族とその愛が暖かく描かれている。
 後半のダンスパーティで登場するセア・ベレンソンとブラドック家の3男ピーターが第3弾のヒーロー,ヒロインか?
120 2005/02/06(Sun) ★★★
 エリザベス・ハービソン Elizabeth Harbison 「プリンセスは救世主? The Secret Princess 2004 谷原めぐみ/訳」
シルエットロマンス L-1123(2005.1.20) 156p
 アメリカで書店を経営するエイミ・スコットのもとに魅力的な男性が現れ,「あなたはヨーロッパの小国ルフトハニアの王女だ」と告げる。両親を事故でなくしたエイミは自分の生まれの秘密があるのではないかと感じてはいたが,まさか王女だとは・・・。
 こんな設定で,プリンセスを夢見る女性が本当にプリンセスだといわれても,すぐに信じることはできないだろう。夢のようなことが本当に起こったら,あなたはどうする?そんな想像を満足させてくれる1冊。
 いくつかの事故や不思議なことがおこり,エイミの出自の秘密も次第に明らかにされてくるが,ミステリ風味は薄く,緊張感がないまま終末を迎えてしまう。エイミを「嬢ちゃま」と呼び,何くれと世話をしたがる乳母レティ(レティシア)の存在が,ほんのりとした暖かさを感じさせてくれるのが救い。
119 2005/02/05(Sat) ★★★★★
 ノーラ・ロバーツ 「ミトラの三つの星1 夢の断片 Hidden Star 1997 田村たつ子/訳」
プレゼンツ作家シリーズ P-243(2005.01.20) 220p/(シルエット・ラブストリーム LS-51(1998.11))
 とにかく訳者は大変だったろう。作者の宝石についての蘊蓄が大量に登場する。さらには,記憶喪失のヒロインが記憶を取り戻そうとする度に出てくる人物,ファッション,アンティーク家具などなどの数多くの描写。先が見えないミステリのストーリーの中での描写を訳すことの困難さを,久しぶりにロマンティック・ミステリを読んで感じた。とにかく訳者に脱帽の1冊。
 それにしてもこれほど宝石の世界が深いものだとは思わなかった。ノーラの蘊蓄の深さにも驚くが,それをストーリーの中に実に自然に登場させているところはさすがにベストセラー作家。もともと宝石に興味をもっていたのだろうが,専門家のアドヴァイスなしには書き上げることは不可能だったと思われる。数多くの友人やファンをもつノーラならではの力作と思う。
 記憶喪失ものはサンドラ・ブラウンの得意とするところだが,ロマンス小説には頻繁に出でてくるパターン。あえて,ノーラが書くとこのようになるという見本のような作品。
 ミトラの三つの星とは,ペルシャの古代から伝わるミトラ像が持つ黄金のトライアングルに埋め込まれた宝石のこと。三つの星は愛と知と寛容の象徴であり三つを同時に手にしたものは不滅のパワーと永遠の命を手にするという神話。三つの星を手にしようとしている謎の人物とは誰か?
 ヒーローのケイドは上流階級の一族でありながら,自由を求めて探偵業を営む爽やかな青年。ヒロイン,ベイリー(後半でその生い立ちや本名が明かされるが)は絶世の美女。ベイリーがケイドの探偵事務所を訪れたときから二人は惹かれ合う。エンディングで三つの石が三人の女性の手に一つずつあることが明かされ,M・J・オーリアリ,グレイス・フォンテーンがそれぞれ三部作のヒロインになることが予想される。
118 2005/02/03(Thu) ★★★
 スーザン・スペンサー・ポール Susan Spencer Paul 「花嫁の持参金 愛と称号と財産と1 The Bride's Portion 1995 永幡みちこ/訳」
ヒストリカル文庫 HHB-09(2005.01.15) 366p
 久しくヒストリカル文庫から遠ざかっていたが表紙カバーの薔薇が咲き乱れた城壁のイラストがすばらしく,手に取った。1405年初秋のイングランド,領地争いと水利権争いの両方のトラブルを同時に抱えた領主ガイアのアレクサンダー・ボールドウィンが思いついた解決策とは,偶然弟たちがさらってきた水利権を争っている隣地の領主の娘リリス・ライアンと結婚することだった。
 アレックスには許嫁の娘バーバラがおり,リリアにもフィアンセでありガイアと領地争いをしているもう一方の領地ダンステッドの領主ジェイソン・デ・バーグがいた。
 二人の間に愛が芽ばえるが,運命のいたずらが二人の過去と複雑に絡み合っており,系図でも作らなければ読んだだけでは理解できない。家族と,愛をどう整理していくのか。最後のどんでん返しはあざやかで,ミステリアスな雰囲気は買いだが,ややいろんな要素を盛り込みすぎのような気がする。
117 2005/01/30(Sun) ★★★★
 ヴァレリー・パーヴ Valerie Parv 「まぼろしのプリンス Operation:Monarch 2004 長田乃莉子/訳」
シルエット・ラブストリーム LS-223(2005.01.20) 220p
 モナコ公国を思わせる地中海の小国カラメール。モデル並みの美貌をもつセリーナ・コルドーは近衛隊隊員だが,高校時代に憧れ,たった1度キスを交わしたガース・レミーに対抗するために,警察官から近衛隊に入り,さらに昇進を目指して努力していた。時しもアメリカ大統領がカラメールを訪問する直前,反体制勢力のカラメール至上結社から,ガースがローヌ大公の兄かもしれない証拠の品を手に入れる。アメリカ大統領警護の仕事をはずされ,ガースの警護とことを真偽を探ることを命じられたセリーナは,不満を抱えながらも2週間ガースと行動を共にすることになる。
 ガースは本当は誰の子供なのか,ガースの両親の死亡は事故か,殺人か。カラメール至上結社を牛耳る「ザ・ハンド」とはなにものか。数々の謎がサスペンスを盛り上げ,同時にガースとセリーナの互いの気持ちも事件を追うことで,次第に近づいていく。
 国民のために自らの命さえも犠牲にした両親や,自分の兄であることがわかれば退位しなければならないことを知りながらも,真実を追究しようとする大公の気構えに,爽やかさと勇気を感じる。
116 2005/01/28(Fri) ★★★
 リンダ・グッドナイト Linda Goodnight 「午後五時の誘惑 Her Pregnant Agenda 2003 雨宮幸子/訳」
シルエット・ロマンス L-1109(2004.10.04) 156p
 ミニ・シリーズ「ボスは最高!」の第2弾。現在第5弾まで読了しているが,ミニ・シリーズのページを作ってみて,この1作を読んでいないのに気付き,読んだもの。
 このシリーズではコンピュータ・ソフトウェア会社の社長の娘が恋人と別れ,傷心の想いでいたとき,父親が社内の独身重役との結婚話を進めていることを社長秘書から知らされ,考えられる独身重役のキューピット役を努めようとするという設定。設定の面白さとオフィスロマンスのユーモアがしゃれた雰囲気を持つお薦めのシリーズだが,それぞれ独立した1作としても面白い。
 作者のリンダ・グッドナイトはハーレクインでは日本初登場の作家。巻末の作者紹介ではオクラホマ州出身でシャロン・サラの近くに住んでいたことがあり,その影響でロマンスを自分で書くようになったとか。成人した子供が6人いるというから結構な年齢になるのだろう。
 さて,作品のヒロインはアリアナ・フィッツパトリック。妊娠9ヶ月で双子であることがわかっている。妊娠中のヒロインはあまり登場しないし,臨月間近となればなおさらだろう。あえてその設定に挑戦したところが,作者の意気込みを感じる。ヒーローは弁護士で,社の法務部長のグラント・ローソン。ミスター・パーフェクトと呼ばれ,独身女性の憧れの的という人物だが,アリアナに対する感情の持ち方には,とてもそれらしさは感じられない。とにかくやさしすぎる。弁護士としては,これで商売になるのだろうかという感じになってしまっている。(偏見だろうか?)2月20日刊ではいよいよ第6弾が登場し,シリーズも大詰めになるのが楽しみ。
115 2005/01/25(Tue) ★★★
 マリー・フェラレーラ Marie Ferrarella 「罪なプレイボーイ Expecting_in Texas 1999 田中淳子/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1035(2004.11.05) 220p
 富豪一族の伝説第3弾。フォーチュン一家の使用人ペレス家の長男クルスと前作「強引な誘惑」のヒロインでフォーチュン家の末娘バネッサの友人サバンナ・クラークとのロマンス。バネッサの結婚式で二人は出会う。サバンナは婚約者と別れたばかりだが,プレイボーイのクルスに惹かれてその誘いに心動かされ,妊娠してしまう。しかし独立心の強いサバンナは,妊娠したからといってクルスからお情けや子供のためということで結婚することは自分に許せず,シングルマザーになろうとする。幸い,フォーチュン家の会計簿記係として自分の能力を発揮することができ,ダブル・クラウン牧場に就職するが,そうなるとクルスと顔を合わせざるを得なくなる。
 ペレス家は母ロジータがメイド,父ルーベンが牧童頭としてダブル・クラウン牧場で働いており,フォーチュン家はいわば恩のある人々。クルスは馬の調教に特別な才能をもちながらも使用人の立場だけでは満足できず,いずれ独立して牧場を開きたいという夢を持っている。さて,ペレス家はその名前の示すとおり,メキシコ系であろう。色黒でカールした髪をもち,エキゾチックな雰囲気のイケメンであるクルスは女性から言い寄られはしても自分から女性を追いかけることは経験したことがなく,妊娠しているのが自分の子供であると知っても,サバンナに対して,どのようにプロポーズして良いかわからない。思い切ってプロポーズしてもサバンナに断られわられてしまい,すっかり意気消沈しているが,二人の周囲には,それぞれ二人が似合いのカップルであることを感じ,二人を後押しする人たちが続々と登場する。やがて,ダブル・クラウン牧場主のダラスに相談に行ったサバンナの行動を誤解したクルスの手が誤ってあたり,サバンナは階段から転げ落ちてしまう。この悲劇的な事故の後,二人の中はどのように変化していくのかが最大の読みどころ。ハッピーエンドになることはわかっていても,予想外の展開が待っている。
 テキサスとメキシコ系の雰囲気が色濃く感じられるが,作者のマリー・フェラレーラはヨーロッパ生まれのニューヨーク育ちというから驚き!
114 2005/01/22(Sat) ★★★★
 ローリー・ペイジ Laurie Paige 「強引な誘惑 The Baby Pursuit 1999 藤田由美/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1031(2004.10.05) 220p
 富豪一族の伝説(フォーチュン家)第2弾。第1弾「冷たい億万長者(マギー・シェイン/著MEMO88」,第5弾「ボスはプレイボーイ(アーリーン・ジェイムズ/著)MEMO110」の間の第2弾〜第4弾が入手できたので,読み始めた。
 本書はフォーチュン家の末娘,双子の片割れバネッサのロマンスだが,第1弾で誘拐されたバネッサの兄マシューとクローディアの息子ブライアンの捜索が中心のストーリーのため,ミステリタッチのサスペンス・ロマンスになっている。バネッサのお相手はFBI捜査官デビン(デーブ)・キンケイド。キンケイドといえばデボラ・クロンビーの警視シリーズのヒーローが思い浮かぶが,国も階級も違うので,性格的な共通性はない。やさしい捜査官というのは,どうも違和感がある。また,作中にはフォーチューン家の弁護士として,マローンという男が出てくる。マローンといえば,あの酔いどれ弁護士マローンが思い出される。このあたりのネーミングは,わかりやすいというべきか,工夫がないというべきか。
 ヒロイン=バネッサは金持ちの甘えた娘という設定だが,勇気があり,ビューティで,頑固で,一途に愛する人を追いかけるという面が好感を呼ぶ。そして,サスペンスフルで最大の謎が,次作に引き継がれる。
113 2005/01/22(Sat) ★★★
 キャスリン・ジェンセン Kathryn Jensen 「ボスとの一夜 The Boss Man's Fortune 2004 小池 桂/訳」
シルエットダンフォース SD-05(2005.01.20刊)
 ダンフォース家とフォーチューン家という富豪一族同士のロマンスにオフィス・ラブの二つをうまく組み合わせた設定。作者キャスリン・ジェンセンのものは初めて読むが,ストーリー展開は面白い。
 ヒロイン=ケイティ(キャサリン)の人物設定も愛らしく,自立に対してムキになるところも好ましい。年の差のあるヒロインとヒーロー=イアン・ダンフォースとのやりとりも自然で,ストーリーに引き込まれるが,結末がありきたりで,惜しい!
112 2005/01/19(Wed) ★★★
 リアン・バンクス Leanne Banks 「プリンスの求婚 The Monarch and the Mom 2001 三浦万里/訳」
シルエット別冊 SB-5(2005.01.20刊)
 王族が確実に子孫を残すため,王子たちが精子バンクに自分の精子を預けておく。そんなことも現実にはありそうな時代ではある。本書ではその精子が誤って体内受精を希望する女性に使用され,妊娠してしまうという設定。南仏の島国(独立した王国)といえば,現実にはモナコ公国のような国もあり,ハリウッド女優グレース・ケリーと結婚し,世紀のロマンスと呼ばれたが,本シリーズのマルソー国のデュモン家もそうした小王国の王家に当たる。コンピュータ・シミュレーションソフトの研究者ソフィー・ハートマンは妊娠に気付いた後に訪ねてきたヨット製造業者アレックスに惹かれながらも,強引に自分を飛行機に乗せて国外に連れ去ったアレックスのやり方を許せない気持ちを持つ。高級車ジャガーに自家用ジェット,そして側近の男とヨット製造。こうなればセレブの生活が保証されるのだからたとえ愛していなくとも女性はなびくものと,男は勝手に決めてしまいがち。ソフィーはそれが許せないし,自分のお腹の中の子どもをとられてしまうかもしれないという怖れも抱くだろうが,本書は短編でもあり,そのあたりは実にさらりと描かれている。設定はとてもユニークであるし,アレックスの母親である女王とソフィーの会見の場面なども詳細に描けばそれだけでも数十頁になりうるところだと思う。ミニシリーズの第1弾ということで若干プロローグ的な趣の1作。
111 2005/01/15(Sat) ★★★★★
 キャレン・T・ウィッテンバーグ「御曹子の憂鬱 The C.E.O's Unplanned Proposal 2002 宮瀬早起子/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1042(2005.01.05刊)
 結婚嫌いの三兄弟シリーズの第1弾。東部ロードアイランドの名門ブラドック家の三兄弟を巡るロマンス。第1弾は長男アダムとケイト(ケイティ)のファンタジー・ロマンス。
 想像力の豊かなところが自慢のケイティ。できるだけ多くの土地へ移り住み,たくさんの経験をし,必要最低限のものしか持たないという信念を持ったケイティの明るく楽しそうな笑い声にアダムは魅せられる。生き方の全く違うアダムとケイティは互いに惹かれ合う。アダムはセレブで仕事フリークでどこにいても携帯電話を離さない。ケイティは裸足になったり(スニーカーとサンダルしか持っていない),身軽に旅をしたりするのを好む。ケイティの家族や過去についてはあまり語られていないが,シリーズの都合上か,アダムの家族ブラドック家の人々については詳細に語られている。
 ブラドック家では祖父のアーチャー,離婚と結婚を繰り返す父ジェイムズ,アダム,ブライス,ピーターの三兄弟(それぞれ母と生まれた町が違う),そして使用人たち。また,ブラドック家のあるシーチェンジの町の人たちが生き生きと語られている。
 さて,謎の女性,マダム・イフと呼ばれるイルザ・フェアチャイルドである。ロマンスの仕掛け人ということを職業にしているものの,ブラドック家からの依頼はイルザにとっても特別な依頼になっている。アダムとケイティの出会いの演出の仕方がとてもさりげなく,今流行の仰々しい相談所とは全く異なった手法になっている。最後は,ブラドック家の当主アーチャーの79回目の誕生日を祝うパーティに関係者が集まり,大いに盛り上がる。
 とにかくケイティの自然で愛らしいキャラクターがとても良い。今年のベストに入る1冊。
110 2005/01/11(Tue) ★★★
 アーリーン・ジェイムズ「ボスはプレイボーイ Corporate Daddy 1999 藤田由美/訳」
シルエット・スペシャル・エディション N-1043(2005.01.05刊)
 富豪一族フォーチュン家シリーズの第5弾。第1弾「冷たい億万長者(マギー・シェイン著 村上あずさ/訳 N-1027)SHALOCKMEMO-88)」の後,このシリーズは読んでいないので,シリーズ全体のストーリーがよく分からない点もあるが,単独でもまとまった1作となっている。オフィス・ラブロマンスものではあるが,家庭での子育ての部分がストーリー上多くなるので,独特の味わいを持っている。
 フォーチュン・テキサス社の副社長ローガンはプレイボーイとして自他共に認める存在だが,かつて愛し合った女性ドナ・ベイリーが事故で亡くなった後に残された,1歳4ヶ月になる娘アマンダ・スーが遺伝子的にも自分の娘であることが分かり,愛情を感じ,自分の娘として引き取ろうとする。しかし,これまで子どもを育てたことのないローガンはどのようにして子育てをして良いかわからず,副社長付補佐のエミリー・アップルゲイトに子育ての手伝いを頼む。密かにボスに思いを寄せていたエミリーだが,これまで自分が女性としてローガンに認められてこなかったことから,アマンダ・スーの育児の手伝いは引き受けるものの,ローガンの家で住み込みすることや,急に自分に近づこうとするローガンの誘いをはねつける。ローガンはこれまで身近にいたエミリーの魅力に改めて気付き,接近しようとするがこれまで女性から交際を断られた経験のないローガンは,エミリーの態度が理解できない。
 愛娘アマンダ・スーの育児と,愛する女性エミリーとどのように家庭を築いていったらよいのか。最後にエミリーを口説き落とすまでのローガンの奮闘ぶりが微笑ましい。がんばれ!プレイボーイ!
109 2005/01/08(Sat) ★★★★★ 
 ノーラ・ロバーツ「時は,やさしく Times Change 1990 入江真奈/訳」
ハーレクインプレゼンツ作家シリーズP-241(2004.12.20刊)
 「時が,ふたりを」の続編。キャルの弟ジェイコブはキャルが23世紀に送ってきた宇宙船と情報を頼りに20世紀にやってくる。そこで出会ったのはリビーの妹,サンビーム(サニー)だった。リビーとキャルが旅行中,サニーとジェイコブは雪に閉じこめられた山小屋で数日を過ごすうちに生涯をともにする人だと気付く。
 両親や兄弟と離ればなれになり,しかも時間を超えなければ互いに会えないという状況にどう自分の気持ちの整理を付けていくのか。そんな究極の選択をしなければならない時,キャルとリビー,ジェイコブのサニーの選択はそれぞれ異なっていく。 ネタばれになるので,4人の選択はここではかけないが,そこに物語のテーマを見せていく,ノーラの筆力のすばらしさに感動を覚える傑作。 
108 2005/01/06(Thu) ★★★★★
 ノーラ・ロバーツ「時が,ふたりを Time Was 1989 福島純子/訳」
ハーレクインプレゼンツ作家シリーズP-240(2004.12.20刊)
 SFロマンス。23世紀からタイムスリップした運送業者キャレブは火星からの帰還の途中オレゴン州に不時着。それを助けたのは文化人類学者のリバティ(リビー)。
 いつしか二人は時を超え,愛し合うようになる。リビーは60年代の申し子の両親に育てられたが,母親のキャロラインは,リビーと姉妹に間違われるくらいに若々しく,素敵な女性。
 最後にあっと驚くどんでん返しもあり,さすがノーラと言える傑作。
107 2005/01/06(Thu) ★★★★
 ミランダ・ジャレット「銀色に光る海で The Silver Load 2003 遠坂恵子/訳」
ハーレクイン・ヒストリカルHS-203(2005.1.5刊)
 久しぶりのヒストリカル。密輸団の女頭領ファンと海軍の士官で公爵家の次男ジョージのロマンス。時あたかも1802年で英仏が戦争と停戦を繰り返していた,ホーンブロワーやボライソーの時代。
 カントリーハウスの家政婦であり,密輸団の女頭領ファンのきりっとした美しさと,独立心,そして愛する人のためには命も投げ出す勇ましさには脱帽。
106 2005/01/01(Sat) ★★★★
 リン・グレアム「情熱はほろ苦く Bitterweet Passion 1987 田村たつ子/訳」
ハーレクイン・クラシックスC-589(2005.1.5刊)
 表紙の写真では小顔ですらりとしたブルネットの美女が映っているが,本作のヒロインは身長152cmの赤毛の少女で,特に美人というわけでもないという。幼い頃養女としてもらわれたフレッチャー家で家政婦兼看護士同様に当主のアダム・フレッチャーにこき使われ,高校にすらやってもらえなかったクレア。当主が亡くなって残された遺産を受け取るためには,いとこのうちの一人と結婚することが条件となっていた。しかもいとこのカーターは生前アダムに取り入り,クレアの承諾も得ないままに,あたかも二人が婚約同然であるかのように弁護士に話しているではないか。
 使用人たちには遺産を何一つ与えられていないことを知ったクレアは,ふと思いついて,遺産を受け取るために葬儀に来ていた,いとこのデインに結婚を申し込む。クレアは思春期の頃デインに憧れ抱き,学校のロッカーにデインの写真を貼っていたぐらいだったが,数年前から使用人の一人マックスに恋心を抱いていたが,アダムには反対されていた。このマックスが何とも情けない男。終末でマックスがふたたび登場するが,クレアに一喝されてすごすごと帰ってしまうような気持ちの弱い男。決して財産ねらいではなかったと思うが,女心を全く理解できず,自分に都合のいいようなことしか考えられない。その点では,財産ねらいのカーターとどっこいどっこいだといえる。
 互いにきっかけがあるにもかかわらずなかなか本当の愛を打ち明けられないデインとクレアの間には双子の子供が生まれる。デインの執事のトンプソンや親友ランディ,デインの秘書などクレアの飾らない人柄を好む人々が二人を陰で支えるなどほんのりした暖かさが感じられる。一方,敵役のカーターやデインの周囲の女性たちのクレアに対する意地悪もストーリーを盛り上げ,読み応えのある一冊になっている。
105 2004/12/30(Thu) ★★★
 レイ・マイケルズ「結婚は天使のために The Only Solution 1994 岡 聖子/訳」
ハーレクイン・クラシックスC-592(2005.1.5刊)
 友人が亡くなり,預かった赤ん坊を自分が育てようとするフェニックスの食品市場調査員ウェンディだが,会社が倒産してしまい,経済的に困ったあげく赤ん坊の遺族であるバージェス家に連絡を取ろうとしたが,赤ん坊のロリーが喜んで迎えられそうにない電話の相手に,途中で電話を切ってしまう。電話を受けたシカゴ/バージェス家の長男マックは,赤ん坊の電話の内容を初めは疑うが,ウェンディを探し出し,フェニックスに訪ねてくる。マックに上流階級独特の傲慢さを感じたウェンディだが魅力的だとも感じてしまう。やがて,ウェンディを連れてロリーをシカゴに連れて行くマックは,思いがけない提案をする。
 題名から容易に想像できるが,「天使」のようなロリーを育てるために結婚するウェンディとマックだが,やがて二人とも,契約的な結婚ではなく,いつの間にか互いに惹かれあっていることに気付いて本当の結婚になっていく。ロマンス小説でありながら愛する二人がキスしか交わさないという非常に珍しい展開であり,最後はほのぼのとした読後感を得られる爽やかな一作。
104 2004/12/26(Sun) ★★★★
 サンドラ・ブラウン「虚飾の愛を逃れて The Rana Look 1986 秋月しのぶ/訳」
集英社文庫(2004年11月刊)
 外見ではなく,自分の内面を愛してくれる男性を求めて世の中から引き籠もって暮らす美しい元モデルと,プレイボーイを地でいくたくましいスポーツ選手の心の触れあいを描くロマンス。
 スーパーモデルのラナ・ラムゼーは,わざと自分の美しいプロポーションや容姿を見せないような服装をし,ニューヨークの喧噪から逃れてテキサス南東部の島に隠れるように引き籠もって暮らしていた。肩のリハビリをするためにおばさんであるルビーのアパートにプロ・フットボール選手トレントがやってきて,ラナの向かい側に住む。
 トレントに自分の正体を知られないように,いろいろと気遣うラナ。初めはその企てが結構うまくいっているが,ルビーの励ましや母親との確執から自立するために,ついにラナはモデル時代の装いでトレントに誘われたパーティに出かけていく。
 二人が初めてキスを交わすのが物語の三分の二を過ぎたあたりというのは,ロマンス小説としてはかなり遅い方ではないだろうか。まるで,ミステリ小説で初めの殺人が半ば過ぎに起こるようなもの。その後の二人の関係は急速に進展するがとても美しいシーンに仕上がっていて,さすがサンドラブラウンと思わせる。
 トレントは女性を二つのグループに分類し,ラナは三つのグループに分類する,など,サンドラらしい男女観が描かれているところもロマンス小説の楽しみを倍加させている。 
103 2004/12/24(Fri) ★★★★
 メリッサ・マクローン「サンタのくれた恋人 Santa Brought a Son 2003 山田沙羅/訳 L-1119」
シルエット・ロマンスL-1119(2004年12月刊)
 ボスは最高!シリーズ4。クリスマスイヴにふさわしい読了本。9年前に別れた彼女との間に息子がいた!
 サマンサ(サム)は,高校生の頃知り合い,たった一夜彼と過ごしただけで,身ごもってしまう。しかも,彼(リード)は自分の元を去り,他の町の大学に行ってしまい,戻ってこない。彼女の両親は娘の行動を非難して勘当し,他の町に去ってしまう。彼女を慰めてくれたアートは自分の子どもでないと知りつつ,サムに結婚を申込み,その息子ティミーも自分の子どもとして愛してくれたが,事故のため亡くなってしまう。サムはティミーを育てながらアートの両親とフラワー・デザイナーをしながら暮らしていたが,9年後,リードが友人の結婚式のために突然町にやってくる。そして,ティミーが自分の子どもであることに気付いてしまう。自分に子どもができたことをリードに打ち明けられなかったサムはアートにそのことを伝えてもらったと思っていた。しかし,アートはそれをリードには伝えておらず,リードはサムとの間に子どもがいたことは全く知らないまま9年間を過ごしていたのだ。
 サムにとってそれは,最悪のことであろうか,それとも最良のことであろうか。リードは高校時代とは異なり,ハンサムで落ち着いた男性に成長していた。リードは自分を今でも愛しているのだろうか,それともティミーの母親としてだけ見ているのだろうか。自分の両親に捨てられたサムの愛へのこだわり,ティミーが心のよりどころであることや,生活への不安,アートの両親にこのことがばれてしまわないだろうか,などとさまざまな不安を抱えることになってしまう。
 一方リードの方にも,子どもの頃,父親から愛された記憶がないため,ティミーが自分の息子だと知ってもどのように付き合ったらよいか不安であり,自信が持てない。
 クリスマスにふさわしい愛の物語である。単なる男女の愛だけでなく,親子の愛,夫婦の愛,愛を巡る複数の物語がとてもバランス佳く,しかもテンポ良く語られていく。最後にはこころ温まる無私の愛が示される暖かいロマンス。
 表紙に登場する女性がとても愛らしい。真っ赤なセーターにブルージーンズ。きれいなブロンドにすてきな笑顔。物語に登場するサマンサをとてもよく表しているし,あの「奥様は魔女」のサマンサともよく似ている。
102 2004/12/23(Thu) ★★
 ヘザー・マカリスター「今夜は帰れない Skirting The Issue 2002 伊坂奈々/訳 T-501」
ハーレクイン・テンプテーションT-501(2004年10月刊)
 魔法のスカート・シリーズ。普段はなんの取り柄もない普通のスカートだが,身に付けると人を引き寄せるという魔法のスカートが次々と人の手に渡り,さまざまな人生模様を描き出していくシリーズものの一作。
 著者のヘザー・マカリスター(Heather MacAllister)はテキサス州在住のロマンス作家で,1989年にデビュー以来さまざまな賞にもノミネートされているベストセラー作家。
 サマンサ・ボールドウィン(サム)はホテルのイベント・プランナー。四人姉妹の末っ子だが,初期フェミニストの母は四人の娘に,愛称が男性の名前としても使える名前を付けるほどの女性権利主義者。サムも自立を求めてイベント・プランナーとして大口の予約を取り,昇進を果たするためにニューヨークの大手ホテルに移ってきたものの,安いアパートを探しに来たところで,A・J,クレアという同じようにアパートを求めていた二人の女性とルームメートになる。そのアパートに住む権利を得るのに魔法のスカートが大いに活躍するのを実感した三人が,後半でリレーのバトンのように魔法のスカートを穿き回すところが出てくるが,どたばた喜劇の感じがでていて面白い。
 ジョシュ・クランダルはセールス・セミナーのプログラムを開発し,自ら講師としてセミナーを主催しているが,男性優位主義者の俗物であり,サムとはかつてより対抗意識を持っている。冒頭では二人の性格は対極にあり,とても結びつかないが上司の命令でサムがジョシュのセミナーを受講しなければならなくなるところから二人の気持ちに変化が表れる。ジョシュの描き方がどうも中途半端であり,魅力を感じさせないので,二人の関係が深まるとは思えない。
 自立心の強いサムに女性らしさを身に付けさせるために,ジョシュは「炎の女」という怪しげなセミナーの合宿に送り込む。人里離れた合宿施設で行われるセミナーはナーは一種,新興宗教的なところがあり,ストーリー展開にも若干無理があるような気がする。
101 2004/12/13(Mon)★★★★
 エマ・ダーシー「夢がかなう日 An Impossible Dream 1993 山田信子/訳 C-585」
ハーレクインイマージュI-841(1994年2月刊)
 久しぶりのエマ・ダーシー。表紙の写真はオレンジ色の灯がともる暖炉の前に飾られたクリスマスツリーの前で愛を語り合う男女がロマンチック。ブロンドで小麦色の肌のキャミソール姿の女性の脚がとても長い。
 いわゆるシンデレラストーリー。舞台はシドニー。ダニエル・ハルステッド(愛称ダニー)はシェフだが,勤務していたレストランのオーナー,ジュリオにセクハラを受け,店を飛び出してしまう。ダニーには何やってもかなわない姉のニコルがおり,自分に自信が持てないでいる。丸い顔に緑と薄茶のハシバミ色の目,小さくしゃくれた鼻,ウェーブのついた豊かで茶色の長い髪と来れば,愛らしくすてきなヒロインの姿になるのだが,自分に自信が持てないダニーには,そのすべてが姉にはかなわないという気持ちにさせてしまう。
 キャメロン・マックファーレンはそれこそプレイボーイを絵に描いたような容貌で金持ち。自分にはふさわしくないと思えるダニーだが,シェフとしての自分の得意技である料理でキャメロンを魅了しようと考える。
 ダニーの企てはうまくいくのか。二人の関係はどのように進展するのか,そしてニコルに対する劣等感をどう克服するのか。エマ・ダーシーらしくぐいぐいと読者を最後まで惹き付ける筆力はさすがだ。
 随所に出てくる格言(「災難は三度やってくる」「蓼食う虫も好き好き」など)がストーリー全体に芯を一本通し,統一感のある作品に仕上がっている。